【染みる】と【浸みる】と【沁みる】と【滲みる】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

同じ「しみる」という読み方、似た意味を持つ「染みる」と「浸みる」と「沁みる」と「滲みる」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「染みる」と「浸みる」と「沁みる」と「滲みる」という言葉は、どれも次第に広がることを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




「染みる」と「浸みる」と「沁みる」と「滲みる」の違い

「染みる」と「浸みる」と「沁みる」と「滲みる」の意味の違い

「染みる」と「浸みる」と「沁みる」と「滲みる」の違いを分かりやすく言うと、染みるとは液体によって色がつくこと、浸みるとは液体がじわじわと深くしみこむこと、沁みるとは心身に刺激を感じること、滲みるとは浸みるの別表記を意味しているという違いです。

「染みる」は衣服などに色やしみがつくこと

一つ目の「染みる」は「衣服などに色やしみがつく」という意味の言葉です。「シミ」を漢字で表記すると「染み」になります。「黄ばんだ汗ジミ」は、色がついているので漢字では「汗染み」と表記します。染みるは色と関係する言葉です。

「浸みる」は衣服などに液体がしみこむこと

二つ目の「浸みる」は「衣服などに液体がしみこむ」ことを意味する言葉です。染みると違って、色とは関係ありません。水が衣服などにこぼれることは「染みる」ではなく「浸みる」に該当します。

また「服に汗がしみる」も濡れてぐっしょりするという意味ならば「浸みる」です。黄色い汗ジミが目立つようになるのは、水分が抜けてからです。

ただし浸みるという言葉は浸の字を常用外の仕方で読んでいますので、普通は「しみる」とひらがなで表記されます。

「沁みる」は心にしみじみと感じること

三つ目の「沁みる」は「心にしみじみと感じる」「体に痛みを感じる」という意味の言葉です。液体が目にしみて痛むことや、何かに心を打たれて感動することなどが「沁みる」と表現されます。心身に関わることを表現する時には「沁みる」という言葉が使われます。

例えば「汗が目にしみる」や「目薬が目にしみる」は「沁みる」に該当します。痛みを伴うものが沁みるです。また「心にしみる名曲」のように精神的な意味での「しみる」も「沁みる」です。

ただしこの言葉は常用外なので普通は使われず、ひらがなで表記されることもありますが、「染みる」で代用されることも多くなっています。

「滲みる」は「浸みる」と全く同じ意味

四つ目の「滲みる」は浸みると全く同じく、「液体がしみこむ」という意味です。昭和の中頃くらいまでの本を読むと時々使われているのを見かけることがありますが、今では用いられることはほとんどありません。

なお、この他にも「凍みる」(読み方:しみる)という言葉もあります。この言葉は「凍りつくように寒い、涼しげな」という意味を持ちます。「凍みるような夜風」といった表現で使われます。

「染みる」だけが常用漢字

三つの言葉の中で常用漢字なのは「染みる」だけです。他の言葉は常用外なので「しみる」とひらがなで表記されることが多いです。

「染みる」の意味

「染みる」とは

染みるとは、衣服などに液体がこぼれて色が付くことを意味しています。不可抗力で色が付くことが「染みる」で、意図的に色を付けることが「染める」(読み方:そめる)です。

「染みる」の使い方

液体以外の原因による色に対しては、染みるや染めるを使うことは出来ません。例えば絵の具で服が汚れたり、転んで泥が付くことなどは、染という字の適用範囲外です。染が液体と結びつくことは、この字にさんずいが含まれていることから分かります。

またこの意味以外に、染という字は「影響を受けている」という意味で使われることがあります。例えば「身体に染み込んだ生活リズム」や「周囲の環境に染まる」や「年寄り染みたことを言う」などのように使われます。

さらには「素材の味が染み込む」や「匂いが染み込む」などのように、液体だけではなく味や匂いなどに対しても「染みる」という言葉を使います。染という字は、味や匂いに対して使われる時は「そめる」という読み方では使われません。

表現方法は「心に染みる」「体に染みる」「味が染みる」「身に染みる」

「心に染みる」「体に染みる」「味が染みる」「身に染みる」などが、染みるを使った一般的な言い回しです。

「染みる」の対義語

染みるの対義語・反対語としては、付いてしまった色を落とすことを意味する「抜く」などがあります。「染み抜き」という言葉を思い出してみてください。

「染みる」の類語

染みるの染の字を使った別の言葉としては、色をしみこませて付けることを意味する「染色」、病原体が体の中に入ること、またそれによって病気になることを意味する「感染」、特に環境が有害物質によって汚れることを意味する「「汚染」などがあります。

