似た意味を持つ「阿鼻叫喚」(読み方:あびきょうかん)と「地獄絵図」(読み方:じごくえず)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「阿鼻叫喚」と「地獄絵図」という言葉は、どちらも「非常にむごたらしいさま」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
阿鼻叫喚と地獄絵図の違い
阿鼻叫喚と地獄絵図の意味の違い
阿鼻叫喚と地獄絵図の違いを分かりやすく言うと、阿鼻叫喚とは動的なニュアンスを表し、地獄絵図とは静的なニュアンスを表すという違いです。
阿鼻叫喚と地獄絵図の使い方の違い
一つ目の阿鼻叫喚を使った分かりやすい例としては、「何処からともなく阿鼻叫喚の声が聞こえてきた」「記録的暴風で阿鼻叫喚の巷と化した」「不景気により経済界は阿鼻叫喚の状態だ」「阿鼻叫喚ともいえる悲惨な状況だ」などがあります。
二つ目の地獄絵図を使った分かりやすい例としては、「地獄絵図のような凄惨な写真であった」「幼少期にみたリアルな地獄絵図が忘れられない」「世界は地獄絵図さながらの様相を呈している」「未曾有の大火災で街は地獄絵図と化した」などがあります。
阿鼻叫喚と地獄絵図の使い分け方
阿鼻叫喚と地獄絵図という言葉は、どちらも仏教に由来する言葉であり、非常に悲惨でむごたらしい様子を表す言葉ですが、ニュアンスは異なります。阿鼻叫喚とは、泣き叫ぶほどの混乱や悲惨な状況を意味し、地獄絵図は地獄絵のような惨たらしい状況を意味します。
つまり、阿鼻叫喚は泣き叫ぶという動的なニュアンスがあり、地獄絵図は悲惨な状況を場面として捉える静的なニュアンスがあるのです。阿鼻叫喚と地獄絵図は、ほぼ同じ意味を持ちますが、泣き叫ぶという意味合いを持たせたい場合は阿鼻叫喚を、そうでない場合は地獄絵図を使うと良いでしょう。
阿鼻叫喚と地獄絵図の英語表記の違い
阿鼻叫喚を英語にすると「agonizing cries」「pandemonium」となり、例えば上記の「阿鼻叫喚の声が聞こえてきた」を英語にすると「I heard agonizing cries」となります。
一方、地獄絵図を英語にすると「picture of Hell」「painting of a scene in Hell」となり、例えば上記の「地獄絵図のような」を英語にすると「like a picture of Hell」となります。
阿鼻叫喚の意味
阿鼻叫喚とは
阿鼻叫喚とは、地獄の様々な責め苦にあって泣き叫ぶ様子を意味しています。
その他にも、悲惨な状況に陥り、混乱して泣き叫ぶことの意味も持っています。
表現方法は「阿鼻叫喚の様相」「阿鼻叫喚した」「阿鼻叫喚となった」
「阿鼻叫喚の様相」「阿鼻叫喚した」「阿鼻叫喚となった」などが、阿鼻叫喚を使った一般的な言い回しです。
阿鼻叫喚の使い方
「戦争で阿鼻叫喚の巷と化した」「大洪水で街は一変、阿鼻叫喚の様相を呈した」「なまはげの登場に子供たちは阿鼻叫喚した」「テレビは阿鼻叫喚の災害現場を伝えた」などの文中で使われている阿鼻叫喚は、「様々な責め苦にあって泣き叫ぶ様子」の意味で使われています。
一方、「事故現場は阿鼻叫喚となった」「未曾有の危機で阿鼻叫喚相場となるだろう」「就職先が見つからず阿鼻叫喚の生活を送っています」などの文中で使われている阿鼻叫喚は、「悲惨な状況に陥り混乱して泣き叫ぶこと」の意味で使われています。
阿鼻叫喚の由来
阿鼻叫喚という言葉は、仏教の言葉に由来しています。阿鼻叫喚とは、阿鼻地獄と叫喚地獄を合わせた言葉であり、地獄の様々な責め苦にあって泣き叫ぶ様子を意味します。この意味が転じて、非常な惨苦に陥って号泣し救いを求めること、混乱して泣き叫ぶことの意味で使われるようになりました。
阿鼻叫喚の「叫喚」とは、大声でわめきさけぶことも表します。現在では、突然起こる事故や災害などで、パニックに陥ったり恐怖を感じて泣き叫ぶ人々がいる惨たらしい状況を表す時に使われる言葉です。
