似た意味を持つ「苦戦」(読み方:くせん)と「苦労」(読み方:くろう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「苦戦」と「苦労」という言葉は、どちらも「苦しむさま」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
苦戦と苦労の違い
「苦戦」と「苦労」の意味の違い
苦戦と苦労の違いを分かりやすく言うと、苦戦とは苦しい戦いや苦しみながら努力することを表し、苦労とは苦しい思いをすることを表すという違いです。
「苦戦」と「苦労」の使い方の違い
一つ目の苦戦を使った分かりやすい例としては、「彼は仕事探しに苦戦しているようだ」「新規ビジネスの立ち上げに苦戦している」「勝利したものの苦戦を強いられた」「激戦地が陥落するなど苦戦が続いています」などがあります。
二つ目の苦労を使った分かりやすい例としては、「生きていれば何かと苦労の種は尽きません」「先人たちの苦労が偲ばれる」「ポップなイラストを描くのに苦労した」「成功した経営者には苦労人が多い」などがあります。
「苦戦」と「苦労」の使い分け方
苦戦と苦労という言葉は、どちらも体や気を使って苦しんでいる様子を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
苦戦とは、「勝利したものの苦戦を強いられた」のような使い方で、相手が強かったり不利な状況だったりして苦しい戦いをすることを意味します。また、「仕事探しに苦戦している」のような使い方で、物事を成し遂げるために苦しみながら努力することの意味も持つ言葉です。
苦労とは、仕事や心配ごとなどのために肉体や精神を使って、疲れたり苦しい思いをしたりすることを意味します。将来的にどうなるかわからないことを、あれこれ心配することを「取り越し苦労」と言います。
つまり、苦戦とは苦しい戦いをすることや苦しみながら努力することであり、苦労とは疲れたり苦しい思いをしたりすることを意味します。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。
「苦戦」と「苦労」の英語表記の違い
苦戦を英語にすると「hard fight」「desperate battle」「struggle」となり、例えば上記の「仕事探しに苦労する」を英語にすると「struggle to find a job」となります。
一方、苦労を英語にすると「hardship」「trouble」「difficulty」となり、例えば上記の「苦労の種」を英語にすると「a source of trouble」となります。
苦戦の意味
「苦戦」とは
苦戦とは、相手が強く、不利な状況で苦しい戦いをすることを意味しています。
その他にも、「物事をなしとげるために苦しみながら努力すること」の意味も持っています。
表現方法は「苦戦した」「苦戦する」
「苦戦した」「苦戦する」などが、「苦戦」を使った一般的な言い回しです。
「苦戦」の使い方
「自民党は苦戦を強いられるだろう」「大苦戦の末に白星をあげました」「苦戦すると思いきや今も善戦を続けている」などの文中で使われている苦戦は、「不利な状況で苦しい戦いをすること」の意味で使われています。
一方、「マンション探しは苦戦中です」「プレゼンの資料作りに苦戦しています」「難問に苦戦しながらも奮闘する」「面倒くさがりは高校英語で苦戦するでしょう」などの文中で使われている苦戦は、「苦しみながら努力すること」の意味で使われています。
苦戦とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ち、それぞれの意味で用いられているので、文脈により意味を判断する必要があります。苦戦の「苦」は精神的または肉体的につらい思いをすること、「戦」は敵と争うことや勝敗を争うことを表す漢字です。
「苦戦を強いられる」の意味
苦戦という言葉を用いた言い回しには「苦戦を強いられる」があります。「苦戦を強いられる」とは、相手の力量が強大であったり、不利な条件や準備不足などによって、とても厳しい戦いをしなければならない状況になることを意味します。
「悪戦苦戦」の意味
悪戦を用いた誤った表現には「悪戦苦戦」があります。正しくは「悪戦苦闘」(読み方:あくせんくとう)であり、強敵相手に苦しい戦いをすること、困難な状況の中で苦しみながら努力することを意味します。
「苦戦」の対義語
苦戦の対義語・反対語としては、力を尽くしてよく戦い抜くことを意味する「善戦」などがあります。
「苦戦」の類語
苦戦の類語・類義語としては、苦しみに耐えながら戦うことを意味する「苦闘」、不利な苦しい戦いを意味する「悪戦」、形勢が不利であることを意味する「劣勢」、困難な状況の中で苦しみながら努力することを意味する「悪銭苦闘」などがあります。
苦労の意味
「苦労」とは
苦労とは、精神的、肉体的に力を尽くし、苦しい思いをすることを意味しています。
その他にも、「人に世話をかけたり、厄介になったりすること」の意味も持っています。
表現方法は「苦労する」「本当の苦労」
「苦労する」「本当の苦労」などが、「苦労」を使った一般的な言い回しです。
「苦労」の使い方
「英語の勉強で苦労する」「彼は幼い頃に両親を亡くした苦労人です」「苦労をねぎらう言葉をメールにしたためる」「若い頃の苦労は買ってでもしろ」などの文中で使われている苦労は、「力を尽くし苦しい思いをすること」の意味で使われています。
一方、「長い間ご苦労さまでした」「今日もお勤めご苦労様です」「ご苦労様を目上の人に言うと失礼にあたる」などの文中で使われている苦労は、「人に世話をかけたりすること」の意味で使われています。
苦労とは、仕事や生活などのために体や気を使って、骨を折ったり苦しい思いをしたりすることを意味します。また、多く「ご苦労」の形で、人に世話をかけたり厄介をかけることの意味でも使用されています。
「苦労人」の意味
苦労を用いた日本語には「苦労人」があります。苦労人とは、大変な苦労を経験して、世の中の事や人情に通じている人を意味します。また、小さいことまで気にかけて心配する人の性質を「苦労性」と言います。
「苦労」の対義語
苦労の対義語・反対語としては、心身の苦痛や生活の苦労がなく楽々としていることを意味する「安楽」などがあります。
「苦労」の類語
苦労の類語・類義語としては、心身が疲れ苦しい思いをすることを意味する「労苦」、つらい目や苦しい思いを意味する「辛酸」、ある事を成し遂げようと心をくだくことを意味する「腐心」、精を出して働くことを意味する「骨折り」などがあります。
苦戦の例文
この言葉がよく使われる場面としては、強敵を相手にしたり不利な状況のもとで非常な苦労をして戦うこと、何かを成しとげようとして苦しみながら努力することを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、苦戦という言葉は、日常生活からビジネスシーンやスポーツシーンまで幅広い場面で使用されています。
苦労の例文
この言葉がよく使われる場面としては、肉体や精神を使って疲れたり苦しい思いをしたりすること、人に世話をかけることを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある苦労と努力の違いは、苦労は苦しい思いを強いられる環境下の能動的行為であることに対し、努力は目標達成のために必要な事を頑張る自発的行為である点です。
苦戦と苦労という言葉は、どちらも「苦しんでいる様子」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、苦しい戦いをすることや苦しみながら努力することを表現したい時は「苦戦」を、苦しい思いをすることを表現したい時は「苦労」を使うようにしましょう。