【下手】と【苦手】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「下手」(読み方:へた)と「苦手」(読み方:にがて)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「下手」と「苦手」という言葉は、どちらも「不得意なこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




下手と苦手の違い

下手と苦手の意味の違い

下手と苦手の違いを分かりやすく言うと、下手とは好き嫌いに関わらず不得意なことを表し、苦手とは嫌いで不得意なことを表すという違いです。

下手と苦手の使い方の違い

一つ目の下手を使った分かりやすい例としては、「下手な英語で一生懸命に話しました」「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるというからやってみよう」「彼が入れるコーヒーは下手な喫茶店より美味しい」などがあります。

二つ目の苦手を使った分かりやすい例としては、「私の苦手科目は英語です」「中国語の聞き取りが苦手です」「歯医者さんはどうも苦手ですね」「苦手な人との付き合い方に悩んでいます」「あの人は私の苦手なタイプだ」などがあります。

下手と苦手の使い分け方

下手と苦手という言葉は、どちらも得意でないこと、技能が劣っていることを表しますが、意味や使い方には違いがあります。

下手とは、物事に巧みでないことを意味し、技術が劣っていることや、物事がうまくいかないさまを表します。その物事が好きか嫌いかに関わらず使われる言葉で、その手際の悪さや出来栄えの悪さにフォーカスした表現です。

苦手とは、もともと「歯医者さんはどうも苦手だ」のような使い方で、扱いにくく嫌な相手を意味する言葉です。転じて、得意でないことを意味し、「苦手科目」「苦手なタイプ」などと表現します。苦手という言葉には、「嫌い」というニュアンスが含まれています。

つまり、下手とは好きや嫌いなどの気持ちに関わらず使用され、苦手とは嫌いという気持ちが含まれる時に使用される言葉です。二つの言葉は似ていますが、意味が異なるので区別して使用するようにしましょう。

下手と苦手の英語表記の違い

下手を英語にすると「poor」「unskillful」「awkward」となり、例えば上記の「下手な英語で話す」を英語にすると「speak in poor English」となります。

一方、苦手を英語にすると「weak point」「inaptness」となり、例えば上記の「私の苦手科目」を英語にすると「my weak subject」となります。

下手の意味

下手とは

下手とは、物事のやり方が巧みでなく、手際が悪いことを意味しています。

その他にも、「生半可であること、なまじっかなことをして結果が悪くなること」「中途半端なこと、満足できるような程度でないこと」の意味も持っています。

下手の読み方

下手の読み方は「へた」の他にも、「したて」「しもて」などがあります。読み方によって意味が異なるので注意しましょう。

下手の使い方

「英語の発音は下手くそですがライティングには自信があります」「お経の読み方に上手い下手はありますか」「下手の横好きですがピアノを20年続けています」「下手の考え休むに似たりで時間の無駄だ」の文中で使われている下手は、「やり方が巧みでなく手際が悪いこと」の意味で使われています。

一方、「知らないのに下手に手出しはできない」の文中で使われている下手は「生半可であること」の意味で、「下手な女優顔負けの演技力である」の文中で使われている下手は、「満足できるような程度でないこと」の意味で使われています。

下手とは、上記の例文にあるように複数の意味を持つ言葉であり、それぞれの意味で使用されているため、文脈により意味を捉える必要だあります。下手の「下」は訓読みで「した」と読み、身分や程度が低いことを表し、「手」は物事のやり方や腕前を表す漢字です。

ことわざ「下手の横好き」の意味

下手を用いたことわざには「下手の横好き」があります。「下手の横好き」とは、趣味などについて、下手なくせに好きで熱心であることを意味します。他人に対し下手なのにむやみに熱心だと批判的に用いたり、自ら謙遜していう時に使用されています。

下手の対義語

下手の対義語・反対語としては、ある物事をする技術がすぐれていることを意味する「上手」などがあります。

下手の類語

下手の類語・類義語としては、拙いことや下手であるさまを意味する「まずい」、技術などが劣っていて粗悪なことを意味する「拙悪」(読み方:せつあく)、 細工がへたなことや出来栄えが悪いことを意味する「不細工」などがあります。

苦手の意味

苦手とは

苦手とは、扱いにくく嫌な相手、なかなか勝てなくて嫌な相手を意味しています。

その他にも、「得意でないこと、不得手」の意味も持っています。

苦手の使い方

「苦手なあの子に誘われてしまった」「苦手チームとは対戦したくない」「面接で苦手な人との接し方を聞かれた」「職場の苦手な人とはビジネスライクに付き合っています」などの文中で使われている苦手は、「嫌な相手」の意味で使われています。

