似た意味を持つ「至急」(読み方:しきゅう)と「早急」(読み方:さっきゅう)と「緊急」(読み方:きんきゅう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「至急」と「早急」と「緊急」という言葉は、急ぐ様子を表すという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
至急と早急と緊急の違い
至急と早急と緊急の意味の違い
至急と早急と緊急の違いを分かりやすく言うと、至急は急がなければ不都合が起こる時に使い、早急はなるべく早く対応する時に使い、緊急は急がなければ命などに危険が及ぶ時に使うという違いです。
至急と早急と緊急の使い分け方
至急という言葉は、「至急確認をお願いします」「至急対応お願いします」などの使い方で、前者は確認を、後者は対応をそれぞれ急いでしなければ不都合が生じることを表します。
早急という言葉は、「早急にご対応頂きありがとうございました」「早急な判断により成功を収めた」などの使い方で、前者は対応を、後者は判断をなるべく早く行なうことを表します。
緊急という言葉は、「緊急時に備えておく」「災害などに関する緊急情報」などの使い方で、身の危険を守るために対応しなければならない時や、そのための情報を表します。
そのため、より急を要する順に並べると、緊急>至急>早急の順になりますが、緊急は他二つと違って命に係わる場面で多く使われます。これらが至急、早急、緊急の明確な違いです。
至急の意味
至急とは
至急とは、非常に急ぐことを意味しています。
表現方法は「至急お願いします」「至急対応」「大至急」
「至急お願いします」「至急対応」「大至急」などが、至急を使った一般的な言い回しです。
至急の使い方
至急を使った分かりやすい例としては、「インターネットがずっと繋がらないので大至急対応をお願いします」「この上司のメール件名にはいつも至急が入っている」「トラブル等ございましたら大至急お電話をください」などがあります。
至急を使った言葉として、「至急報」「至急電報」があります。
「至急報」の意味
一つ目の「至急報」とは、警察無線の一種で、特に急を要し普通通話を中断してでも緊急の呼び出しをしなければならない時に使う無線を指し、「至急通話」とも呼ばれます。
この至急報においては、呼び出す側も応答する側も話し始める前に「至急、至急」と呼び掛けをするところから始まり、後に本題に入っていきます。
「至急電報」の意味
二つ目の「至急電報」とは、優先的に送り届ける電報を指す言葉で、通常の電報の2倍の料金がかかりました。
至急を意味する単語である「urgent」の「UR」はモールス信号で「ウナ」と文字があてられていたことから「ウナ電」とも呼ばれていましたが、1976年に廃止されています。
至急の対義語
至急の対義語・反対語としては、急を要しないことを意味する「不急」があります。
至急の類語
至急の類語・類義語としては、物事の進み具合や行動が非常に速いことを意味する「迅速」、すみやかなことを意味する「早速」(読み方:さっそく)、行動が非常に速いことを意味する「素早い」、時間的に間を置かない様子を意味する「直ぐ様」などがあります。
至急の至の字を使った別の言葉としては、これ以上はない状態を意味する「至極」、極めて当然で適切であることを意味する「至当」、この上なく難しいことを意味する「至難」、この上もない幸せを意味する「至福」などがあります。
早急の意味
早急とは
早急とは、非常に急ぐことやその様子を意味しています。
早急の読み方
早急は本来「さっきゅう」という読み方をします。「そうきゅう」という読み方が日常会話においては一般的であるため、慣用読みとして辞書にも「そうきゅう」という読み方が書かれているものもあります。読み方で意味が変わることはありません。
表現方法は「早急に対応」「早急なご対応」「早急な対応」
「早急に対応」「早急なご対応」「早急な対応」などが、早急を使った一般的な言い回しです。
早急の使い方
早急を使った表現として、「早急のご対応ありがとうございます」「早急なご対応ありがとうございました」「早急なご回答をお願いします」「早急にお願い申し上げます」「早急にご返信ください」などがあります。どれもビジネスシーンなどで使われる表現です。
早急は目上の上司にも失礼にならない
