似た意味を持つ「予兆」(読み方:よちょう)と「前兆」(読み方:ぜんちょう)と「兆候」(読み方:ちょうこう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「予兆」と「前兆」と「兆候」という言葉は、何かが起こることを予感させるような現象という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
予兆と前兆と兆候の違い
予兆と前兆と兆候の意味の違い
予兆と前兆と兆候の違いを分かりやすく言うと、予兆は予期される現象が必ずしも起きない時に使い、前兆は予期される現象が必ず起きる時に使い、兆候はある現象の一部がもう起きている時に使うという違いです。
予兆と前兆と兆候の使い方の違い
予兆という言葉は、「地震の予兆を感じ取る」「変化の予兆を感じる動物の異常行動が観測される」などの使い方で、何かが起ころうとする前触れを意味します。
前兆という言葉は、「土砂災害の前兆を見た」「前兆を知っているだけでも最悪の事態を防ぐことが出来るだろう」などの使い方で、何かが起きる前に現れる印を意味します。
兆候という言葉は、「企業発展の兆候がデータに現れる」「社会情勢回復の兆候が見られる」などの使い方で、物事が起こる前触れを意味します。
予兆と前兆と兆候の使い分け方
予兆と前兆は、何かが起こる前にそれが発生すると分かる別の現象を指す言葉で、この二つの言葉に大きな違いはありません。
しかし、予兆は「故障の予兆を検知して対応する」など必ずしも発生が予想される現象が起きるわけではない場合に、前兆は「雷が光った後にはすぐ雷の音がする」など必ず予想される現象が起きる場合に使われることがあります。
一方、兆候は「売り上げが落ちていることで経営悪化の兆候を感じた」など、すでに起きている出来事の一部がある現象として現れかけていることを指す言葉です。
また、「関係性の回復に良い兆候が見られる」など、具体的な数値や現象があるわけではないものの、何となく感じ取ることができるものに対しても使うことができます。
これらが、予兆、前兆、兆候の明確な違いです。
予兆の意味
予兆とは
予兆とは、物事が起ころうとする前触れを意味しています。
表現方法は「予兆を感じる」「予兆がある」「予兆する」
「予兆を感じる」「予兆がある」「予兆する」などが、予兆を使った一般的な言い回しです。
予兆を使った言葉として、「予兆保全」「予兆モデル」があります。
「予兆保全」の意味
一つ目の「予兆保全」とは、工場などの機械や設備の不具合もしくは故障をあらかじめ予知して、それらを監視し、最適な状態に管理することをいう言葉で、予知保全とも言われます。
似た言葉に「予防保全」がありますが、過去のデータから壊れる可能性がある使用回数や使用時間を定めて、それを満たす前に部品交換などを行うことで故障を未然に防ぐ方法を指すため、壊れそうな兆候を検知した時に対応する予兆保全とは異なります。
「予兆モデル」の意味
二つ目の「予兆モデル」とは、結果となる数値とその要因となる数値を明らかにして、その結果となる行動を取りそうな人を見つけ出す方法を指す言葉です。
例えば、携帯電話使用時間などから携帯電話を解約しそうな人を見つけ出し、より得になるような情報や提案をダイレクトメールなどで送ることで解約を防ぐといった事例が挙げられます。
予兆の対義語
予兆の対義語・反対語としては、予期していないことが急に起こる様子を意味する「突然」があります。
予兆の類語
予兆の類語・類義語としては、外面に現れた印を意味する「表徴」、ある事物の特徴を表す「徴表」、何かが起こるのを予想させるような出来事を意味する「前表」(読み方:ぜんぴょう)、吉兆の前触れを意味する「縁起」などがあります。
前兆の意味
前兆とは
前兆とは、何かが起こる前に現れる印を意味しています。
表現方法は「前兆がある」「前兆を伴う」「前兆のない」
「前兆がある」「前兆を伴う」「前兆のない」などが、前兆を使った一般的な言い回しです。
