似た意味を持つ「暫定」(読み方:ざんてい)と「恒久」(読み方:こうきゅう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「暫定」と「恒久」という言葉は、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
暫定と恒久の違い
暫定と恒久の意味の違い
暫定と恒久の違いを分かりやすく言うと、暫定とは仮に定めることを意味し、恒久とは永く変わらないことを意味するという違いです。
暫定と恒久の使い分け方
一つ目の暫定を使った分かりやすい例としては、「暫定措置法に基づく暫定的な経済救済施策である」「数値は暫定版であり今後変更になる可能性があります」「暫定対策ばかりで根本的な解決案がない」などがあります。
二つ目の恒久を使った分かりやすい例としては、「恒久の平和を願って黙とうする」「システムトラブルに対し恒久対応する」「生活様式が恒久的に変わるかもしれない」「課税免除措置の恒久化を求める」などがあります。
暫定と恒久という言葉は、「暫定措置」「恒久措置」や「暫定対策」「恒久対策」など似た表現をするために、混同して使われやすいのですが、意味は大きく異なるので注意が必要です。暫定とは正式に決定するまで仮に定めることを意味し、恒久とはある状態が永く変わらないことを意味します。
「暫定対策」と「恒久対策」の違い
上記の例文にある「暫定対策」とは、正式な対策が決まるまで、仮の対策としてとりあえず定めるものです。今後、変更になる可能性がある対策と言えます。一方、「恒久対策」とは、その場しのぎではない、長期的な対策や根本的な解決策などのことです。
暫定は変わる可能性があり、恒久は変わる可能性がないことであり、この点では暫定と恒久は相反する意味を持つ言葉だと言えるでしょう。
暫定と恒久の英語表記の違い
暫定を英語にすると「temporary」「provisional」「preliminary」となり、例えば上記の「暫定措置」を英語にすると「temporary step」となります。一方、恒久を英語にすると「permanent」「lasting」「eternal」となり、例えば上記の「恒久の平和」を英語にすると「lasting peace」となります。
暫定の意味
暫定とは
暫定とは、正式な決定がなされるまで、仮の措置としてとりあえず定めることを意味しています。
表現方法は「暫定案」「暫定対応」「暫定的」「暫定価格」
「暫定案」「暫定対応」「暫定的」「暫定価格」などが、暫定を使った一般的な言い回しです。
暫定の使い方
暫定を使った分かりやすい例としては、「当面は暫定的にチーフを決めて対応したい」「国内入荷時期と暫定価格がリリースされた」「暫定版ではない正式版を準備中です」「彼女は彼のことを暫定ボーイフレンドだ言っている」などがあります。
その他にも、「暫定版ですが顧客情報を作成しました」「暫定政権樹立のための合意が成立した」「これは暫定的に制定された法律だ」「暫定任意適用事業となる要件を満たしている」「暫定対応しながら恒久対応を検討する」などがあります。
暫定という言葉の「暫」とは、訓読みで「しばらく」と読み、わずかの間を表します。この「暫」と、物事を決めることを意味する「定」が組み合わさり、暫定は、はっきり決まるまでの間、仮に定めておくことを表します。
「暫定税率」の意味
暫定という言葉を用いた日本語には「暫定税率」があります。暫定税率とは暫定的に決めた税率であり、関税率において輸入品に対して暫定措置として定めた税率を意味します。例えば、ガソリン税において、本則税率とは別に期限を切って上乗せされる税率のことです。
暫定の対義語
暫定の対義語・反対語としては、果てしなく長く続くことを意味する「悠久」、長く続くことを意味する「長久」、変わらないことを意味する「不変」などがあります。
暫定の類語
暫定の類語・類義語としては、まだ決まっていないことを意味する「未定」、正式の発表の前に内々で定まることを意味する「内定」、行事や行動を前もって定めることを意味する「予定」、その期間だけであることを意味する「臨時」などがあります。
恒久の意味
恒久とは
恒久とは、ある状態が永く変わらないことを意味しています。
表現方法は「恒久化」「恒久制度」「恒久的」
「恒久化」「恒久制度」「恒久的」などが、恒久を使った一般的な言い回しです。
恒久の使い方
恒久を使った分かりやすい例としては、「世界の恒久平和を願います」「恒久に存在する物質はないだろう」「私の忠誠心は恒久不変であると誓います」「半恒久的な眉ペンシルを通販で買う」「アートの恒久性について議論した」などがあります。
その他にも、「問題を洗い出し恒久対応するべきだ」「時限的な措置を恒久化する」「アスベスト被害の恒久対策を求める意見書だ」「国内に恒久的施設がない場合は原則課税されない」「天皇退位の恒久制度化は課題が多い」などがあります。
恒久という言葉の「恒」とはいつまでも変わらないことを表し、「久」とは時間が長いことやひさしいことを表します。恒久とは、物事が長い間続くこと、ある状態が時間的に無限に続くことを意味する言葉です。
四字熟語「恒久不変」の意味
恒久を用いた四字熟語には「恒久不変」があり、 いつまでも果てしなく続いて変わらないことを意味します。恒久は果てしない時間を表し、不変は変わらないことを表します。同じ意味の四字熟語には「永久不変」「万世不易」があります。
恒久の対義語
恒久の対義語・反対語としては、その時だけやその場かぎりを意味する「一時」、 一時的なことを意味する「仮初め」、古いものから脱して新しいものへ移り変わる途中を意味する「過渡」などがあります。
恒久の類語
恒久の類語・類義語としては、いつまでも限りなく続くことを意味する「永久」、いつまでも果てしなく続くことを意味する「永遠」、いつまでも変わらないことを意味する「とわ」などがあります。
暫定の例文
この言葉がよく使われる場面としては、正式に決定するまで仮に定めること、臨時の措置を表現したい時などが挙げられます。
例文2にある暫定版とは、正式版が利用可能になるまでの間、臨時措置として提供される版のことです。この場合、暫定版の議事録に加筆訂正が入り、正式版の議事録と異なる部分がある可能性があります。例文5にある暫定措置とは、正式な決定がなされるまでの仮の措置です。
恒久の例文
この言葉がよく使われる場面としては、久しく変わらないことを表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「恒久化」とは、一時的な措置や暫定的な処理として実施されているものを、恒常的なものにすることを意味します。例文4にある「恒久的施設」とは事業を行う一定の場所等であり、特に外国法人に対する課税の根拠の概念として用いられる言葉です。
暫定と恒久という言葉は、似た言い回しをする言葉ですが、意味は大きく異なります。どちらの言葉を使うか迷った場合、正式に決定するまで仮に定めることを表現したい時は「暫定」を、ある状態が永く変わらないことを表現したい時は「恒久」を使うようにしましょう。