似た意味を持つ「鹵獲」(読み方:ろかく)と「拿捕」(読み方:だほ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「鹵獲」と「拿捕」という言葉は、どちらも敵の兵器などの扱いを表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
鹵獲と拿捕の違い
鹵獲と拿捕の意味の違い
鹵獲と拿捕の違いを分かりやすく言うと、鹵獲とは兵器や軍用品などの所有権を奪うことを表し、拿捕とは船舶などを捕えるが所有権を奪わないことを表すという違いです。
鹵獲と拿捕の使い方の違い
一つ目の鹵獲を使った分かりやすい例としては、「戦時中、軍はたくさんの兵士を鹵獲した」「敵国の鹵獲艦を次の戦いに転用する」「ウクライナの戦車鹵獲で褒賞金が出る」「鹵獲品を一覧にして管理しました」などがあります。
二つ目の拿捕を使った分かりやすい例としては、「国際関係が悪化するなかで日本の漁船が次々と拿捕される」「水産庁による外国漁船の拿捕は何件ありますか」「海上保安庁の巡視船が不法操業の漁船を拿捕する」などがあります。
鹵獲と拿捕の使い分け方
鹵獲と拿捕という言葉は、どちらも敵国の兵器などの扱いを表している軍事用語ですが、意味や使い方には違いがあります。
鹵獲とは、戦いで敵の武器や弾薬あるいは補給物資などを、力ずくで奪い取ることを意味します。戦時国際法は、鹵獲しても良い物資を敵国の国有財産に限定しており、一般市民に対する掠奪行為は戦争犯罪に当たります。上記の例文にある「鹵獲艦」とは、戦争中に敵国から没収した軍艦のことです。
拿捕とは、軍艦や政府の船が、他国の船舶の運航を止めて、その船を自国の支配下に置くことを意味します。法的根拠は、領海なのか、公海なのかによって異なりますが、沿岸国の警察が違法操業をしている漁船を拿捕することは頻繁に行われています。
つまり、鹵獲とは兵器や軍用品を奪い自国のものにすることですが、拿捕とは船舶などを支配下におきますが所有権は他国のままです。鹵獲は所有権を奪いますが、拿捕は所有権を奪う行為ではないことに注意しましょう。
鹵獲と拿捕の英語表記の違い
鹵獲も拿捕も英語にすると「capture」「seizure」となり、例えば上記の「たくさんの兵士を鹵獲した」を英語にすると「captured many soldiers」となります。
鹵獲の意味
鹵獲とは
鹵獲とは、敵の軍用品や兵器などを奪い取ることを意味しています。
鹵獲の読み方
鹵獲の読み方は「ろかく」です。誤って「はかく」「しかく」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「鹵獲する」「鹵獲した」「鹵獲戦車」「鹵獲機」
「鹵獲する」「鹵獲した」「鹵獲戦車」「鹵獲機」などが、鹵獲を使った一般的な言い回しです。
鹵獲の使い方
鹵獲を使った分かりやすい例としては、「戦場で敵兵器の鹵獲は珍しくありません」「鹵獲した米軍兵器をイランに送る」「ガンダム4機を鹵獲するつもりだ」「ガンダムは鹵獲したザクを参考に改良された」などがあります。
その他にも、「多くの戦車や装甲車などを鹵獲した」「鹵獲装備を修理する部品がありません」「外地の鹵獲兵器を自国に持ち帰る」「鹵獲を防ぐために意図的に破壊された」「鹵獲品はみな倉庫に保管してあります」などがあります。
鹵獲の「鹵」は、訓読みで「うばう」と読み、他人の所有するものを無理に取り上げる事を表す漢字です。つかまえて手に入れることを表す「獲」と結び付き、鹵獲とは、戦いで敵の武器や資材をぶんどることを意味します。
「鹵獲品」の意味
鹵獲を用いた日本語には「鹵獲品」があります。鹵獲品とは、「戦利品」とも言い、戦闘の結果、交戦国が戦場または占領地で敵側から押収して自国の所有とする品物を意味します。兵器や軍用書類など、戦争に使用されたか使用されうる軍需品および国有財産であることを要し、私有物は没収できません。
鹵獲の対義語
鹵獲の対義語・反対語としては、借りたものや預かったものを持ち主に返すことを意味する「返却」などがあります。
鹵獲の類語
鹵獲の類語・類義語としては、強制的に取り上げることを意味するを意味する「没収」、権力機関が個人の所有物を強制的に取り上げることを意味する「接収」、奪い取ることや力ずくで取ることを意味する「奪取」などがあります。
拿捕の意味
拿捕とは
拿捕とは、捕らえること、特に、軍艦などが他国の船舶などをその支配下におくことを意味しています。
拿捕は拏捕とも書く
拿捕は「拏捕」とも書きますが、一般的には「拿捕」と表記されています。
拿捕の読み方
拿捕の読み方は「だほ」です。誤って「なほ」「あほ」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「拿捕する」「拿捕される」「拿捕事件」
「拿捕する」「拿捕される」「拿捕事件」などが、拿捕を使った一般的な言い回しです。
拿捕の使い方
拿捕を使った分かりやすい例としては、「ペルシャ湾でタンカーを拿捕する」「日本漁船が韓国側に拿捕される事件が相次いでいる」「発生した拿捕事件の概要を説明します」「韓国軍は北朝鮮の船舶を拿捕した」などがあります。
その他にも、「日本の漁船がロシア国境警備隊に拿捕される」「海域を通過する全ての船舶を拿捕する」「敵の旗艦を拿捕することに成功した」「ウクライナに向かっていた貨物船を拿捕しました」などがあります。
拿捕の「拿」は、訓読みで「とらえる」と読み、逃げようとするものを取り押さえること、押さえて動けないようにすることを表す漢字です。つかまえることを表す「捕」と組み合わさり、拿捕とは、軍艦や軍用航空機等が、外国の船舶を支配下に置き占有することを意味します。
拿捕という言葉は、簡単に言うと、敵国や外国の船を捕らえることです。具体的には、政府船舶や軍艦が商業船舶に対して乗組員を送り込む方法などにより、その権力内に置くことを指します。ちなみに、個人で所有する船を拿捕することは1856年のパリ協定で禁止されています。
拿捕の対義語
拿捕の対義語・反対語としては、束縛や制限されたりしているものを解きはなして自由にすることを意味する「開放」などがあります。
拿捕の類語
拿捕の類語・類義語としては、交戦国の軍艦が敵国または中立違反の船舶を取り押さえることを意味する「捕獲」、捕えて縛ることを意味する「捕縛」、捕まえてぶんどることを意味する「拿獲」、証拠物または没収すべき物を占有あるいは確保することを意味する「押収」などがあります。
鹵獲の例文
この言葉がよく使われる場面としては、戦地などで敵対勢力の装備する兵器や補給物資を奪うことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、鹵獲という言葉は、戦争や戦いの場面で使用されています。例文3の「鹵獲戦車」とは、戦争中に押収した敵の戦車を意味します。
拿捕の例文
この言葉がよく使われる場面としては、敵の船舶などを捕獲し貨物を押収することを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、拿捕という言葉は、主に領海を侵犯するなど海上での事件に関して使用されています。
鹵獲と拿捕という言葉は、どちらも敵の兵器などの扱いを表す軍事用語です。どちらの言葉を使うか迷った場合、兵器や軍用品を奪うことを表現したい時は「鹵獲」を、船舶などを捕えて貨物を差し押さえることを表現したい時は「拿捕」を使うようにしましょう。