似た意味を持つ「懇願」(読み方:こんがん)と「嘆願」(読み方:たんがん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「懇願」と「嘆願」という言葉は、どちらも「心から願うこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
懇願と嘆願の違い
懇願と嘆願の意味の違い
懇願と嘆願の違いを分かりやすく言うと、懇願とは事情を述べずにひたすら頼むことを表し、嘆願とは事情を述べながら熱心に頼むことを表すという違いです。
懇願と嘆願の使い方の違い
一つ目の懇願を使った分かりやすい例としては、「懇願するような目でじっと見つめている」「お小遣いアップを妻に懇願する」「看板にイラストを描いて欲しいと懇願される」「親に結婚するよう懇願されるようになりました」などがあります。
二つ目の嘆願を使った分かりやすい例としては、「厳しい処分を望み厳罰嘆願書を提出しました」「沖縄の即時復帰の嘆願書と署名簿を送付しました」「検察庁に提出する嘆願書の書式をダウンロードする」などがあります。
懇願と嘆願の使い分け方
懇願と嘆願という言葉は、どちらも心からお願いすることを表しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
懇願とは、誠意をもって心からお願いすること、ひたすらに依頼することを意味します。どうしても受け入れてもらいたい願いを、熱心に依頼することを表しています。
嘆願とは、事情を伝えて熱心に頼むことを意味する言葉です。例えば、保育園入所のための嘆願書には、その幼稚園にどうしても通わせたい特別な事情があることなどを書く必要があります。
つまり、二つの言葉の違いは、事情を述べるという要素があるかどうかです。懇願は詳しい事情はなしにひたすらお願いすることを表現し、嘆願は詳しい事情を交えながらお願いすることを表す言葉です。
懇願と嘆願の英語表記の違い
懇願も嘆願も英語にすると「entreaty」「implore」「beg」となり、例えば上記の「懇願するような目で」を英語にすると「with begging eyes」となります。
懇願の意味
懇願とは
懇願とは、ねんごろに願うこと、ひたすらお願いすることを意味しています。
懇願の使い方
懇願を使った分かりやすい例としては、「親にペットを飼いたいと懇願する」「誰かに助けを懇願する夢を見ました」「過去の過ちを許して欲しいと懇願する」「英語教室を辞めたいと母親に懇願するも無駄だった」などがあります。
その他にも、「息子に英語留学したいと懇願される」「不倫を見逃してほしいと懇願する」「親にお金を貸してと懇願されるとは思わなかった」「メールには依頼内容と共に懇願の顔文字が書いてありました」などがあります。
懇願は「悃願」とも書きますが、一般的には「懇願」と表記されています。
懇願とは、心の底から願うこと、ひたすらに頼み込むことを意味します。懇願の「懇」は訓読みで「ねんごろ」と読み、真心をこめることや心をこめてすることを表します。「願」は請い求めることを表す漢字です。
懇願という言葉は、誠意を尽くして何かお願いごとをするという意味で、ビジネスシーンでも用いることができます。ただし、多用すると軽薄な印象になるので使い過ぎないように注意しましょう。
懇願の類語
懇願の類語・類義語としては、熱烈に願うことやその願いを意味する「熱願」、ひたすら願い望むことを意味する「懇望」、心を込めてひたすら頼むことを意味する「懇請」、泣きながらすがりつくことを意味する「泣きつく」などがあります。
嘆願の意味
嘆願とは
嘆願とは、事情を詳しく述べて熱心に頼むことを意味しています。
嘆願の使い方
嘆願を使った分かりやすい例としては、「早期仮釈放を求める嘆願書に署名しました」「被害者から裁判所に向けて嘆願書が提出されました」「嘆願書と要望書の違いが分かりません」「嘆願書のひな形をダウンロードする」などがあります。
その他にも、「処分軽減のための嘆願書を提出しました」「会社内のパワハラに対する嘆願書を書いています」「英語教育の改革を求めて教育委員会に嘆願する」「嘆願書の書き方を教えてください」などがあります。
嘆願は「歎願」とも書きますが、常用漢字である「嘆」を用いた「嘆願」と表記することが一般的です。
嘆願という言葉の「嘆」は、悲しんでため息をつくこと、心から切に願うことを表す漢字です。嘆願とは、事情や経緯を説明して熱心に頼むこと、実現が非常に困難な事柄を他人に依頼することです。また、神に願うことを表す時にも用いられています。
「嘆願書」の意味
上記の例文にある「嘆願書」とは、実情を説明して何らかの要請をするために用いられる文書、何らかの改善を訴え要求するための文書のことです。
四字熟語「哀訴嘆願」の意味
嘆願を用いた四字熟語には「哀訴嘆願」があります。哀訴嘆願とは、実現が難しい事柄を、同情をひくように嘆き訴えることを意味します。「哀訴」は、同情をひくように強く嘆き訴えることを表す言葉です。
嘆願の類語
嘆願の類語・類義語としては、事情を述べて相手の同情心に訴えひたすら頼むことを意味する「哀願」、同情をひくように強く嘆き訴えることを意味する「哀訴」、政治家などに実情を訴えて善処してくれるよう要請することを意味する「陳情」などがあります。
懇願の例文
この言葉がよく使われる場面としては、折り入って頼み事をすることを表現したい時などが挙げられます。
懇願という言葉は、上記の例文にあるように、日常会話からビジネスシーンまで幅広く使われています。
嘆願の例文
この言葉がよく使われる場面としては、事情を説明して熱心に頼むことを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある嘆願書と請願書の違いは、嘆願書は実情を説明して何らかのお願いをする文書であることに対して、請願書は権利主張を通すときに出す文書である点にあります。
懇願と嘆願という言葉は、どちらも「心から願うこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、事情を述べずにひたすら願うことを表現したい時は「懇願」を、事情を述べながら熱心に願うことを表現したい時は「嘆願」を使うようにしましょう。