似た意味を持つ「規制」(読み方:きせい)と「制限」(読み方:せいげん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「規制」と「制限」という言葉は、どちらも一定の範囲内におさえることを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
規制と制限の違い
規制と制限の意味の違い
規制と制限の違いを分かりやすく言うと、規制とは規則によって制限すること、制限とは物事に範囲を決めて超えないようにすることという違いです。
規制と制限の使い方の違い
一つ目の規制を使った分かりやすい例としては、「財産権に対し法的規制を加える」「事件現場で警察官が規制線を張る」「輸入規制品目を確認する」「原子力組織委員会は行政機関の一つです」「新型コロナウイルス対策の全規制を撤廃する」などがあります。
二つ目の制限を使った分かりやすい例としては、「公道では制限速度を守って走りましょう」「制限酵素を研究しています」「制限外積載許可申請書を提出する」「感染症対策のため外出制限しています」「糖質制限ダイエット中です」などがあります。
規制と制限の使い分け方
規制と制限という言葉は、どちらも物事をある範囲内にとどめることを意味し、似た表現をする言葉ですが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
規制とは、規則に従って物事を制限することを意味します。「交通規制」とは、道路交通法などの法律や交通ルールに従って、通行の禁止や制限、または通行方法の指定を行うことを指します。また、「輸入規制」とは貿易に関する法律などにより、輸入を禁止したり数量に制限を設けることです。
制限とは、物事にある範囲を設けて、その範囲や限度から出ないようにおさえることを意味します。「糖質制限」とは、食事から摂取する糖質量をある一定程度に減らすことです。また、「制限速度」とは、前述の交通規制と同様に、道路交通法や交通ルールに従った速度制限のことです。
つまり、規制とは規則に従って制限することであり、制限とは規則のあるなしに関わらず、範囲や限度から出ないようにすることです。規制の「規」は規則のことであると覚えておくと良いでしょう。
規制と制限の英語表記の違い
規制を英語にすると「regulation」「control」となり、例えば上記の「法的規制を加える」を英語にすると「impose legal controls」となります。一方、制限を英語にすると「limitation」「restriction」となり、例えば上記の「制限速度」を英語にすると「speed limit」となります。
規制の意味
規制とは
規制とは、従うべき決まりを意味しています。
その他にも、規則に従って物事を制限することの意味も持っています。
表現方法は「規制をかける」「規制がかかる」「規制を敷く」
「規制をかける」「規制がかかる」「規制を敷く」などが、規制を使った一般的な言い回しです。
規制の使い方
「規制緩和により電力は自由化されました」「規制標識の一覧表を作成する」「原子力規制庁が各原発の評定を公表した」「規制改革推進会議の初会合が開催された」などの文中で使われている規制は、「従うべき決まり」の意味で使われています。
一方、「厳しい校則で生徒の品行を規制する」「交通規制に関する情報をお伝えします」「規制線を超えた侵入者は処罰されます」「通行規制解除のお知らせです」などの文中で使われている規制は、「規則に従って物事を制限すること」の意味で使われています。
規制という言葉の「規」とは、行動や判断のよりどころとなる基準を表します。規制とは、物事のルールそのものを意味する場合と、規則によって行動を制限することを意味する場合があります。
「規制緩和」の意味
上記の例文にある「規制緩和」とは、主に経済活動を活発化するために、政府や自治体が認可や届け出などの規制を緩めることを意味します。これまでに行われた規制緩和としては、企業の農業参入や、金融の自由化、タクシー業界の新規参入や台数増加などがあります。
「ストーカー規制法」の意味
規制という言葉を用いた日本語には「ストーカー規制法」があります。つきまとい等を繰り返すことをストーカー行為と定義し、そのような行為等を規制、処罰し被害者を援助するための法律です。2000年11月に施行されました。
規制の対義語
規制の対義語・反対語としては、自分の意のままに振る舞うことができることを意味する「自由」、干渉しないでしたいようにさせることを意味する「放任」、そのままにして放っておくことを意味する「放置」などがあります。
規制の類語
規制の類語・類義語としては、おさえとどめることを意味する「抑制」、物事を一定の形に定めることを意味する「規定」、多くの物事を一つにまとめておさめることを意味する「統制」、必要に応じてある事柄を強制的に管理し制限することを意味する「管制」などがあります。
制限の意味
制限とは
制限とは、物事にある限界を設けることを意味しています。
表現方法は「制限する」「制限をかける」「制限中」
「制限する」「制限をかける」「制限中」などが、制限を使った一般的な言い回しです。
制限の使い方
制限を使った分かりやすい例としては、「海外の高速道路の速度制限を調べる」「外国からの入国制限解除が決まった」「値幅制限の上限まで株価が上昇する」「スラング英語の使用を制限する」「未成年者は制限行為能力者です」などがあります。
その他にも、「子どもがYouTubeを見る時は制限付きモードを設定する」「下部が制限値幅の加減まで下がった」「制限酵素で切断したDNA断片です」「制限行為能力者を代理して取引を行う」「関係代名詞の制限用法と非制限用法を確認する」などがあります。
制限という言葉の「制」とは、おさえつけることや従わせることを表し、「限」とは範囲を定めることを表します。制限とは、許容できる範囲や限度を決め、それを超えることを許さないことを意味する言葉です。
「制限付きモード」の意味
上記の例文にある「制限付きモード」とは、動画配信サイトのYouTubeにある機能の一つです。制限付きモードが有効になっていると、成人向けの可能性があるコンテンツを含む動画は表示されなくなります。
「制限酵素」の意味
制限という言葉を用いた日本語には「制限酵素」があります。制限酵素とは、DNA塩基配列を特異的に切断する酵素のことであり、遺伝子工学の分野で広く利用されています。「制限エンドヌクレアーゼ」とも言います。
制限の対義語
制限の対義語・反対語としては、制限がないことや制限しないことを意味する「無制限」、制限されているものを解きはなして自由にすることを意味する「解放」などがあります。
制限の類語
制限の類語・類義語としては、条件や枠を設けて自由な活動や物事の成立を押さえつけることを意味する「制約」、そこまでと限られている程度を意味する「限度」、ある一定の限られた広がりや区域を意味する「範囲」、制限を加えて行動の自由を奪うことを意味する「束縛」などがあります。
規制の例文
この言葉がよく使われる場面としては、規定や規則によって行動を制限することを表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「自主規制」とは、社会的影響力の大きい個人や団体などが、他からの批判や公権力の介入を避けるため、自主的にその活動に制約を加えることを意味します。対する言葉には「法規制」があります。
制限の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある限度や範囲から出ないようにおさえることを表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「アクセス制限中」とは、不正アクセスを防ぐために接続のブロックを行っていることを表します。同じIPアドレスから大量に接続が発生した場合や、パスワードを連続して間違えた場合などにアクセスが制限されることがあります。
例文5にある「所得制限」とは、ある一定以上の所得がある人をサービスの対象から外すために設定される基準、あるいは所得によって受給できるサービスが制限されることを指します。
規制と制限という言葉は、どちらも物事を一定の範囲内におさえることを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、規則によって制限することを表現したい時は「規制」を、ある限度や範囲から出ないようにすることを表現したい時は「制限」を使うようにしましょう。