目上の人に対してなるべく早く対応してもらいたい場合も、早急という言葉を使ってお願いをすることが出来ます。後に続く文章によっては命令文になることがありますが、基本的には失礼な表現にはなりません。
早急の類語
早急の類語・類義語としては、差し迫って大切なことを意味する「緊切」(読み方:きんせつ)、火がついたように差し迫った状態にあることを意味する「火急」(読み方:かきゅう)、物事の進み方が急であることを意味する「性急」などがあります。
早急の早の字を使った別の言葉としては、急いで物事をする様子を意味する「早々」、早い時期を意味する「早期」、発育が普通より早いことを意味する「早熟」、早くに世を去ってしまうことを意味する「早世」(読み方:そうせい)などがあります。
緊急の意味
緊急とは
緊急とは、重大で即座に対応しなければならないことを意味しています。
表現方法は「緊急時」「緊急事態」「緊急で」
「緊急時」「緊急事態」「緊急で」などが、○○を使った一般的な言い回しです。
緊急の使い方
緊急を使った分かりやすい例としては、「緊急時のために子供にもスマホを持たせている」「万が一の緊急事態に備えて数日間の食料を倉庫に入れている」「忙しいところ悪いがこの作業を緊急でやってほしい」などがあります。
緊急を使った言葉として、「緊急避難」「緊急輸送道路」があります。
「緊急避難」の意味
一つ目の「緊急避難」とは、自分の身に迫る危険などを避けるためのやむを得ない行為で他に害が生じた場合罪に問われないことを指します。例えば、「カルネアデスの板」のように自身の命を守るために相手を殺してしまうといった話が対象です。
難破した船に乗っていた船員が全員海に投げ出され、うち一人は船の一部であった板に縋りついたが、そこにもう一人、同じ板を掴もうとする者がいました。しかし二人そろって沈まないように後から来たものを突き飛ばし水死させた寓話があります。
後に救助された男性は殺人の罪で裁判にかけられることになりますが、最終的に罪に問われることはありませんでした。これが日本の刑法でいう「緊急避難」となります。
「緊急輸送道路」の意味
二つ目の「緊急輸送道路」とは、災害直後から避難や救助、物資供給などの応急活動のために、パトカーや救急車、消防車などの緊急車両が通行できる道を確保するために作られている路線を指します。
緊急の類語
緊急の類語・類義語としては、差し迫ってすぐに処置しなければならない場合を意味する「急場」、危険や災難が差し迫っていることを意味する「危急」、行き詰まってどうにもならなくなることを意味する「窮迫」(読み方:きゅうはく)などがあります。
緊急の緊の字を使った別の言葉としては、しっかりと引き締めることを意味する「緊縮」、心が張り詰めて身体がこわばることを意味する「緊張」、緊張して今にも事が起こりそうなことを意味する「緊迫」、差し迫って重要なことを意味する「喫緊」などがあります。
至急の例文
この言葉がよく使われる場面としては、急を要することを意味する時などが挙げられます。
例文1の「至急性」とは、急ぐ必要がある度合いを意味する言葉です。「至急性が高い」「至急性が低い」というような使い方で、その度合いを表すことができます。
例文2の「大至急」とは、非常に急を要することを意味し、至急よりも急がなければならないものに対して使います。大きいという言葉の対語・対義語は小さいですが、「小至急」とは言いません。
早急の例文
この言葉がよく使われる場面としては、急ぐことや急ぐ様子を意味する時などが挙げられます。
例文3の「早急さ」とは、その物事に急いで取り組む様子を表す言葉です。早急そのものにも急ぐ様子を表す意味は含まれていますが、「早急さ」という使い方が多くなされます。
緊急の例文
この言葉がよく使われる場面としては、即対応しなければ命にかかわることを意味する時などが挙げられます。
例文1の「緊急搬送」とは、緊急を要する患者を救急車などで運ぶことを意味する言葉です。似た言葉に「救急搬送」がありますが、患者を処置することが出来る人たちが使う言葉とされ、「緊急搬送」は一般人が使う言葉として若干使い分けられています。
至急と早急と緊急どれを使うか迷った場合は、非常に急ぐ場合は「至急」を、なるべく早く取り組む場合は「早急」を、命にかかわる上に最も急ぐ場合は「緊急」を使うと覚えておけば間違いありません。