似た意味を持つ「野放図」(読み方:のほうず)と「傍若無人」(読み方:ぼうじゃくぶじん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「野放図」と「傍若無人」という言葉は、どちらも「横柄な態度」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
野放図と傍若無人の違い
野放図と傍若無人の意味の違い
野放図と傍若無人の違いを分かりやすく言うと、野放図とは横柄な態度だけでなく際限ない様子も表し、傍若無人とは横柄な態度のみを表すという違いです。
野放図と傍若無人の使い方の違い
一つ目の野放図を使った分かりやすい例としては、「法は野放図に拡大して解釈するものではない」「野放図な子に育ったのは親の責任だろう」「野放図な人は周囲から敬遠される」「野放図に宅地が開発されている」などがあります。
二つ目の傍若無人を使った分かりやすい例としては、「酔っぱらって傍若無人の振る舞いをする」「彼の傍若無人ぶりに戸惑っています」「後輩の傍若無人な態度にイライラする」「それにしても傍若無人な言い方だ」などがあります。
野放図と傍若無人の使い分け方
野放図と傍若無人という言葉は、どちらも人のことなどまるで気にかけず、勝手気ままな言動をするさまを表します。上記の例文にある「野放図な子」「傍若無人な態度」の野放図と傍若無人は、互いに置き換えて使うことが出来ます。
さらに、野放図という言葉には「際限のないこと、締まりがないこと」の意味がありますが、傍若無人にこの意味はないため、「野放図に拡大する」「野放図に開発される」の野放図は傍若無人に置き換えることが出来ません。
つまり、野放図は人の性質や態度だけでなく物事の様子も表しますが、傍若無人は人の性質や態度のみを表します。これが、二つの言葉の明確な違いになります。
野放図と傍若無人の英語表記の違い
野放図を英語にすると「wild」「egoistic」「limitless」となり、例えば上記の「野放図に拡大する」を英語にすると「expand without limitation」となります。
一方、傍若無人を英語にすると「outrageous」「arrogant」「insolence」となり、例えば上記の「傍若無人の振る舞いをする」を英語にすると「indulge in outrageous behaviour」となります。
野放図の意味
野放図とは
野放図とは、人を人とも思わないずうずうしい態度、横柄なことを意味しています。
その他にも、「際限のないこと、締まりがないこと」の意味も持っています。
野放図の読み方
野放図の読み方は「のほうず」です。誤って「やほうず」「のぼうず」などと読まないようにしましょう。
野放図の方が野方図より一般的
また、野放図は「野方図」とも書き表しますが、一般的には「野放図」と表記されています。
表現方法は「野放図に走る」「野放図もない」「野放図な人」
「野放図に走る」「野放図もない」「野放図な人」などが、野放図を使った一般的な言い回しです。
野放図の使い方
「同僚の野放図な性格にうんざりしている」「若さは野放図で無謀なものです」「野放図な芸風を売りにしているタレントです」などの文中で使われている野放図は、「人を人とも思わないずうずうしい態度」の意味で使われています。
一方、「クラスが荒れていて野放図状態です」「投げやりに野放図に走ることのないように」「英語学習を野放図にやるのは効率が悪い」「走り書きで野放図的メモを取る」「野放図もない国債発行に不安が募る」などの文中で使われている野放図は、「際限のないこと」の意味で使われています。
野放図とは、上記の例文にあるように二つの意味があります。図々しい態度や横柄なさま、際限がなく締まりがないこと、それぞれの意味で使われているため文脈により捉える必要があります。
野放図の語源
野放図の語源は二つの説があります。一つは、限度や際限を表す「方図」が由来であり、「野放図」の「野」は接頭語の「の」の当て字だと考えられています。もう一つは、「野風俗」という言葉が由来であり、振る舞いや態度が洗練されていないことが元々の意味だと言われています。
野放図の対義語
野放図の対義語・反対語としては、控え目でつつましいことを意味する「謙虚」、相手を敬って自分を控えめにすることを意味する「謙る」(読み方:へりくだる)、限度や限界があることを意味する「有限」などがあります。
野放図の類語
野放図の類語・類義語としては、したいだけすることを意味する「したい放題」、いばって他人を見下げるような態度をとることを意味する「尊大」、いくら取ってもなくならないことを意味する「無尽蔵」、数量や程度に限度がないことを意味する「無限」などがあります。
傍若無人の意味
傍若無人とは
傍若無人とは、人前であるにもかかわらず、自分勝手な振る舞いをすることを意味しています。
表現方法は「傍若無人な人」「傍若無人な振る舞い」「傍若無人に振る舞う」
「傍若無人な人」「傍若無人な振る舞い」「傍若無人に振る舞う」などが、傍若無人を使った一般的な言い回しです。
傍若無人の使い方
傍若無人を使った分かりやすい例としては、「人目をはばからず傍若無人の振る舞いをする」「母のような傍若無人な人にはなりたくない」「隣人が傍若無人に英語の曲を大音量で流している」などがあります。
その他にも、「傍若無人な高齢者の振る舞いに唖然となる」「傍若無人な態度を改めてください」「でたらめな歌詞を傍若無人に披露した」「君はいい意味で傍若無人なところがあるね」「生徒の傍若無人ぶりに腹が立つ」などがあります。
傍若無人の由来
傍若無人の由来は、中国の歴史書「史記」の刺客伝にあります。刺客である荊軻は、酒に酔うと仲間と大声で泣きました。その様子を「傍若無人」と記しています。傍若無人を訓読みすると「かたわらに人無きがごとし」となり、人のことなど気にかけず、自分勝手に振る舞うことを表します。
傍若無人の対義語
傍若無人の対義語・反対語としては、控え目な態度をとることを意味する「謙遜」、自分を劣ったものとして卑しめることを意味する「卑下」、人に対して言葉や行動を慎み控えることを意味する「遠慮」などがあります。
傍若無人の類語
傍若無人の類語・類義語としては、自分の思いどおりに振る舞うことを意味する「我儘」、自分勝手にふるまうことを意味する「やりたい放題」、礼儀にはずれることを意味する「無礼」、遠慮をせず好きなように振る舞うことを意味する「無遠慮」などがあります。
傍若無人の類語となる四字熟語には、「勝手気儘」「得手勝手」「我田引水」「独断専行」などがあります。いずれも自分を優先し、自分のしたいように行動することを表すマイナスイメージの言葉です。
野放図の例文
この言葉がよく使われる場面としては、横柄なさま、締まりがないさまを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2の文中にある野放図は、ずうずうしい態度や横柄なさまの意味で用いられています。例文3から例文5の野放図は、 際限のないさまや締まりがないことの意味で用いられています。
傍若無人の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人のことなどまるで気にかけず、自分勝手に振る舞うことを表現したい時などが挙げられます。
例文5について、傍若無人は自分勝手な振る舞いを表し、基本的に悪い意味で使われる言葉ですが、ここでは、周りに迎合せずに自分をしっかり持っているという良い意味で捉えています。
野放図と傍若無人という言葉は、どちらも横柄な態度を表します。さらに野放図には、際限がないことや締まりがないことの意味もあることを覚えておきましょう。