似た意味を持つ「脆弱」(読み方:ぜいじゃく)と「虚弱」(読み方:きょじゃく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「脆弱」と「虚弱」という言葉は、どちらも「弱いさま」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
脆弱と虚弱の違い
脆弱と虚弱の意味の違い
脆弱と虚弱の違いを分かりやすく言うと、脆弱とは強そうに見えても実は弱いさまを表し、虚弱とはいかにも弱いさまを表すという違いです。
脆弱と虚弱の使い方の違い
一つ目の脆弱を使った分かりやすい例としては、「システムに危険度の高い脆弱性が見つかった」「都市基盤の脆弱さを露呈した出来事であった」「日本の英語教育における脆弱性を明らかにする」などがあります。
二つ目の虚弱を使った分かりやすい例としては、「弟は生まれつき虚弱体質です」「虚弱体質の子供に漢方治療を行う」「身体虚弱児の教育環境を整える」「虚弱指数でフレイルの程度を把握する」などがあります。
脆弱と虚弱の使い分け方
脆弱と虚弱という言葉は、どちらも力がなく弱いさまを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
脆弱とは、文字通り「もろくて弱いこと」を意味し、強そうに見えても実際には外部の力に対してもちこたえることができないというニュアンスがあります。「脆弱性」の言い回しで、コンピューターネットワークにおける安全上の欠陥を指すことが多い言葉です。
虚弱とは、力や勢いが弱いことを意味し、いかにも弱いニュアンスがあります。「虚弱体質」「身体虚弱」のような使い方で、特に体が弱いさまを表現することが多い言葉です。病気にかかりやすい体の弱い児童や生徒を「虚弱児」と言います。
つまり、脆弱とは強そうに見えても実際は弱いことであり、虚弱とは実に弱そうであることを意味します。二つの言葉は似ていますが、ニュアンスは異なるので区別して使うようにしましょう。
脆弱と虚弱の英語表記の違い
脆弱を英語にすると「vulnerable」「fragile」となり、例えば上記の「脆弱性」を英語にすると「vulnerability」となります。一方、虚弱を英語にすると「delicate」「weak」「frailty」となり、例えば上記の「虚弱体質」を英語にすると「a weak constitution」となります。
脆弱の意味
脆弱とは
脆弱とは、もろくて弱いこと、また、そのさまを意味しています。
脆弱の読み方
脆弱の読み方は「ぜいじゃく」です。誤って「きじゃく」「せいじゃく」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「脆弱性」「脆弱な」
「脆弱性」「脆弱な」などが、脆弱を使った一般的な言い回しです。
脆弱の使い方
脆弱を使った分かりやすい例としては、「首都圏の交通機関は雪に脆弱である」「人間には普遍的な脆弱性があります」「脆弱性骨折の原因は何ですか」「脆弱な皮膚の患者に看護師がスキンケアを行う」などがあります。
その他にも、「脆弱な状態にあるIoT機器を調べる」「高水準の脆弱性診断サービスを提供します」「コンピュータの脆弱性を網羅的に検出する」「脆弱なパスワードを設定してはいけません」などがあります。
脆弱の「脆」は訓読みで「もろい」「よわい」と読み、壊れやすいことや抵抗力が乏しいことを表す漢字です。物事に耐える力が乏しいことを表す「弱」と組み合わさり、脆弱とは、もろくて弱いこと、もろくて弱いさまを意味します。
「脆弱国家」の意味
脆弱を用いた日本語には、「脆弱国家」(読み方:ぜいじゃくこっか)があります。脆弱国家とは、国民の安全や生計を保証するといった国家の基本的役割を果たすことが困難な国を意味します。アメリカの平和基金会は、世界各国の安定性を数値化して、毎年「脆弱国家ランキング」を公表しています。
脆弱の対義語
脆弱の対義語・反対語としては、しなやかで強いことを意味する「強靭」、きわめて力が強く頑丈なさまを意味する「屈強」などがあります。
脆弱の類語
脆弱の類語・類義語としては、質がやわらかく弱いことを意味する「軟弱」、意志や体力などが弱いことを意味する「薄弱」、おとっていて弱いことを意味する「劣弱」、繊細で弱々しく感じられるさまを意味する「華奢」などがあります。
虚弱の意味
虚弱とは
虚弱とは、力や勢いが弱いこと、特に、からだが弱いことを意味しています。
虚弱の読み方
虚弱の読み方は「きょじゃく」です。誤って「こじゃく」「きょにゃく」などと読まないようにしましょう。
虚弱の使い方
虚弱を使った分かりやすい例としては、「虚弱体質の原因ははっきりしていません」「虚弱体質は食事で改善しますか」「英語の先生は虚弱体質のようだ」「虚弱体質なので力仕事は苦手です」「虚弱体質であるという診断書が欲しい」などがあります。
その他にも、「娘は身体虚弱特別支援学級に通っています」「身体虚弱の児童を対象として教育を行う」「身体虚弱の状態が継続している」「高齢期の虚弱を防ぐことが健康で長生きの秘訣です」「心理的フレイルはメンタル面の虚弱を指します」などがあります。
虚弱の「虚」は空っぽで何もないことや気力や精気が足りないこと、「弱」は力が劣っているおとや心身が丈夫でないことを表す漢字です。虚弱とは、力や勢いが弱いことを意味し、特に体が弱く病気になりやすいことを表現する言葉です。
「虚弱体質」の意味
虚弱を用いた日本語には、「虚弱体質」(読み方:きょじゃくたいしつ)があります。虚弱体質とは、身体が弱い体質のことで、特定の基礎疾患がないにも関わらず、体になんらかの不調が常にある状態を指します。すぐに風邪をひく、軽い運動でも疲れてしまう、などの特徴があります。
虚弱の対義語
虚弱の対義語・反対語としては、からだが丈夫で元気なことを意味する「強壮」、からだが強くて丈夫であるさまを意味する「強健」などがあります。
虚弱の類語
虚弱の類語・類義語としては、いかにも弱々しいさまを意味する「ひよわ」、弱々しいことを意味する「か弱い」、からだが弱く病気がちであることを意味する「病弱」、弱いからだを意味する「弱体」などがあります。
脆弱の例文と使い方
この言葉がよく使われる場面としては、身体や組織あるいは器物などがもろくて弱いことを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2にある「脆弱性」とは、アプリケーションやOSあるいはネットワークにおいて、管理者の意図しない動作につながる可能性のあるセキュリティ上の弱点を指します。この脆弱性は「セキュリティホール」と呼ばれることもあります。
虚弱の例文と使い方
この言葉がよく使われる場面としては、ひよわなこと、体が弱く病気になりやすいことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、虚弱の慣用的な言い回しには「虚弱体質」「虚弱児」「身体虚弱」などがあります。例文4にある虚弱と病弱の違いは、虚弱は病気ではないが身体が不調な状態が続くことであり、病弱は継続的あるいは断続的に病気のために弱っている状態をいう点にあります。
脆弱と虚弱という言葉は、どちらも「弱さ」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、強そうに見えても実際は弱いさまを表現したい時は「脆弱」を、いかにも弱いさまを表現したい時は「虚弱」を使うようにしましょう。