似た意味を持つ「放念」(読み方:ほうねん)と「失念」(読み方:しつねん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「放念」と「失念」という言葉は、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
「放念」と「失念」の違い
「放念」と「失念」の意味の違い
「放念」と「失念」の違いを分かりやすく言うと、「放念」とは相手を対象に使う言葉、「失念」とは自分を対象に使う言葉という違いです。
「放念」と「失念」の使い方の違い
一つ目の「放念」を使った分かりやすい例としては、「どうぞご放念くださいませ」「ご相談したいことがあるのですが、ご都合が悪ければご放念ください」「内容に変更がありましたのでこの件はご放念ください」「何卒ご放念ください」などがあります。
二つ目の「失念」を使った分かりやすい例としては、「返信するのを失念しており大変申し訳ございません」「申し訳ありません。社内打ち合わせの日を失念しておりました」「私は彼女が休暇だということを失念しておりました」などがあります。
「放念」と「失念」の使い分け方
「放念」と「失念」は似た言葉ですが、意味や使う対象が異なっているので間違えないように注意しましょう。
「放念」は気に掛けないことや心配しないことを意味しており、「お話したいことがあるのですがご都合が悪ければご放念ください」「先程送信したメール内容に変更がありましたのでご放念ください」のように、相手を対象にして使う言葉です。
一方、「失念」はうっかり忘れることを意味しており、上記の「お返事するのを失念しており大変申し訳ございません」「勉強会の日程を失念しており申し訳ありません」のように、自分自身を対象にして使うというのが違いになります。
「放念」と「失念」の英語表記の違い
「放念」を英語にすると「don’t worry」「disregard」となり、例えば上記の「何卒ご放念ください」を英語にすると「Please don’t worry about it」となります。
一方、「失念」を英語にすると「forgetting」「forget」となり、例えば上記の「私は彼女が休暇だということを失念しておりました」を英語にすると「I had forgotten that She was on vacation」となります。
「放念」の意味
「放念」とは
「放念」とは、気に掛けないことや心配しないことを意味しています。
表現方法は「ご放念ください」
「ご放念ください」が「放念」を使った一般的な言い回しになります。
「放念」の使い方
「放念」を使った分かりやすい例としては、「昨日送ったメールにつきましては内容の変更があるためご放念ください」「本サービスをご利用予定の無い方は本通知はご放念ください」「是非お会いしたいのですがご都合が悪ければご放念ください」などがあります。
「放念」はビジネスシーンにおいても使うことができる言葉ですが、敬語表現ではないため上司や取引先などの目上の人に対して使う場合は、「ご放念ください」のように丁寧な言い回しすることが必要です。
また、「放念」は以下のような場面でも使うことができます。
一つ目は、相手に送った通知や依頼などに対して、気にしないでくださいということを伝えたい場合です。
二つ目は、「お会いしてお話したいことがあるのですがご都合がわるければご放念ください」のように、こちらの都合で一方的に何かを誘う場合です。「放念」という言葉を使うことによって、相手に対して配慮することができます。
三つ目は、「毎日元気に過ごしているのでご放念ください」のように、年賀状などで相手に対して元気に過ごしているので気にしないでくださいということを伝える場合です。
「放念する」のように自分自身には使えない
「放念」は気に掛けないことや心配しないことを意味する言葉なので、「放念する」のように自分自身に対して使うことはできません。
「放念」の対義語
「放念」の対義語・反対語としては、気に掛かって不安に思うことを意味する「懸念」があります。
「放念」の類語
「放念」の類語・類義語としては、忘れて欲しいことを意味する「お忘れください」、気に掛けないで欲しいことを意味する「お見捨ておきください」などがあります。
「失念」の意味
「失念」とは
「失念」とは、うっかり忘れることを意味しています。
表現方法は「失念しておりました」「失念してしまいました」「失念したため」
「失念しておりました」「失念してしまいました」「失念したため」などが、「失念」を使った一般的な言い回しになります。
「失念」の使い方
「失念」を使った分かりやすい例としては、「約束を失念して失礼いたしました」「課長へ伝言を伝えるのを失念しておりました」「領収書の提出期限を失念してしまい大変申し訳ございません」などがあります。
「失念」の由来
「失念」の由来は仏教用語です。「失念」は心を散乱させる煩悩の一つと言われており、仏教用語の「念」はこれまでの意識や経験を記憶すること、「失」は物忘れや気づきを失った心のことを意味しています。
そのため、仏教用語の「失念」は記憶をさまたげる心の作用のことを意味しています。これが転じて、現代ではうっかり忘れることの意味で使われるようになりました。
「失念」は「メールの返信を失念してしまいました」「お名前を失念して申し訳ありません」などのように、約束、予定、指示、名前など、物事の記憶を忘れてしまった場合に使う言葉です。財布や携帯などの物を忘れた場合には使わない言葉なので注意しましょう。
また、「失念」は自分自身の行動に対して使う言葉で、相手や第三者に対しては使うことはできません。
「失念」の類語
「失念」の類語・類義語としては、何かに熱中してうっかり気がつかずにいることを意味する「忘れる」、物事を忘れることを意味する「物忘れ」、すっかり忘れてしまうことを意味する「忘却」などがあります。
「放念」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、気に掛けないことや心配しないことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文のように、「放念」は相手に対して使う言葉になります。
「失念」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、うっかり忘れることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文のように、「失念」は自分自身に対して使う言葉になります。
「放念」と「失念」は似た言葉ですが、意味は異なっています。どちらの言葉を使うか迷った場合、「放念」は気に掛けないことや心配しないことを意味しており、相手に対して使う言葉、「失念」はうっかり忘れることを意味しており、自分に対して使う言葉と覚えておきましょう。