似た意味を持つ「抜粋」(読み方:ばっすい)と「引用」(読み方:いんよう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「抜粋」と「引用」という言葉は、どちらも「文章を抜き出すこと」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
抜粋と引用の違い
抜粋と引用の意味の違い
抜粋と引用の違いを分かりやすく言うと、抜粋とは文章を抜き出すことを表し、引用とは他人の文章を抜き出して自分の文章に取り入れることを表すという違いです。
抜粋と引用の使い方の違い
一つ目の抜粋を使った分かりやすい例としては、「証明したい事実に関係する部分のみを抜粋する」「一部の職歴を抜粋して記載します」「重要なものだけを抜粋して簡潔にまとめる」「コメントを一部抜粋して引用します」などがあります。
二つ目の引用を使った分かりやすい例としては、「引用元をはっきり記載してください」「引用文献の記載方法に注意しましょう」「著作権侵害を避けるために引用ルールを設けました」「Twitterの引用リツイートのやり方がわかりません」などがあります。
抜粋と引用の使い分け方
抜粋と引用という言葉は、どちらも「文章を抜き出すこと」を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
抜粋とは、書物や作品などから、すぐれた部分や必要な部分を選んで抜き出すことを意味します。あくまで抜粋は抜き出すことであり、抜き出した文章を勝手に直したり自分で付け加えたりすることではありません。
引用とは、他人の文章や言葉を、自分が執筆する文章や話の内容に取り入れることを意味します。引用は、自分が主張する説や話に信頼性を持たせられるというメリットがあります。ただし、引用は他者の文章等を使うことなので、正しく引用しないと著作権侵害になってしまう可能性があります。
つまり、抜粋とは文章を抜き出す作業までをいう言葉であり、引用とは他人の文章を自分の文章に取り入れることをいう言葉です。論文やレポートを書く際には、他人の文章を抜粋して引用することもあります。
抜粋と引用の英語表記の違い
抜粋を英語にすると「abstract」「selection」「extract」となり、例えば上記の「抜粋する」を英語にすると「make extracts」となります。
一方、引用を英語にすると「quotation」「citation」「reference」となり、例えば上記の「引用元」を英語にすると「reference source」となります。
抜粋の意味
抜粋とは
抜粋とは、書物や作品からすぐれた部分や必要な部分を抜き出すことを意味しています。
抜粋の漢字表記
抜粋は「抜萃」とも書きますが、一般的には「抜粋」と表記されています。
抜粋の読み方
抜粋の読み方は「ばっすい」です。誤って「ばついき」「ぬくすい」などと読まないようにしましょう。
抜粋の使い方
抜粋を使った分かりやすい例としては、「必要な箇所のみ抜粋して引用してください」「英語の論文から一部を抜粋する」「参考文献の一部を抜粋して掲載する」「スマホの便利な使い方の抜粋版をご用意しました」などがあります。
その他にも、「職歴が多いので職歴を抜粋しても大丈夫ですか」「文書の種類によって抜粋か要約かの選択をする」「旅行で役立つ会話集の英語抜粋版を買いました」「必要な箇所だけを抜粋して引用する」などがあります。
抜粋の「抜」は訓読みで「ぬく」と読み、多くのものの中からそのものだけを選び取ることを表します。質が良くすぐれていることを表す「粋」と組み合わさり、抜粋とは、書物や作品からすぐれた部分や大事な箇所を抜き出すことを意味します。
「抜粋曲」の意味
抜粋を用いた日本語には「抜粋曲」があります。抜粋曲とは、 楽曲の主要な部分や有名な部分だけを選び出して、一つの音楽に編曲したものです。そのタイトルは「ショパン:幻想即興曲(抜粋)」「ショパン:幻想即興曲より」「ショパン:幻想即興曲から」などと表記されます。
抜粋の対義語
抜粋の対義語・反対語としては、文章の全体を意味する「全文」などがあります。
抜粋の類語
抜粋の類語・類義語としては、書物などから必要な部分を抜き出して書くことを意味する「抜き書き」、原文から必要な部分だけを書き抜くことを意味する「抄録」、必要なところを抜き出して書くことを意味する「抄出」などがあります。
引用の意味
引用とは
引用とは、人の言葉や文章を、自分の話や文の中に引いて用いることを意味しています。
引用の使い方
引用を使った分かりやすい例としては、「引用文献の書き方を教えてください」「引用記述のルールに従ってください」「メールの引用返信のマナーをご存知でしょうか」「英語の論文における引用の仕方を説明します」などがあります。
その他にも、「サイトや書籍から情報を引用する」「様々な引用符の書き方を解説します」「ネット記事から引用しました」「引用文献と参考文献は全く違います」「ツイッターの引用リツイートとは何ですか」などがあります。
引用とは、他人の文章や説あるいは図表などを自分の文章に用いることを意味します。引用には大きく二つの方法があり、「直接引用」は引用元の文献に書かれている文章を場全く変えることなくそのまま引用することで、「間接引用」は引用元の文献を自分自身で要約して引用することです。
「引用リツイート」の意味
上記の例文にあるTwitter(ツイッター)の「引用リツイート」とは、他のユーザーが過去に投稿したコメントを添えて、自分のコメントを追加する機能です。現在、Twitterのサービス名は「X」に変わり、「引用リツイート」の機能は「引用リポスト」と呼ばれています。
引用の対義語
引用の対義語・反対語としては、もとの文章を意味する「原文」などがあります。
引用の類語
引用の類語・類義語としては、他の本に引用された文章をそのまま用いることを意味する「孫引き」、証拠や参考として例に引くことを意味する「引き合い」、引用や引用文を意味する「クオーテーション」などがあります。
抜粋の例文
この言葉がよく使われる場面としては、書物や作品から要所を抜き出すこと、抜き出したものを表現したい時などが挙げられます。
例文2や例文3にある「一部抜粋」(読み方:いちぶばっすい)とは、全体のなかのある部分を抜き出すことを意味します。例文4の「抜粋版」とは、ある書物のなかから主要なところを抜き出して作り替えたものを指す言葉です。
引用の例文
この言葉がよく使われる場面としては、他人の文章を自分の文中に取り入れることを表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「引用符」とは、文中で会話や他からの引用などであることを示すためにつける記号のことです。和文の「 」や、欧文の“ ”などがあります。
抜粋と引用という言葉は、どちらも「文章を抜き出すこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、文章を抜き出す作業を表現したい時は「抜粋」を、文章を抜き出して自分の文章に取り入れることを表現したい時は「引用」を使うようにしましょう。