似た意味を持つ「ルポルタージュ」と「ドキュメンタリー」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「ルポルタージュ」と「ドキュメンタリー」という言葉は、「事実に忠実な記録」という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
ルポルタージュとドキュメンタリーの違い
ルポルタージュとドキュメンタリーの意味の違い
ルポルタージュとドキュメンタリーの違いを分かりやすく言うと、ルポルタージュは制作者の意図が含まれない記録を表現する時に使い、ドキュメンタリーは制作者の意図が含まれる記録を表現する時に使うという違いです。
ルポルタージュとドキュメンタリーの使い方の違い
一つ目のルポルタージュを使った分かりやすい例としては、「ルポルタージュ文学には歴史上の戦争について書かれたものもある」「ルポルタージュ本を読んだ後、知らない世界を知った気持ちになる」などがあります。
二つ目のドキュメンタリーを使った分かりやすい例としては、「ドキュメンタリー映画を動画配信サービスでいくつか見た」「ラジオドキュメンタリーは言葉や伝え方で想像するものが変わる」「ドキュメンタリーで多くの視聴者の心を掴んだ」などがあります。
ルポルタージュとドキュメンタリーの使い分け方
ルポルタージュとドキュメンタリーはどちらも事実に忠実な記録や記録文学を意味する言葉ですが、若干ニュアンスが異なります。
ルポルタージュは、新聞や雑誌などによる現地からの報告や、社会的な事件などを客観的に叙述した文学作品を指す言葉です。時事問題の報道や解説を行うジャーナリズムに分類されます。
一方のドキュメンタリーも事実に基づいた表現物を指し、記事や小説として表現されることもありますが、特に音声や映像記録に対して使われることが多い言葉で、テレビやラジオ番組、映画のジャンルとして確立しています。
つまり、ルポルタージュが客観的かつ書き手の作為を加えないものであるのに対して、ドキュメンタリーは作者によって社会批判などの意図が含まれている場合もあるという違いがあります。
また、ルポルタージュは雑誌や新聞などの文章としての作品や記録に対して使い、ドキュメンタリーは映像や音声などの記録に対して使うものと区別することもあります。
ルポルタージュとドキュメンタリーの英語表記の違い
ルポルタージュを英語にすると「reportage」となり、例えば上記の「ルポルタージュ文学」を英語にすると「reportage literature」となります。
一方、ドキュメンタリーを英語にすると「documentary」となり、例えば上記の「ドキュメンタリー映画」を英語にすると「a documentary film」となります。
ルポルタージュの意味
ルポルタージュとは
ルポルタージュとは、新聞や雑誌などによる現地からの報告を意味しています。
表現方法は「ルポルタージュ本」「ルポルタージュ小説」「ルポルタージュ漫画」
「ルポルタージュ本」「ルポルタージュ小説」「ルポルタージュ漫画」などが、ルポルタージュを使った一般的な言い回しです。
ルポルタージュの使い方
ルポルタージュを使った分かりやすい例としては、「ルポルタージュ記事というものに馴染みがなかった」「ルポルタージュ絵画は何も現地に赴いて描いたものだけではないらしい」「フォトルポルタージュで被災地の当時の状態を知った」などがあります。
その他にも、「ルポルタージュが無ければ海外で苦しい生活を送る人たちのことさえ知らなかった」「ルポルタージュ記事はルポ記事と省略されて呼ばれている」「ルポルタージュを書くルポライターは減少傾向にあるように思う」などがあります。
ルポルタージュは英語で「reportage」と表記されますが、もとはフランス語で「報道」「報告」を意味する言葉です。省略した「ルポ」という呼び方がされることもあります。
1918年以降に社会的な事件を客観的に叙述する文学としてルポルタージュという言葉が使われるようになり、1950年代から記録文学だけでなく芸術にもその作風が根付き、上記例文の「ルポルタージュ絵画」という用語が使われるようになります。
ルポルタージュを書く人はルポライター
