同じ「ゆうよ」という読み方の「猶予」と「有余」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「猶予」と「有余」という言葉は同音の言葉ですが、それぞれの漢字によって使い方には少し違いがあります。
猶予と有余の違い
猶予と有余の意味の違い
猶予と有余の違いを分かりやすく言うと、猶予とは実行を遅らせることを表し、有余とは余りがあることを表すという違いです。
猶予と有余の使い方の違い
一つ目の猶予を使った分かりやすい例としては、「猶予期間内に納付ができないかもしれません」「執行猶予付きの懲役刑が言い渡されました」「猶予届出書の様式をダウンロードする」「今しばらく猶予をいただきたく存じます」などがあります。
二つ目の有余を使った分かりやすい例としては、「祖母は80有余年の生涯を終えました」「イベントは百有余名の参加者があり大成功でした」「商品に有余や不足がありましたらご連絡ください」などがあります。
猶予と有余の使い分け方
猶予と有余という言葉は、どちらも「ゆうよ」と読みますが、意味や使い方には大きな違いがあります。
猶予とは、「一刻の猶予もない」のような使い方で、ぐずぐずしていて決定や実行をしないことを表します。また、「執行猶予」「一週間猶予する」のような使い方で、実行を遅らせることも意味する言葉です。
有余とは、「有余や不足がある」のような使い方で、余りがあること、必要分よりも多くあることを意味します。また、「80有余年」「百有余名」のように数を表わす語に付けて、それよりもやや多いことを表す言葉です。
つまり、猶予とは決定や実行を遅らせることであり、有余とは余りがあることを意味します。二つの言葉は同じ読み方をしますが、意味が全く違う同音異義語なので互いに置き換えて使うことはできません。
猶予と有余の英語表記の違い
猶予を英語にすると「hesitation」「postponement」「grace」となり、例えば上記の「猶予期間」を英語にすると「grace period」となります。
一方、有余を英語にすると「and more」「a little over」「a little more than」となり、例えば上記の「80有余年」を英語にすると「eighty and more years」となります。
猶予の意味
猶予とは
猶予とは、ぐずぐず引き延ばして、決定・実行しないことを意味しています。
その他にも、「実行の日時を延ばすこと」の意味も持っています。
猶予の読み方
猶予の読み方は二通りあり、「ゆうよ」の他に「いざよい」とも読みます。「いざよい」と読む猶予は、「進もうとして進まないこと、躊躇」を意味し、読み方によって意味が変わってくるので注意してください。
猶予の使い方
「もはや一刻の猶予もない状況です」「時間的に猶予がないので早くしてください」「彼女からの一方的な猶予なき別れに愕然とする」などの文中で使われている猶予は、「ぐずぐず引き延ばして決定や実行をしないこと」の意味で使われています。
一方、「執行猶予中の生活では交通違反に気を付けてください」「奨学金の猶予年限特例を受けています」「保険料の払込みには猶予期間があります」「3日間のご猶予をいただくことは可能でしょうか」などの文中で使われている猶予は、「実行の日時を延ばすこと」の意味で使われています。
猶予とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ち、それぞれの意味で使用されているため、文脈により意味を判断する必要があります。猶予の「猶」は訓読みで「なお」と読み、ぐずぐずしてためらうこと、「予」は訓読みで「ゆるす」と読み、ためらうことを表す漢字です。
表現方法は「猶予年限特例」
猶予を用いた日本語には「猶予年限特例」があります。猶予年限特例とは、日本学生支援機構が行う奨学金の制度で、家計状況の厳しい学生が無利子奨学金の貸与を受けた場合、本人が卒業後に一定の収入を得るまでの間は、申請により特例として返還期限の猶予を受けることができる制度です。
猶予の対義語
猶予の対義語・反対語としては、その場ですぐに判断したり決断したりすることを意味する「即断」、即座に決定または裁決することを意味する「即決」などがあります。
猶予の類語
猶予の類語・類義語としては、あれこれ迷って決心できないことを意味する「躊躇」、決めかねてぐずぐずしていることを意味する「ためらい」、期日や期限を延ばすことを意味する「延期」、物事の処理や期限などを先に延ばすことを意味する「先延ばし」などがあります。
有余の意味
有余とは
有余とは、余りがあることを意味しています。
その他にも、数を表す語に付いて「それより少し多いこと」の意味も持っています。
有余の読み方
有余の読み方は「ゆうよ」と「うよ」の二つがあります。「うよ」と読むと仏教用語となり、「有余涅槃」(読み方:うよねはん)のように使われます。
有余の使い方
「お米の生産量には有余があるはずです」「財政的有余がある自治体は少ないだろう」「時間に有余があるならば何をしたいですか」などの文中で使われている有余は、「余りがあること」の意味で使われています。
一方、「10有余年の研究の成果を集めた論文集です」「創業100有余年の老舗旅館を予約しました」「有余数の除法を子供に教えています」などの文中で使われている有余は、「それより少し多いこと」の意味で使われています。
有余とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ち、それぞれの意味で使用されているため、文脈により意味を捉える必要があります。有余の「有」は存在することを表し、「余」は必要な分をこえて残ることや、引き続いてあとに残ることを表します。
表現方法は「有余年」
上記例文にある「有余年」とは、「年以上」「年余り」という意味で使用される表現です。「10有余年」であれば、「10年以上」「10年余り」という意味になります。
有余の対義語
有余の対義語・反対語としては、過不足なく一致するさまを意味する「丁度」、足りないことを意味する「不足」などがあります。
有余の類語
有余の類語・類義語としては、余った分や残りを意味する「余分」、必要分を除いた残りを意味する「余剰」、必要分以上に余りがあることを意味する「余裕」、数字のあとに付けて示す数より少し余りがあることを意味する「強」、余裕やゆとりをもたせることを意味する「バッファ」などがあります。
猶予の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ぐずぐずしていて決定しないことや実行しないこと、日時を延ばすこと、許して実行を遅らせることを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「一刻の猶予も許されない」とは、時間の余裕がなく、すぐに決断や実行をしなければならないさまを表現する言い回しです。
有余の例文
この言葉がよく使われる場面としては、必要分よりも多くあること、剰余分、残余、数を表わす語に付けてそれよりもやや多いことを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2にある有余は、必要分よりも多くあることの意味で用いられています。例文3から例文5の有余は、それよりもやや多いことの意味で使用されています。
猶予と有余という言葉は、どちらも「ゆうよ」と読む同音異義語です。どちらの言葉を使うか迷った場合、決定や実行を遅らせることを表現したい時は「猶予」を、余りがあることを表現したい時は「有余」を使うようにしましょう。