似た意味を持つ「上部」(読み方:じょうぶ)と「上辺」(読み方:うわべ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「上部」と「上辺」という言葉は、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
上部と上辺の違い
上部と上辺の意味の違い
上部と上辺の違いを分かりやすく言うと、上部とは事物の上の部分を表し、上辺とは物の表面や、見せかけの様子も表すという違いです。
上部と上辺の使い方の違い
一つ目の上部を使った分かりやすい例としては、「のりしろに上部余白2センチを設定する」「画面の上部にアイコンが表示される」「上部採光デザインのドアを設置した」「上部団体から組合支援のためのカンパ要請が多い」などがあります。
二つ目の上辺を使った分かりやすい例としては、「箱の上辺の汚れを払い落す」「トレイの上辺には美しい細工が施されていた」「上辺だけの友情は長続きしないよ」「上辺だけの付き合いに疲れた」などがあります。
上部と上辺の使い分け方
上部と上辺という言葉は、字面が似ており、どちらも物や事柄の一部分を表すことから、混同して使われる傾向がありますが、意味は異なります。上部とは上の部分や上の方を意味し、上辺とは物の表面や、内実とは違った見せかけのようすを意味します。
上記の例文の「箱の上辺」とは、箱の表面である外側をなす面を表します。立方体であれば、六つの面の目に見える表面です。これが「箱の上部」になると、箱の上の部分、高い位置にある部分を表します。このように、上辺と上部という言葉は物の一部分を表しますが、表す場所は異なります。
さらに、上辺には内実とは違った見かけ上の様子や事情の意味も持っています。上記の例文の「上辺だけの友情」や「上辺だけの付き合い」はこの意味で使われています。上部は事物の部分を表し、上辺は事物の部分のほかに、様子や事情も表します。これらが、上部と上辺という言葉の違いになります。
上部と上辺の英語表記の違い
上部を英語にすると「top」「upper part」となり、例えば上記の「上部余白2センチ」を英語にすると「top margin 2 cm」となります。
一方、上辺を英語にすると「surface」「exterior」「outward appearance」となり、例えば上記の「うわべだけの友情」を英語にすると「surface friendliness」となります。
上部の意味
上部とは
上部とは、上の部分や上の方を意味しています。
上部の使い方
上部を使った分かりやすい例としては、「ホーム画面上部のステータスバーを設定する」「上部採光式のロールスクリーンにした」「食後に胃の上部が張る」「上部消化管内視鏡検査を受ける」などがあります。
その他にも、「彼は社団法人の上部組織のメンバーです」「3年前から上部団体に加入している」「もみじの木の上部が色づき始めている」「スマホ画面の上部に亀裂が入っている」「断熱層の上部に通気層を設ける」などがあります。
「上部組織」「上部団体」の意味
上部という言葉は、文字通りに物の上の方、上の部分を表します。また、ある組織の内の上の部分を占める階層や、その人を表すこともあり、上記の例文の「上部組織」「上部団体」はこの意味で使われています。
「上部構造」の意味
上部という言葉を用いた史的唯物論の基本概念に「上部構造」があります。社会の経済的土台の上に形成される政治や法律、芸術などのイデオロギーと、それに対応する制度や組織のことです。この上部構造の土台となる生産関係の総体を「下部構造」と言います。
上部の対義語
上部の対義語・反対語としては、下の部分や下の方を意味する「下部」、 位置や方向が下のほうを意味する「下手」、物のいちばん下を意味する「底」、入り口や表から中のほうへ深く入った所を意味する「奥」などがあります。
上部の類語
上部の類語・類義語としては、位置や方向が上のほうを意味する「上手」、上のほうを意味する「上方」、位置の高い所を意味する「上」(読み方:かみ)、物の上のほうになった側を意味する「上側」などがあります。
上辺の意味
上辺とは
上辺とは、物の表面、おもて、外面を意味しています。
その他にも、内実とは違った見せかけのようすや事情、見かけ、外観の意味も持っています。
上辺の使い方
「その上辺を見ただけで質の良さが分かった」「テーブルの上辺が汚れている」「つるつるとした布地の上辺を撫でる」「窓ガラスの上辺が結露している」などの文中で使われている上辺は、「物の表面」の意味で使われています。
一方、「ご近所とは上辺だけの付き合いです」「所詮、上辺だけの付合なんです」「上辺だけの優しさに惑わされた」「上辺だけでも仲良くしておこう」「上辺だけを撫でるような恋愛は卒業だ」などの文中で使われている上辺は、「見せかけのようすや事情」の意味で使われています。
上辺の読み方
上辺は「うわべ」と読みます。「かみべ」とも読むことができますが、この場合は川の上流を意味する言葉になります。また、図形に関する言葉として「じょうへん」と読まれ、図形の上の辺のことを意味します。上辺という言葉は、意味によって読み方が異なるので注意しましょう。
上辺という言葉は、上記の例文にあるように二つの意味があります。物の表面という外に現れている部分を表しているのか、内実の伴わない表面的な態度を表しているのか文脈により捉える必要があります。
「上辺の付き合い」の意味
上記の例文にある「上辺の付き合い」とは、本心では付き合いたいとは思っていないが、体裁のために付き合いを保っている、といった様子を表した言い回しです。表向きは仲が良いが内心では無関心であったり反感を覚えていたりするさまを表します。
表現方法は「上辺だけ取り繕う」「上辺だけの友達」「上辺だけの関係」
「上辺の付き合い」のほかには「上辺だけ取り繕う」「上辺だけの友達」「上辺だけの関係」などが、上辺を使った一般的な言い回しです。
上辺の対義語
上辺の対義語・反対語としては、物事の内容や中に入っているものを意味する「中身」、実際に事物に備わっている内容や性質を意味する「実質」、中に入っているものや物事を成り立たせている中身を意味する「内容」などがあります。
上辺の類語
上辺の類語・類義語としては、外見やうわっつらを意味する「上面」、うわっつらやうわべだけを見て判断し物事の本質に至らないことを意味する「皮相」、物事の外から見える部分や表立つところを意味する「表面」などがあります。
上部の例文
この言葉がよく使われる場面としては、上の方や上の部分を表現したい時などが挙げられます。
例文3にある建築用語の「上部構造」とは地上部分にある建物の構造のことであり、地中部の構造を「下部構造」と言います。例文4にある「上部組織」とは、関連組織を束ねる組織のことです。
例文5にあるように、上の方を意味する語句としての上部は「じょうぶ」と読みますが、苗字としての上部は「うわべ」と読まれることがあります。
上辺の例文
この言葉がよく使われる場面としては、外観や表面、内実の伴わない表面的な態度を表現したい時などが挙げられます。
例文1で使われている上辺は、物の表面を意味します。例文3にある「上辺だけの友達」とは、体裁のために付き合いを保っている友達のことを意味します。例文5にある「上辺」はじょうへんと読み、図形の上にある辺を意味します。台形の上辺は、厳密には「上底」と言います。
上部と上辺という言葉は、どちらも物や事柄の一部分を表す言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、事物の上の部分を表現したい時は「上部」を、物の表面や見せかけの様子を表現したい時は「上辺」を使うようにしましょう。