似た意味を持つ「時下」(読み方:じか)と「目下」(読み方:もっか)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「時下」と「目下」という言葉は、どちらも「今日このごろ」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
時下と目下の違い
時下と目下の意味の違い
時下と目下の違いを分かりやすく言うと、時下とは挨拶文で使われる言葉、目下とは挨拶文で使われない言葉という違いです。
時下と目下の使い方の違い
一つ目の時下を使った分かりやすい例としては、「時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます」「時下ますますご健勝のこととお慶び申し上げます」「時下ますますご清栄の段、お喜び申し上げます」などがあります。
二つ目の目下を使った分かりやすい例としては、「目下の目標は英語検定の取得です」「そのメカニズムは目下のところ不明です」「各地域で地震対策が目下の急務となっています」「素晴らしい景色が目下に広がる」などがあります。
時下と目下の使い分け方
時下と目下という言葉は、どちらも「今日このごろ、現在」を意味しますが、使い方には違いがあります。
時下とは、「時下ますます~」の形で、手紙や案内状またはビジネスメールの冒頭に置かれる言葉です。「立春の候」などの季節よって変わる時候の挨拶の代わりになります。時下は「今日このごろ」を意味しますが、主に挨拶文で使われ、話し言葉として使われることはありません。
目下とは、「当面するこの時、現在」を意味し、前述の時下とほぼ同じ意味を持つ言葉です。ただし、会話のなかや文章中に使われる言葉であり、時下のように挨拶文のなかで使われることはありません。また、「目下に広がる」のような使い方で、「目の前、すぐ近く」の意味も持つ言葉です。
時下と目下の英語表記の違い
時下も目下も英語にすると「nowadays」「present」「now」となります。ただし、手紙の挨拶文で使われる時下は特に英語に訳されることはなく、例えば上記の「時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます」を英語にすると「I hope this email finds you well」となります。
時下の意味
時下とは
時下とは、このごろ、当節、多く手紙の冒頭のあいさつに用いるを意味しています。
時下の使い方
時下を使った分かりやすい例としては、「拝啓 時下ますますご清祥のことと存じます」「時下益々ご健勝のこととお慶び申し上げます」「時下ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます」「などがあります。
その他にも、「時下いよいよご清祥の由拝察いたします」「時下いよいよ御清祥の段、お慶び申し上げます」「時下益々ご隆昌のこととお慶び申し上げます」「時候の挨拶を省いて時下と書きました」などがあります。
時下は、もともと中国から伝わって日本語として定着した漢語の一つです。時下とは、「このごろ」や「この時節」を意味する言葉であり、「時下ますます」「時下益々」「時下いよいよ」の言い回しで、改まった手紙やビジネスメールなどの書き出しに置かれる言葉です。
正式な手紙や文書には、「新春の候」「新緑の候」「秋分の候」「師走の候」などの時候の挨拶を季節に合わせて使い分けますが、この時候の挨拶の代わりに一年中使える便利な言葉が「時下」になります。「拝啓」や「謹啓」などの頭語のあとに続くことが多くあります。
時下は挨拶文の冒頭で使用する言葉なので、「敬具」「草々」などのような結びの言葉としては使用できないので、気をつけてください。
時下の対義語
時下の対義語・反対語としては、今からのちや以後を意味する「今後」、現在より以前の時や過ぎ去った時を意味する「過去」、過ぎ去った時や以前を意味する「往時」などがあります。
時下の類語
時下の類語・類義語としては、現在や今を意味する「現下」、今日このごろを意味する「今日日」、このごろや最近を意味する「近頃」、現在を意味する「今来」、このごろや近ごろを意味する「頃者」などがあります。
目下の意味
目下とは
目下とは、目の前、すぐ近く、眼前を意味しています。
その他にも、「ただいま、さしあたり、現在」の意味も持っています。
目下の読み方
目下の読み方は「もっか」です。「めした」と読むことも出来ますが、その場合は「地位や年齢などが自分より下であること」を意味する別の言葉になります。
目下の使い方
「田園が目下に広がる眺めの良いホテルです」「災難が目下に迫ってくるのを恐れている」「これは私の目下で起こったことです」などの文中で使われている目下は、「目の前、すぐ近く」の意味で使われています。
一方、「市場は目下のところインフレが懸念されています」「目下の目標は体重3キロ減です」「英語力の向上が目下の課題です」「目下、時間の使い方が課題になっています」「新店舗立ち上げを目下検討中です」などの文中で使われている目下は、「ただいま、現在」の意味で使われています。
目下という言葉は、上記の例文にあるように二つの意味がありますが、「ただいま、現在」の意味で使われることが多くなっています。「目下勉強中です」「目下検討しております」のように、副詞的に使われることもあります。
目下の対義語
目下の対義語・反対語としては、現在のあとに来る時を意味する「未来」、これから先や未来を意味する「将来」、時間的にさかのぼった過去の一時期を意味する「昔」、過ぎ去った月日を意味する「いにしえ」などがあります。
目下の類語
目下の類語・類義語としては、過去から未来へと移り行く今を意味する「現在」、過去と未来との境になる時や現在を意味する「今」、今この時や現在を意味する「只今」、只今や現在を意味する「刻下」などがあります。
時下の例文
この言葉がよく使われる場面としては、この頃、当節、ただいまを表現したい時などが挙げられます。
例文1は、会社宛てに使われる手紙や文書の表現です。「ご清栄」は会社などの組織の繁栄を喜ぶ挨拶の言葉です。似た言葉の「ご清祥」は、個人宛の手紙に使われるもので、相手の健康と幸せを喜ぶ挨拶の言葉です。
目下の例文
この言葉がよく使われる場面としては、まのあたり、すぐ近く、ただいま、現在を表現したい時などが挙げられます。
例文1の文中にある目下は、「まのあたり、すぐ近く」の意味で用いられています。例文2から例文5の目下は、「ただいま、現在」の意味で用いられています。これらの例文にあるように、「ただいま、現在」の意味で使われることが多くなっている言葉です。
時下と目下という言葉は、どちらも「今日このごろ、現在」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、挨拶文の冒頭に用いる時には「時下」を、本文や会話のなかで用いる時は「目下」を使うようにしましょう。