ルポルタージュを書く人を「ルポライター」と呼びますが、今日ではノンフィクション作家と同様に扱われることもあります。どちらも事実を伝えることを目的としていますが、ノンフィクションはルポルタージュとは異なり、作家の意図が含まれることがあります。
ルポルタージュの対義語
ルポルタージュの対義語・反対語としては、架空の出来事を想像で描いた物語を意味する「フィクション」、現実とはかけ離れた独特の想像を意味する「空想」があります。
ルポルタージュの類語
ルポルタージュの類語・類義語としては、筋道を立てて述べた文章を意味する「論文」、事実をありのままに記録したものを意味する「実録」、種々雑多な細かい出来事の報告を意味する「雑報」などがあります。
ドキュメンタリーの意味
ドキュメンタリーとは
ドキュメンタリーとは、事実の記録に基づいた表現物を意味しています。
表現方法は「ドキュメンタリー小説」「ドキュメンタリー番組」「ドキュメンタリー映画」
「ドキュメンタリー小説」「ドキュメンタリー番組」「ドキュメンタリー映画」などが、ドキュメンタリーを使った一般的な言い回しです。
ドキュメンタリーの使い方
ドキュメンタリーを使った分かりやすい例としては、「作品制作の舞台裏を題材としたドキュメンタリー映画はSNSで話題になった」「自伝的なセミドキュメンタリーからは没入感も得られた」「ドキュメンタリー映像には陰惨な描写もある」などがあります。
その他にも、「フェイクドキュメンタリーだということに最初は気が付かなかった」「ドキュメンタリー小説はノンフィクション本などと呼ばれることが多い」「先日の野球のドキュメンタリー風映像の視聴回数がうなぎ登りになっていた」などがあります。
ドキュメンタリーは英語で「documentary」と表記され、「文書の」「書類の」「事実を記録した」といった意味を持つ言葉です。日本語でも同じように使われていますが、書面だけでなく、今日では音声や映像に対して使われる方が一般的となりました。
1895年、世界で初めて有料上映された映画である『工場の出口』は、工場から従業員たちが出てくる様子を撮影した記録映像です。後に、問題意識などが作品に投影されることが増え、1920年代からは社会変革を目的として映画が制作されるようにもなります。
上記例文の「舞台裏を題材としたドキュメンタリー映画」などのように、あまり公表されていない題材や内容を扱うことも多いため、秘話や裏側といった意味をドキュメンタリーという言葉に含ませることもあります。
「フェイクドキュメンタリー」の意味
ただし、上記例文の「フェイクドキュメンタリー」は、フィクションをドキュメンタリー映像のように演出する表現方法で、モキュメンタリーとも呼ばれていますが、本来のドキュメンタリーが事実であるのに対して、こちらは虚構の物語です。
ドキュメンタリーの対義語
ドキュメンタリーの対義語・反対語としては、真実ではない物事を真実かのように見せかけた事柄を意味する「虚偽」があります。
ドキュメンタリーの類語
ドキュメンタリーの類語・類義語としては、虚構を用いずに事実に基づく作品を意味する「ノンフィクション」、体験や見聞などを書き綴った文章を意味する「紀行」、一般的には知られていない内輪の話を意味する「裏話」などがあります。
ルポルタージュの例文
この言葉がよく使われる場面としては、新聞や雑誌などによる現地からの報告を意味する時などが挙げられます。
例文1の「フォトルポルタージュ」は、報道写真とも呼ばれるもので、社会情勢や習俗など社会の表情を伝えるために撮影される時事的な写真を指す言葉です。
例文2のようにインタビュー記事にて用いられる「ルポルタージュ形式」は、第三者視点から論評するような形で、会話内容以外のことも書く方法を指す言葉です。
ドキュメンタリーの例文
この言葉がよく使われる場面としては、事実の記録に基づいた表現物を意味する時などが挙げられます。
例文1の「セミドキュメンタリー」とは、実話を題材にしつつ、できるだけ事実に基づいた構成で臨場感などを盛り、そこに創作を加えて劇的な効果を高めた作品を指す言葉です。
ルポルタージュとドキュメンタリーは、どちらも「事実に忠実な記録」を表します。
どちらを使うか迷った場合は、制作者の意図が含まれない記録を表す場合は「ルポルタージュ」を、制作者の意図が含まれる記録を表す場合は「ドキュメンタリー」を使うと覚えておけば間違いありません。