同じ「けんざい」という読み方の「健在」と「顕在」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「健在」と「顕在」という言葉は同音の言葉ですが、それぞれの漢字によって使い方には少し違いがあります。
健在と顕在の違い
健在と顕在の違いを分かりやすく言うと、健在とは元気な状態や以前と変わらず能力を発揮している状態、顕在とは明白に形となって存在している状態という違いです。
一つ目の健在を使った分かりやすい例としては、「あなたのご両親はご健在ですか」「両親ともに健在ですが最近母の様子が少し変です」「その当時は軍国主義の考えが健在だった」「引退した前社長の発言力は未だ健在です」などがあります。
二つ目の顕在を使った分かりやすい例としては、「隠れていた問題がだんだんと顕在化している」「人の顕在意識と潜在意識の割合に驚きました」「顕在化する地政学リスクに対処する」「多くの企業で人手不足が顕在化している」などがあります。
健在と顕在という言葉は、どちらも「けんざい」と読みますが、意味や使い方には大きな違いがあります。
健在とは、「ご両親はご健在ですか」のような使い方で、元気で無事に生活を送っていることを意味します。また、「前社長の発言力は未だ健在です」のような使い方で、それまでと変わりなく十分に力を発揮していることの意味も持つ言葉です。
顕在とは、物事がはっきりと形にあらわれて存在することを意味します。隠れていたものや潜在的なものが、はっきりと表面に現れることを「顕在化」と言い、心理学や社会学などの学問分野でよく用いられる表現です。
つまり、健在とは元気なさまや以前と同様に力を発揮しているさまを意味し、顕在とは物事が明確にあらわれることを意味します。二つの言葉は同じ読み方をしますが、意味が全く違う同音異義語なので互いに置き換えて使うことはできません。
健在を英語にすると「in good health」「going strong」「alive and well」となり、例えば上記の「あなたのご両親はご健在ですか」を英語にすると「Are your parents still alive? 」となります。
一方、顕在を英語にすると「being obvious」「being actual」「being revealed」となり、例えば上記の「だんだんと顕在化している」を英語にすると「be getting more and more obvious」となります。
健在の意味
健在とは、元気で無事に暮らしていること、また、そのさまを意味しています。
その他にも、「それまでと変わりなく十分に能力を発揮していること、また、そのさま」の意味も持っています。
「私の家族はみな健在です」「ご実家のお母様はご健在ですか」「生徒の両親が健在かを確認する」「祖父母が健在であれば相続人になります」などの文中で使われている健在は、「元気で無事に暮らしているさま」の意味で使われています。
一方、「センスの良さは相変わらず健在ですね」「海外から帰国して10年になりますが英語力は健在です」などの文中で使われている健在は、「それまでと変わりなく十分に能力を発揮しているさま」の意味で使われています。
健在の読み方は「けんざい」です。同じ読み方をする熟語に「顕在」や「建材」などがありますが、意味が異なるため書き間違いに注意しましょう。
健在とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ち、それぞれの意味で使用されているため、文脈により意味を捉える必要があります。健在の「健」は体が丈夫でしっかりしているさまを表し、「在」は物がそこにあることや人がいることを表す漢字です。
上記例文にある「ご健在」とは、ある人物が元気に暮らしている状態を意味する敬意表現です。基本的には年配者の方に対して使われています。似た言葉に「ご存命」がありますが、「ご存命」は生きていることにフォーカスした表現であり、元気かどうかの健康状態を述べるものではありません。
健在の対義語・反対語としては、スポーツなどで現役から退くことを意味する「引退」などがあります。
健在の類語・類義語としては、体の調子がよく健康であることを意味する「元気」、からだに悪いところがなく丈夫なことを意味する「健康」、病気をしないで元気なことを意味する「息災」、現在ある地位などに就いて活動していることを意味する「現役」などがあります。
顕在の意味
顕在とは、はっきりと形にあらわれて存在することを意味しています。
顕在を使った分かりやすい例としては、「顕在的な課題だけでなく潜在的課題も把握する」「社員間における英語力のギャップが顕在化している」「顕在的ニーズはもちろん潜在的ニーズにも働きかけよう」などがあります。
その他にも、「物価高の影響が人々の暮らしぶりに顕在化しています」「顕在層と潜在層を分類してアプローチすべきだ」「子どもの教育には顕在的カリキュラムだけでなく潜在的カリキュラムも大事です」などがあります。
顕在の読み方は「けんざい」です。誤って「げんざい」などと読まないようにしましょう。
顕在の「顕」は訓読みで「あきらか」「あらわれる」と読み、はっきり目立つことや隠れたものを明らかにすることを表します。そこにあることを表す「在」と組み合わさり、顕在とは、はっきりと認められるように現れて存在することを意味します。
顕在を用いた日本語には「顕在意識」があります。顕在意識とは、人が自覚している意識を意味し、思考や判断などを行う意識的な領域を指します。対になる言葉は「潜在意識」であり、潜在意識は自覚されることなく活動する意識のことです。
顕在の対義語・反対語としては、表面には表れず内にひそんで存在することを意味する「潜在」、表に現れないで隠れて存在していることを意味する「伏在」などがあります。
顕在の類語・類義語としては、はっきりとした形で現れることを意味する「顕現」、具体的に現されたものを意味する「具現」、実際に存在することや現実にあるものを意味する「実在」、現実に存在することを意味する「実存」などがあります。
健在の例文
この言葉がよく使われる場面としては、達者に暮らしていること、さわりがないこと、それまでと変わりなく十分に力や能力を発揮していることを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2にある健在は、達者に暮らしていることの意味で用いられています。例文3から例文5の健在は、それまでと変わりなく十分に能力を発揮していること」の意味で使われています。
顕在の例文
この言葉がよく使われる場面としては、 物事がはっきりと現われて存在していることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、顕在の慣用的な言い回しには「顕在化」「顕在意識」「顕在顧客」などがあります。「顕在顧客」とは、商品やサービスの存在を知っている顧客を意味するマーケティング用語です。
健在と顕在という言葉は、どちらも「けんざい」と読む同音異義語です。どちらの言葉を使うか迷った場合、元気な状態や以前と変わらず能力を発揮している状態を表現したい時は「健在」を、はっきりと存在することを表現したい時は「顕在」を使うようにしましょう。