一方、「娘は英語に苦手意識を持っている」「息子は集団行動が苦手なようだ」「苦手なことを一覧にして自己分析する」「英語の先生の話し方がどうも苦手だ」などの文中で使われている苦手は、「不得手」の意味で使われています。

苦手の「苦」は不快であることや、面白くないことを表す漢字です。その動作をする人を表す「手」と組み合わさり、苦手とは、扱いにくく嫌な相手を意味し、転じて、自分にとって得意でないものの意味も持つ言葉です。

「苦手克服」の意味

苦手を用いた日本語には「苦手克服」があります。苦手克服とは、自分にとって得意でないものを努力して乗り越えることを意味します。「克服」は努力して困難にうちかつことを表す熟語です。「克復」と書いてしまうと違う意味になるので、書き間違いに注意してください。

苦手の対義語

苦手の対義語・反対語としては、最も手なれていて自信があり上手であることを意味する「得意」などがあります。

苦手の類語

苦手の類語・類義語としては、得意でないことや不得手を意味する「不得意」、技術などが劣っていることを意味する「拙劣」(読み方:せつれつ)、物事の処理のへたなことを意味する「不器用」などがあります。

下手の例文

1.たとえ英語が下手くそでも、外国人とコミュニケーションを取ろうとする姿勢が大事です。
2.昨日みた舞台の女優の演技が下手すぎて、全く感情移入できませんでした。
3.この心理テストで、あなたが恋愛上手か恋愛下手かどっちなのかチェックできます。
4.習字を書くのが下手なので、四字熟語の書きぞめが宿題となり暗い気持ちです。
5.他人の家の子育てについて、あれこれ下手に口出しするべきではないだろう。
6.私は料理が下手だ。料理本を見ても、なかなか上手に作ることができない。味も見た目がイマイチで、家族にはいつも不評だ。
7.私はDIYが下手だで、家具の組み立てや、ちょっとした修理など、DIYに挑戦することがあるが、いつも失敗してしまう。
8.私は周りから多趣味だと言われるが、ただの下手の横好きであって、決して器用なわけではないのだ。
9.私は接客が下手だと言われる。確かに緊張するので声が小さくて聞き取りづらく、笑顔もぎこちない。お客さんの意図を汲み取る余裕もない。
10.ピッチャーのプレッシャーはどれほどのものだろう。コントロールがうまく行かなければ、すぐに下手くそとやじが飛んでくるのだから。

この言葉がよく使われる場面としては、物事に巧みでないこと、拙劣であること、なまじっかなことをして結果が悪くなることを表現したい時などが挙げられます。

例文1から例文4にある下手は、「物事に巧みでないこと、拙劣であること」の意味で用いられています。「下手くそ」とは、非常に下手なことを意味します。例文5の下手は、なまじっかなことをして結果が悪くなることの意味で使われています。

苦手の例文

1.自分と価値観が違う人は苦手だという人は多いですが、私は反対に違う考え方をする人が好きです。
2.チーズは独特の匂いがどうも苦手なので、自分からすすんで食べることはありません。
3.以前はことわざを覚えるのが苦手でしたが、由来を意識するようになってから好きになりました。
4.なぜ日本人は英語に対して苦手意識を持っている人が多いのでしょうか。
5.苦手克服のためには、まず苦手意識を取り除くことから始めましょう。
6.私があまりにしつこくパクチーを料理に使うので、以前はパクチーが大の苦手だった息子が今や好物になるほどよく食べる。
7.私は、数字が苦手だ。高校の時も赤点を出してしまったこともある。そのため、経理などの数字を扱う仕事は苦手で、避けようとしてしまう。
8.私の上司は、とても厳しい人だ。いつも細かいことを指摘したり、怒鳴ったりしている。私は、そういう態度が苦手で、つい萎縮してしまう。
9.私は、パクチーが苦手だ。パクチー独特の匂いが苦手で食べると気持ち悪くなってしまうが、妻は平気どころか大好きだというので驚いてしまう。
10.彼女は大きい音が苦手で、例えば、警報機の音や、ドリル音などが苦手で、聞くと気持ちが不安定になってしまうそうだ。

この言葉がよく使われる場面としては、 自分と気が合わず扱いにくい相手、自分にとって得意でないものを表現したい時などが挙げられます。

例文1にある苦手は、「自分と気が合わず扱いにくい相手」の意味で用いられています。例文2から例文5の苦手は、「得意でないもの」の意味で用いられています。「苦手意識」とは、どうにも苦手だと感じてしまうことです。 
  
下手と苦手という言葉は、どちらも「不得意なこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、好き嫌いに関わらず不得意なことを表現したい時は「下手」を、嫌いで不得意なことを表現したい時は「苦手」を使うようにしましょう。

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