「浸みる」の意味

「浸みる」とは

浸みるとは、液体が衣服などにしみこむことを意味しています。浸みるは色とは関係ありません。無色透明な水が衣服の上にこぼれてしみることは「浸みる」と表現します。

「浸みる」の使い方

ただし浸みるは浸という字を常用外の読み方で使っているので、普通はひらがなで「しみる」と表記されます。

浸みると染みるは、状況によって使い分けられます。例えばカーペットの上にオレンジジュースなどの色付きの液体をこぼしてしまった状況を考えてみましょう。

こぼした直後は水分を拭き取らなければいけないので「浸みる前に拭かないといけない」などと言われます。それに対して水分を抜いた後は色が残ってしまうかどうかが問題なので「染みが残らなくて良かった」や「結局染みちゃった」などと言われます。

表現方法は「水が浸みる」「ジュースが浸みる」「墨汁が浸みる」

「水が浸みる」「ジュースが浸みる」「墨汁が浸みる」などが、浸みるを使った一般的な言い回しです。

「浸みる」の類語

浸みるの浸の字を使った別の言葉としては、物事が広く行き渡ることを意味する「浸透」、許可されていないのに入ることを意味する「侵入」、洪水や大雨などで建物などに水が入り込むことを意味する「浸水」などがあります。

浸の字はまた「浸す」(読み方:ひたす)という言葉に使われることもあります。物を水につけて、水分を吸わせることが「浸す」です。この読み方の場合にも、浸は常用外の読み方で使われています。

「沁みる」の意味

「沁みる」とは

沁みるとは、心や体に刺激を感じることを意味しています。

「沁みる」の使い方

沁みるは心身に関係する言葉です。「傷口に消毒液がしみる」「汗が目に入ってしみる」「心にしみわたる」などは、漢字で表記するならば「沁みる」です。

ただしこれも常用外の漢字なので、ひらがな書きされたり、あるいは「染みる」で代用されることも多いです。例えば「身に染みる」という慣用句は国語辞書にも掲載されていることがあります。

沁みるの沁の字にもさんずいが含まれているので、液体と関係していることが多いです。塩水、消毒液などの液体が傷口や目などに入り、痛みを生じさせることが「沁みる」です。

また染みるが味や匂いに対しても使われる言葉であったように、沁みるにも、例えば「煙が目にしみる」のように、液体とは関係のない用法があります。また「歯にしみる」や「歯がしみる」も必ずしも液体とは関係しません。

体の意味の沁みるは痛みの感覚ですが、心の意味の沁みるは感動や感銘など、心地よさの感覚を表現しています。「心にしみわたるオーケストラの演奏」とは悲痛、痛切な感覚でなく、次第に心に広がっていく感動を表現しています。

表現方法は「目に沁みる」「歯に沁みる」「ビールが喉に沁みる」

「目に沁みる」「歯に沁みる」「ビールが喉に沁みる」などが、沁みるを使った一般的な言い回しです。

「沁みる」の類語

沁みるの沁の字を使った別の言葉としては、奥深くにしみこむことを意味する「沁み入る」、満遍なくしみわたることを意味する「沁み渡る」などがあります。

「滲みる」の意味

「滲みる」とは

滲みるとは、浸みるの別の表記を意味しています。この言葉は浸みるの古い形で、昭和の中頃くらいまでの文章では散見されますが、今日ではほとんど使われることはありません。

「滲みる」の使い方

滲の字は常用外なのでほとんど使われることはないのですが、「しみる」よりも「にじむ」という読み方をすることの方が一般的に認知されています。「しみる」の漢字表記はたくさんありますが、「にじむ」の漢字表記は「滲む」だけです。

「しみる」は液体が内部に浸透することを表現する言葉ですが、「にじむ」は液体が広がることを表現しています。また「涙がにじむ」や「にじみ出る」のように、奥からじわりと出てくるという意味で使われることもあります。

表現方法は「インクが滲みる」「汗が滲みる」「味が滲みる」

「インクが滲みる」「汗が滲みる」「味が滲みる」などが、滲みるを使った一般的な言い回しです。

「滲みる」の類語

滲みるの滲の字を使った別の言葉としては、液体が外ににじみ出ることを意味する「滲出」(読み方:しんしゅつ)、水などがしみ込むことを意味する「滲入」(読み方:しんにゅう)などがあります。

「染みる」の例文

1.洗濯機を回したら夕飯で衣服についてしまった染みが取れたのでホッとしている。
2.だいこんの煮物は、よく味を染み込ませたものが美味しい。
3.辛い時に人から受けた優しさほど身に染みるものはない。
4.将来結婚して、子供出来たら、あなたもきっと親のありがたみが骨身に染みるはずだ。
5.我が家の愛犬は、自分自身の匂いが染み付いた毛布があると安心してよく眠る。
6.夕焼け色に染み渡る空を、鳥の群れが飛んで行く。

