【分散】と【拡散】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「分散」(読み方:ぶんさん)と「拡散」(読み方:かくさん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「分散」と「拡散」という言葉は、どちらも「散らばること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




分散と拡散の違い

分散と拡散の違いを分かりやすく言うと、分散とは分かれて散らばること、拡散とは広がり散らばることという違いです。

一つ目の分散を使った分かりやすい例としては、「国民の人権を守るために権力を分散させるべきです」「分散を公式を用いて計算する」「分散分析表の空欄を埋める」「バイオマス由来の溶剤系分散剤を入手する」などがあります。

二つ目の拡散を使った分かりやすい例としては、「核の拡散を防止する条約が締結されました」「拡散方程式の解き方を教えてください」「拡散強調画像の有用性を論じる」「アルミニウムを拡散接合させる」「拡散されるようSNSのハッシュタグを多用する」などがあります。

分散と拡散という言葉は、どちらも一か所にあったものがあちこちに離れ離れになるを表しますが、意味や使い方には違いがあります。

分散とは、「権力を分散する」のような使い方で、物事がばらばらに分かれ散ることを意味します。また、「分散分析表」のような使い方で、統計学における概念として、データのバラツキや散らばりの程度を表現します。

拡散とは、広がって散ることや、広く散らかすことを意味します。物理の世界では、濃度分布が一様でないものが全体的に均一となって濃度差がなくなる現象を指します。近年では、SNS上で投稿されたコンテンツが、他のユーザーに広がっていく現象の意味で使用されることが多くなっています。

つまり、分散とは物事が分かれ散ることを表し、拡散とは広がって散ることを意味する言葉です。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。

分散を英語にすると「decentration」「dispersal」「apostasis」となり、例えば上記の「権力を分散させる」を英語にすると「decentralize authority」となります。

一方、拡散を英語にすると「divergence」「diffusion」「spread」となり、例えば上記の「核の拡散」を英語にすると「the spread of nuclear weapons」となります。

分散の意味

分散とは、物事がばらばらに分かれ散ること、分け散らすことを意味しています。

その他にも、「物理学で、同一媒質中の波の進行速度が、振動数によって変化する現象」「化学で、一つの相になっている物質中に、他の物質が微粒子の状態で散在している現象」「資料の散らばりぐあいを表す値」の意味も持っています。

「荷物は分散して持っていこう」「分散投資でリスクを回避する」などの文中で使われている分散は「物事がばらばらに分かれ散ること」の意味で、「光が分散され虹の模様が現れる」の文中で使われている分散は「振動数によって変化する現象」の意味で使われています。

一方、「分散剤の性能を細かく調べる」の文中で使われている分散は「他の物質が微粒子の状態で散在している現象」の意味で、「標準偏差と分散の関係を説明します」「分散と期待値の求め方がわりません」の文中で使われている分散は「資料の散らばりぐあいを表す値」の意味で使われています。

分散とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため、文脈により意味を捉える必要があります。分散の「分」は全体をいくつかにわけることや別々になること、「散」は四方に散らすことを表す漢字です。

分散を用いた日本語には、「分散剤」があります。分散剤とは、固体微粒子を液体中に均一に分散させるために用いる界面活性剤のことです。石灰、デンプン、ゼラチンなど各種のものがあり、浮選剤として重要な役割を果たします。

分散の対義語・反対語としては、1か所に集まることを意味する「集合」、一つのところに集めることを意味する「集中」などがあります。

分散の類語・類義語としては、霧のようにあとかたもなく消えることを意味する「霧散」、まとまっていた人々が互いに離れ離れになることを意味する「離散」、1か所にあったものがあちこちに離れ離れになって広がる事を意味する「散らばる」などがあります。

拡散の意味

拡散とは、広がり、散らばることを意味しています。

その他にも、「混合流体が高い濃度から低い濃度の所へと移動して、一様な濃度になる現象」「SNSなどのソーシャルメディアにおいて、投稿されたメッセージを多くの人に引用してもらうこと」の意味も持っています。

「核拡散防止条約に関するニュースをチェックする」「生成モデルの1つに拡散モデルがあります」「新しい英語教育に関する議論の拡散を避ける」などの文中で使われている拡散は、「広がり散らばること」の意味で使われています。

一方、「拡散係数の組成と温度依存を調べる」の文中で使われている拡散は「混合流体が一様な濃度になる現象」の意味で、「リポスで投稿を拡散する」の文中で使われている拡散は「ソーシャルメディアにおいて多くの人に引用してもらうこと」の意味で使われています。

拡散とは、上記の例文にあるように三つの意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため、文脈により意味を判断する必要があります。拡散の「拡」は範囲を広げること、「散」は細かくちりぢりになることを表します。

拡散を用いた日本語には「拡散係数」があります。拡散係数とは、拡散する分子の平均速度で、物質の拡散の早さの指標になるものです。溶液の場合は、アインシュタインの拡散式により、浸透圧と濃度との関係から求めることができます。

拡散の対義語・反対語としては、ばらばらになっているものを集めて一つにすることを意味する「結集」、集まって積み重なることを意味する「集積」などがあります。

拡散の類語・類義語としては、飛んであちこちへ散ることを意味するを意味する「飛散」、広く散らばることを意味する「散開」、四方に散ってちりぢりになることを意味する「四散」、雲や霧が消えるときのようにあとかたもなく消えうせることを意味する「雲散霧消」などがあります。

分散の例文

1.投資のリスクを抑えるために、分散投資と長期投資を行っています。
2.ばらつきの大きさを示す時には、分散ではなく標準偏差を用いてください。
3.共分散をエクセルを使って求める方法を、先輩にわかりやすく教えてもらいました。
4.分散と期待値の計算サイトは知っていますが、なるべく使わないようにしています。
5.分散の求め方に苦慮していましたが、裏ワザで簡単に計算できるようになりました。

この言葉がよく使われる場面としては、一つ所にあったものを分け散らすこと、波の進む速さが、波長や振動数の違いによって変化する現象、各数値とデータの平均値との差の平方の平均値、確率変数とその平均値との差を平方して得られる確率変数の平均値を表現したい時などが挙げられます。

例文3にある「共分散」とは、2つの変数の関係を示す値であり、各変数の偏差の積を平均したものです。

拡散の例文

1.子どもたちの英語学習において、知的好奇心だけでなく拡散的好奇心も大切なものです。
2.拡散泳動の現象は古くから知られているものの、まだまだ研究の余地はあります。
3.理論化学における拡散とは、分子がどのように移動し混ざり合うかを理解するための重要な概念です。
4.おもしろ動画を仲間内だけで楽しむつもりだったのに、みんなが拡散するとは思わなかった。
5.個人の名誉を傷つけるデマを拡散をすると、名誉毀損罪が成立する可能性があります。

この言葉がよく使われる場面としては、広がって散ること、全体的に均一となって濃度差がなくなる現象、SNSで投稿されたメッセージを多くの人に引用してもらうことを表現したい時などが挙げられます。

例文1にある「拡散的好奇心」とは、特定の分野に限定されず、いろんな事に興味を持つ好奇心を言います。例文2の「拡散泳動」とは、気体や液体中で、濃度勾配によって粒子が移動する現象を意味します。

分散と拡散という言葉は、どちらも「散らばること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、分かれて散らばることを表現したい時は「分散」を、広がり散らばることを表現したい時は「拡散」を使うようにしましょう。

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