似た意味を持つ「偽善」(読み方:ぎぜん)と「独善」(読み方:どくぜん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「偽善」と「独善」という言葉は、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
偽善と独善の違い
偽善と独善の意味の違い
偽善と独善の違いを分かりやすく言うと、偽善とは善人のように振る舞うこと、独善とは自己中心的な考えという違いです。
偽善と独善の使い方の違い
一つ目の偽善を使った分かりやすい例としては、「寄付を公表したら偽善者だと非難されてしまった」「偽善的なママ友グループにうんざりです」「偽善者の見破り方を教えましょう」「偽善の何が悪いのか説明してください」などがあります。
二つ目の独善を使った分かりやすい例としては、「独善的な正義感を振りかざすな」「彼から独善的なプライドの高さを感じる」「宗教には独善性があると思います」「独善的な言動は老害だろう」「自分は正しいと独善に陥る」などがあります。
偽善と独善の使い分け方
偽善と独善という言葉は、どちらも好ましくない態度を表すマイナスイメージの言葉ですが、意味や使い方には大きな違いがあります。
偽善とは、文字通り「偽りの善」であり、うわべを取り繕って善行を為すことや、見返りを求めて善をする人を意味します。例えば、お年寄りに席を譲る行為を、相手への思いやりからではなく、善人に見られたいという気持ちから行うことを「偽善」と言います。
独善とは、主観的に自分だけが正しいと考えること、ひとりよがりな態度を意味します。「独り善がり」(読み方:ひとりよがり)とも言い、他人の意見に耳を貸すことなく、自己中心的に考えている様子を表します。
つまり、偽善とは善人のように振る舞うことを表し、独善とは自己中心的でひとりよがりな考えを表す言葉です。二つの言葉は似ていますが、意味は大きく異なりますので、きちんと使い分ける必要があります
偽善と独善の英語表記の違い
偽善を英語にすると「hypocrisy」「lip service」となり、例えば上記の「偽善者」を英語にすると「a hypocrite」となります。
一方、独善を英語にすると「self‐complacence」「self-justified」「self-righteousness」となり、例えば上記の「独善的な考えで行動する」を英語にすると「act self‐righteously」となります。
偽善の意味
偽善とは
偽善とは、うわべをいかにも善人らしく見せかけること、そういう行為を意味しています。
表現方法は「偽善者を装う」「偽善者ぶる」「偽善で結構」
「偽善者を装う」「偽善者ぶる」「偽善で結構」などが、偽善を使った一般的な言い回しです。
偽善の使い方
偽善を使った分かりやすい例としては、「英語の先生は偽善者なのかもしれない」「欧米諸国の態度は偽善にほかならない」「八方美人と偽善者とは違います」「偽善者の特徴を教えてください」などがあります。
その他にも、「偽善家とはどんな人ですか」「介護福祉は偽善だけではできないだろう」「うざい偽善者とは関わりたくない」「マスメディアの偽善的態度に辟易します」「あなたの偽善者度を診断します」などがあります。
偽善の「偽」は訓読みで「いつわる」と読み、本物らしく見せてだますことを表します。「善」は行いや性質などが好ましいことを表す漢字です。偽善とは、本心からでなく、うわべだけで善人に見せかけることを意味する言葉です。
偽善と用いたことわざには「やらない善よりやる偽善」があります。やらない善よりやる偽善とは、善い行いを為すことは、その動機に関わらず何もしないよりも優れているということを意味します。「しない善より、する偽善」とも言います。
偽善の対義語
偽善の対義語・反対語としては、わざと悪を装うことを意味する「偽悪」などがあります。
偽善の類語
偽善の類語・類義語としては、本性を隠して大人しそうなふりをすることを意味する「猫かぶり」、あざむくことや騙すことを意味する「欺瞞」、表面は君子らしく見せかけるが実際は君子でない人を意味する「偽君子」などがあります。
独善の意味
独善とは
独善とは、自分だけが正しいと考えること、ひとりよがりを意味しています。
表現方法は「独善に陥る」「独善的な人」
「独善に陥る」「独善的な人」などが、独善を使った一般的な言い回しです。
独善の使い方
独善を使った分かりやすい例としては、「独善的な主観でしか物事をみていない」「独善的にならないように心掛ける」「意見を聞くことで独善に陥ることを防ぐ」「理想主義と独善主義は表裏一体だ」などがあります。
その他にも、「英語の先生は独善的だと感じる」「誰もが少なからず独善性を持っています」「独善的な人とはお付き合いできません」「コメントは短文であるが独善的な内容であった」「独学だけでは独善に陥ってしまう」などがあります。
独善の語源
独善という言葉の語源は、中国戦国時代の儒学者である孟子の言葉に由来します。「窮則独善其身、達則兼善天下」とあり、他人に関与せず自分の身だけを正しく修めることを表しました。転じて、他人の意見を無視して自分だけでよいと思い込んでいることの意味で使用されています。
「独善主義」の意味
独善を用いた日本語には「独善主義」があります。独善主義とは、他人の利害や立場を考えず、自分だけが正しいとする考え方のことです。また、自分だけが正しければよいとする主義も意味します。
独善の対義語
独善の対義語・反対語としては、利害や立場などの異なるものどうしが協力し合うことを意味する「協調」、他人の身の上や心情に心を配ることを意味する「思いやり」などがあります。
独善の類語
独善の類語・類義語としては、何事も自分を中心に考え他人には考えが及ばないことを意味する「自己中心的」、自分の利益だけを追求しようとするさまを意味する「利己的」、他人の事は考えず自分の都合だけを考えることを意味する「自分勝手」などがあります。
偽善の例文
この言葉がよく使われる場面としては、うわべだけを飾って正しいように、あるいは善人のように見せかけることを表現したい時などが挙げられます。
例文2から例文4にある「偽善者」とは、うわべだけいかにも善人らしく見せるように振る舞う人を意味します。「偽善家」とも言います。
独善の例文
この言葉がよく使われる場面としては、他人には関与しないで自分の身だけを正しく修めること、客観性がなく自分だけが正しいと考えることを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2にある「独善家」「独善者」とは、自分の信念や行動などがが絶対的な善と捉え、その他は全て悪や間違ったことだとする人のことです。例文3から例文5の「独善的」とは、ひとりよがりであるさまを表します。
偽善と独善という言葉は、似ていますが意味は全く違います。どちらの言葉を使うか迷った場合、善人のように振る舞うことを表現したい時は「偽善」を、自己中心的でひとりよがりな考えを表現したい時は「独善」を使うようにしましょう。