似た意味を持つ「報告」(読み方:ほうこく)と「連絡」(読み方:れんらく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分けを参考にしてみてください。
「報告」と「連絡」という言葉は、どちらも情報を知らせることを表現するという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
報告と連絡の違い
報告と連絡の意味の違い
報告と連絡の違いを分かりやすく言うと、報告というのは、結果とそこに至る経緯を整理して伝えることで、連絡というのは、要件やお願い事を伝えることを意味しているという違いです。
報告と連絡の使い分け方
報告という言葉は、報告書をイメージして考えるのが分かりやすいです。簡単に言うと、報告書とは、出来事のまとめのことです。報告書には普通、一連の出来事についての情報が整理され、まとめられて記載されます。
情報を整理することが、報告という言葉にとって大切な意味になります。例えば、体調不良で欠席を申し出ることは普通「欠席連絡」と表現され、報告という言葉は使われません。
それに対して、病気で入院していた人が退院を伝えることを表現するためには、「退院報告」という言葉が使われます。また、「結果の報告」という言葉は日本語として正しいですが、「結果の連絡」は違和感のある日本語です。
「退院報告」や「結果報告」で、なぜ「報告」という言葉が使われているのかを考えると、「報告」には経緯を整理して伝えるという意味があることが分かります。
単に退院したことを伝えるだけではなく、病気の具合や入院中の生活のことなども含めて知らせることが「退院報告」です。また「結果の報告」も、そこに至る経緯と合わせて結果が知らせられることを表現しています。
次に連絡という言葉ですが、連絡は情報を整理して知らせることではありません。必要な要件を伝えることが連絡です。例えば「欠席連絡」は休むという要件を伝えることです。また、「帰りに牛乳買ってきて」とメールを打ってお願いすることも連絡です。
報告は出来事の経緯を整理して知らせることで、連絡は要件を知らせることです。別の考え方をすると、報告は終わった後で知らせることで、連絡は先に知らせることです。
報告の意味
報告とは
報告とは、出来事の情報を整理して伝えることで、多くの場合、終わった後で伝えることを意味しています。報告という言葉の意味を考えるには、報告書というものを手掛かりにすることが出来ます。
「事故報告書」の意味
例えば「事故報告書」というものがあります。事故がどのような状況で起きたのか、その原因は何か、今後はどのように同様の事故を防ぐべきか等が記載されています。
報告書がまとめられる時点では普通、事故は終わっていることが多いです。収束まで長期に渡る事故の場合、「中間報告書」がまとめられるのが普通です。いずれにしても、報告書というのは、出来事を振り返るために作られます。
報告の使い方
報告とは単に情報を伝えることではなく、振り返って出来事を伝えることを表現する言葉です。そして振り返る時には、情報の整理が行われます。例えば「近況報告」というのは、最近自分の周辺にあったことを整理して伝えることです。
連絡が要件やお願い事を伝えることを表現する言葉なのとは違って、報告にはお願いするという意味合いはありません。「出かける時にゴミを捨てておいて」という家族からの置手紙は、連絡事項を伝えているのであって、報告しているのではありません。
報告というのは、終わった後で、出来事を整理して伝えることを意味します。報告の報という字に「後から」という意味合いがあることを知っていると、理解しやすくなります。「報復」「報酬」「因果応報」などが、報の字を「後から」の意味で使っている言葉です。
表現方法は「報告する」「報告を上げる」「報告を受ける」
「報告する」「報告を上げる」「報告を受ける」などが、報告を使った一般的な言い回しです。
報告の類語
報告の類語・類義語としては、上司や役所に意見や事情などを述べることを意味する「上申」、命令を受けた者が、途中経過や結果を報告することを意味する「復命」、困窮の実情などを述べ、対処を願うことを意味する「陳情」「請願」などがあります。
連絡の意味
連絡とは
連絡とは、要件やお願い事を伝えることで、多くの場合、前もって伝えることを意味しています。
連絡の使い方
例えば「事前に連絡して下さい」という言葉は日常的によく使われる言葉です。
連絡というのは、要件やお願いを伝えることなので、情報を整理する必要はありません。「警察が無線で連絡を取り合う」というのは、今現在どういう状況なのかを伝えあっているだけであって、原因や結果などの事の経緯が考えられているわけではありません。
出来事の経緯を整理して伝えることには、連絡ではなく報告という言葉を使います。
少し難しい言い方をすれば、連絡というのは現場で当事者たちがリアルタイムにするもので、報告というのは事後的に整理や総括をすることです。
また、連絡という言葉は、伝えるという意味以外に、二つ以上の物が関係しているという意味で使われることもあります。
例えば「二つの事件には関連性がある」ことを「二つの事件に連絡がある」と表現することが出来ます。ただし古風な表現なので、自分で使うのは避けましょう。
また、「連絡地点」「連絡船」「連絡網」など、二つ以上の物が接続し合っていることを表現する言葉としても使われることがあります。
表現方法は「連絡する」「連絡を取る」「連絡を受ける」
「連絡する」「連絡を取る」「連絡を受ける」などが、連絡を使った一般的な言い回しです。
連絡の類語
連絡の類語・類義語としては、情報などを書類で伝えることを意味する「伝達」、様子などを伝えることを意味する「案内」、告げて知らせることを意味する「通達」などがあります。
連絡の連の字を使った言葉としては、繋ぎ合わせることを意味する「連結」、人と人とが信頼などによって結びつくことを意味する「連帯」、鎖のように互いに繋がっていることを意味する「連鎖」などがあります。
連絡の絡の字を使った言葉としては。物事の一貫した筋道のことを意味する「脈絡」などがあります。
報告の例文
この言葉がよく使われる場面としては、仕事の場面で経緯や結果を上役に伝えることを表現したい時などが挙げられます。話し言葉では、「報告書」という表現の方が「報告する」よりも使用頻度が高いです。
例文5の表現は、漫画などで臣下が王様に報告するシーンとして多くの人に馴染みのあるものです。災害がまだ収束していないことが伺えるので、報告という言葉は使えないと感じる人もいるとは思いますが、「中間報告」という言葉を考えてみて下さい。
連絡の例文
この言葉がよく使われる場面としては、要件やお願い事を伝えることを表現したい時などが挙げられます。用事などをあらかじめ伝えておくことが連絡ですが、連絡という言葉には「繋がり」という程度の意味もあります。
例文2や5の「連絡」は、要件やお願い事を伝えるというよりも、もっと素朴な「繋がり」程度の意味で使われています。お願いをする意味の連絡と、繋がりの意味の連絡の僅かな違いに気づけるようになると、表現力も理解力も上がります。