この言葉がよく使われる場面としては、衣服などに色がついてしまうことを表現したい時などが挙げられます。水によって色がついてしまうことを「染みる」、それによって出来た色のことを「染み」と言います。後者はカタカナ表記されることも多いです。

「染みる」が不可抗力で色がついてしまうことであるのに対して、「染める」(読み方:そめる)は意図的に色を付けることです。

「しみる」と読む言葉の中で、常用漢字なのは「染みる」だけです。そのため色の用法以外にも、様々な用法で使われるのがこの言葉の特徴です。例文2の「味を染み込ませる」や例文3の「身に染みる」など、様々な用法があります。

「浸みる」の例文

1.カーペットにお茶が浸み込んでびちゃびちゃになってしまった。
2.小雨だと思って傘を差さずに帰ってきたんだけれど、雨がコートに浸みちゃったよ。
3.レストランで水をこぼして服が浸みてしまったことでがっかりして、料理が美味しく感じられなかった。
4.昨日の大雨で地面に水が浸み込んでしまったので、本日はこの現場の工事を中止することになりました。
5.たっぷりの水を浸み込ませた吸水スポンジに、赤いカーネーションを挿して、母の日のプレゼントを完成させた。
6.冬の冷気で乾燥した肌に、化粧水がじんわりと浸み込んでいく。

この言葉がよく使われる場面としては、衣服などに水分がしみこみことを表現したい時などが挙げられます。染みると違い、浸みるは色とは関係ありません。衣服などの繊維に液体が吸収されるという状況だけを表現するのが浸みるという言葉です。

白い服に色付きの飲料をこぼしてしまった時、液体のことを主に問題にする時には「浸みる」、色を問題にする時には「染みる」が使われます。

「沁みる」の例文

1.息子が膝をすりむいて帰ってきたので傷口に消毒液をかけたところ、沁みて痛かったらしく、泣いてしまった。
2.たき火の煙でも目に沁みるんだから、火事でも起こった時には目を開けていられないんだろうと思った。
3.彼との友情がこの時ほど心に沁みて感じられた時はなかった。
4.実家の母から届いたダンボールに入っていた小さな手紙が、一人暮らしで寂しい私の心に沁みる。
5.玉ねぎをみじん切りにしていたら、目が沁みて涙が止まらなくなった。
6.今年の冬は、一段と寒さが身に沁みる。

この言葉がよく使われる場面としては、心身の「しみる」という感覚を表現したい時などが挙げられます。

沁みるの沁の字はさんずいに心という造りをしています。心とは人間の感情や感覚のことで、他の「しみる」とは異なり、人間の状態と強く結びつくのが沁みるという言葉の特徴です。

例文1と2のように、体の感覚を表現する時には痛みの感覚です。例文3のように心の意味で使われる時には、痛みではなく感動や感銘などポジティブなものを表現します。

ただし沁の字は常用外なので、常用漢字の染を使って代用されることがあります。「心にしみる」や「見にしみる」などの表現に対しては、本来は沁を用いるべきですが、染を使うことも一般的になっています。

「滲みる」の例文

1.このサインペン、インクが下の紙にも滲みちゃうんだよね。
2.小雨なら大丈夫だったけど、大粒の雨だったから服に滲みちゃったよ。
3.水性ペンで書いたから、ノートが濡れて文字が滲んでしまった。
4.書道家の友人は、墨の滲み具合まで計算して紙を選ぶそうだ。
5.この万年筆で文字を書くと、ペン先から滲み出るインクの量が多いため、一本一本の線がとても太くなる。
6.万年筆が壊れて、滲み出たインクで手が真っ黒になった。

この言葉がよく使われる場面としては、浸みることを表現したい時などが挙げられます。滲みるは浸みるとまったく同じ意味の言葉なので、あまり使われることはありません。

ただし人によっては、滲みるは「じんわりとしみる」というニュアンスがより強いと考える人もいます。つまり雨でびしょびしょになることは浸みるで、例文1や2のように「じんわりとほのかにしみる」のは滲みる、というように考える人もいます。

例文3の滲の字は「にじむ」という読み方で使われています。確かに「にじむ」には「じんわり」や「ぼんやり」というニュアンスがあります。

しかし浸みると滲みるにニュアンスの違いがあるかどうかについては定説がありませんので、基本的にはまったく同じ意味の言葉として理解しておくようにしましょう。

言葉の使い方の例文
編集者
株式会社セラーバンク/例文買取センター運営
例文買取センター