阿鼻叫喚の対義語
阿鼻叫喚の対義語・反対語としては、世の中や暮らしが穏やかで安らかなさまを意味する「安穏無事」、苦しみや悩みのまったくない安楽な世界を意味する「安楽浄土」などがあります。
阿鼻叫喚の類語
阿鼻叫喚の類語・類義語としては、きわめてむごたらしいことを意味する「惨烈」、いたましくて見るに忍びないさまを意味する「惨憺」、悲しみのあまり声をあげて泣くことを意味する「慟哭」、泣き叫ぶことを意味する「号泣」などがあります。
地獄絵図の意味
地獄絵図とは
地獄絵図とは、地獄で亡者が苦しむありさまを描いた絵を意味しています。
その他にも、極めてむごたらしい状況になることの意味も持っています。
表現方法は「地獄絵図の現場」「地獄絵図と化した」「地獄絵図のような」
「地獄絵図の現場」「地獄絵図と化した」「地獄絵図のような」などが、地獄絵図を使った一般的な言い回しです。
地獄絵図の使い方
「有名な地獄絵図があるお寺です」「年に一度、住職が地獄絵図の解説をしてくれる」「その地獄絵図にはお腹を空かせた餓鬼が描かれていた」などの文中で使われている地獄絵図は、「地獄で亡者が苦しむありさまを描いた絵」の意味で使われています。
一方、「銃乱射テロの現場は阿鼻叫喚の地獄絵図となった」「記者という職業柄、地獄絵図の現場に遭遇することもある」「脱線事故現場の写真は、まさに地獄絵図である」などの文中で使われている地獄絵図は、「きわめてむごたらしい状況」の意味で使われています。
地獄絵図の由来
地獄絵図とは、文字通り、地獄を描いた図のことであり、地獄に堕ちた亡者や罪人などが、厳しい処罰を受けるなどして苦しむ様子を絵に表したもののことです。この意味が転じて、地獄のような凄惨な状況や、非常にむごたらしい様子を意味する言葉として使われるようになりました。
地獄絵図は、お釈迦様の時代にインドで信じられていた六道輪廻の世界を表したものとして、日本にも仏教の伝来と共に伝わったものです。昔は日本でも悪行をなすと地獄に落ちるという教えが説得力を持ち、犯罪抑止に一定の効果がありました。「地獄図」「地獄様相」とも言います。
地獄絵図の対義語
地獄絵図の対義語・反対語としては、まったく苦しみのない安楽な理想の世界を意味する「極楽浄土」、阿弥陀仏の極楽浄土のことを意味する「安養浄土」などがあります。
地獄絵図の類語
地獄絵図の類語・類義語としては、目をそむけたくなるほどいたましいことを意味する「凄惨」、見聞きに耐えられないほどいたましいことを意味する「悲惨」、血みどろの激しい戦いや争いの行われる場所を意味する「修羅場」などがあります。
阿鼻叫喚の例文
この言葉がよく使われる場面としては、悲惨な状況になり人々が泣き叫んだりして混乱している様子、非常に悲惨でむごたらしいさまを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3にある「阿鼻叫喚」は、人々が泣き叫んだりして混乱している様子の意味で使われています。例文4や例文5にある「阿鼻叫喚」は、非常に悲惨でむごたらしいさまの意味で使われています。
地獄絵図の例文
この言葉がよく使われる場面としては、地獄で亡者が苦しむありさまを描いた絵、きわめてむごたらしい状況になることを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3にある「地獄絵図」は、地獄で亡者が苦しむありさまを描いた絵の意味で使われています。例文4や例文5にある「地獄絵図」は、きわめてむごたらしい状況になることの意味で使われ、例文4にある「地獄絵図と化す」とは、地獄絵図へと変化したことを表現しています。
阿鼻叫喚と地獄絵図という言葉は、どちらも非常に惨たらしい様子を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、悲惨な状況で泣き叫ぶという意味合いを表現したい時は「阿鼻叫喚」を、そうでない時は「地獄絵図」を使うようにしましょう。