前兆を使った言葉として、「前兆すべり」「前兆事案」があります。
「前兆滑り」の意味
一つ目の「前兆滑り」とは、大地震が起こる前に発生すると考えられる、震源域付近の断層面の緩やかなすべり現象を指す言葉で、プレスリップとも呼ばれています。
2011年に起きた東北地方太平洋沖地震の前にゆっくりとした滑りがいくつか観測されましたが、それらが前兆すべりであったのかに関しては明確になっていません。
「前兆事案」の意味
二つ目の「前兆事案」とは、子どもや女性に対する性犯罪や誘拐事件の前兆と思われる事案を指す言葉です。
例えば、道案内を頼むために声を掛ける行為や、ストーカー行為、のぞきや盗撮などが挙げられます。犯罪を未然に防ぐために、これらの前兆事案を行なった人を特定し、検挙や警告などの措置を取っています。
前兆の類語
前兆の類語・類義語としては、前もって取り決めた方法で物事を知らせることを意味する「合図」、団体などが現在のようになる前の形を意味する「前身」、物事を明確には示さず手がかりを与えてそれとなく知らせることを意味する「暗示」などがあります。
兆候の意味
兆候とは
兆候とは、物事の起こる前触れを意味しています。
兆候の読み方
兆候は「ちょうこう」という読み方をしますが、同じ読み方で「徴候」と表記されることもあります。意味はほとんど同じですが、兆候は何かが起きる前に発生する事象に使い、徴候はすでに何かが起きている時に使います。
ただし、今日では「兆候」という表記に統一されていることから、兆候に徴候の意味を含むようになり、同じ使い方がされることとなりました。
表現方法は「良い兆候」「兆候が現れる」「兆候が見られる」
「良い兆候」「兆候が現れる」「兆候が見られる」などが、兆候を使った一般的な言い回しです。
兆候を使った言葉として、「兆候監視」「生命兆候」があります。
「兆候監視」の意味
一つ目の「兆候監視」とは、生産設備やシステムなどにおいて、問題が生じる兆候を検知してトラブルを防ぐための技術の総称です。人間がそれを行う場合には「兆候管理」と呼ばれます。
「生命兆候」の意味
二つ目の「生命兆候」とは、人間が生きていることを示す脈拍や血圧、呼吸、体温の4つをまとめた言い方で、バイタルサインとも言われています。
医療従事者でなくとも体温計や血圧計で基本の4つの兆候を知ることができますが、これ以外にも、食欲や睡眠、精神状態、意識レベルなども生命兆候に含まれます。
兆候の類語
兆候の類語・類義語としては、物事が起こりそうな様子を意味する「兆し」、はっきりとは見えないものの漠然と感じられる様子を意味する「気配」、事を始める時に当たって何かを感じさせる物事を意味する「幸先」(読み方:さいさき)などがあります。
予兆の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事が起ころうとする前触れを意味する時などが挙げられます。
予兆という言葉は、前兆に置き換えて使うことができますが、例文1や例文3のように本当に起きるかどうかは定かではないものに対して使われている場合は、前兆に置き換えて使うことは好ましくありません。
前兆の例文
この言葉がよく使われる場面としては、何かが起こる前に現れるサインを意味する時などが挙げられます。
例文3の「前兆電話」とは、振り込め詐欺、警察官や銀行員などを騙った特殊詐欺などの不審な電話を指す言葉です。
兆候の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事の起こる前触れのうち、すでに起きている現象の一部を意味する時などが挙げられます。
例文2と例文3の兆候は、すでに予想される結果の一部が現れている場合に使うため、予兆や前兆に置き換えて使うことはできません。
予兆と前兆と兆候どれを使うか迷った場合は、予期される現象が必ずしも起きない場合は「予兆」を、予期される現象が必ず起きる場合は「前兆」を、ある現象の一部がもう起きている場合は「兆候」を使うと覚えておけば間違いありません。