似た意味を持つ「義理」(読み方:ぎり)と「人情」(読み方:にんじょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「義理」と「人情」という言葉は、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
義理と人情の違い
義理と人情の意味の違い
義理と人情の違いを分かりやすく言うと、義理とは筋を通そうとする理性であり、人情とは生まれながらの感情という違いです。
義理と人情の使い方の違い
一つ目の義理を使った分かりやすい例としては、「彼は義理人情に厚い人だな」「腹立てるより義理立てよ」「いつも義理一遍の挨拶しかしない隣人」「義理堅い人は信頼できる」などがあります。
二つ目の人情を使った分かりやすい例としては、「人情味あふれる土地を探している」「父は仲間を守る人情深い人だった」「昔は人情深い近所づきあいがあった」「人情本を読み解く」などがあります。
義理と人情という言葉は、「義理人情に厚い人」や「義理人情がない社会」など組み合わせて使われる言葉なので同じような意味を持つと思われがちですが、二つの言葉の意味は大きく異なります。
義理とは物事が正しく筋が通っていることを意味し、人情とは人間の情感や欲を意味します。つまり、義理とは筋を通そうとする理性であり、人情とは生まれながらにして持つ感情という、相対する性質の言葉なのです。
有名な歌詞に「義理と人情を秤りにかけりゃ、義理が重たい男の世界」があります。義理と人情を比べた場合に、男の世界は義理を重んじることを表した言葉です。ここでの義理は物事の筋道や守るべきものを意味し、人情は感情や情けを意味し、二つの言葉は対比して使われています。
義理と人情の英語表記の違い
義理を英語にすると「justice」「duty」となり、例えば上記の「義理立てする」を英語にすると「do justice to」となります。一方、人情を英語にすると「humanity」「sympathy」となり、例えば上記の「人情味」を英語にすると「human touch」となります。
義理の意味
義理とは
義理とは、人として守るべき正しい道を意味しています。
その他にも、血のつながらない親族関係や、つきあい上しかたなくする行為の意味も持っています。
表現方法は「義理がある」「義理を果たす」「義理を立てる」
「義理がある」「義理を果たす」「義理を立てる」「義理を通す」「義理を欠く」「義理はない」などが、義理を使った一般的な表現方法です。
義理の使い方
「義理と人情にあふれた街だなあ」「道理百遍義理一遍で社長を口説く」「義理を欠いてはいけないよ」「これで義理は果たしたからな」「あなたに家の事情を話す義理は無い」などの文中で使われている義理は、「人として守るべき正しい道」の意味で使われています。
一方、「義理の両親への心遣いに悩む」「義理の父を介護する」などの文中で使われている義理は「血のつながらない親族関係」の意味で使われています。「義理で送る年賀状は止めた」「義理チョコを配る」などの文中で使われている義理は、「つきあい上の行為」の意味で使われています。
義理の由来
義理という言葉の根本の意味は「物事が正しく筋が通っていること」です。この意味が転じて、「人として守る正しい道」「血のつながらない親族関係」「つきあい上する行為」など上記の例のように複数の意味で使われています。
「義理堅い」の意味
義理を用いた日本語には「義理堅い」があり、対人関係の義理を大切にして軽く扱ったりしないことを意味します。ここでの義理は、正しい道筋や守るべき道理のことであり、それを重んじて堅く守ろうとする性格であることを表します。
「道理百遍義理一遍」「腹立てるより義理立てよ」の意味
上記の例にある「道理百遍義理一遍」は諺(ことわざ)であり、理屈をこねてくり返し説くよりも、一度でも誠意を尽くすほうが効果的であることを意味します。他にも、「腹立てるより義理立てよ」という諺があり、怒るよりも義理を立てたほうが自分のためになることを意味します。
義理の対義語
義理の対義語・反対語としては、人として守るべき道にはずれることを意味する「不義」、道理にはずれていることを意味する「無道」などがあります。
義理の類語
義理の類語・類義語としては、果たさなければならない務めを意味する「責務」、人のふみ行うべき正しい道を意味する「道義」、他人に対して欠かせない礼儀上の務めを意味する「仁義」などがあります。
義理の義の字を使った別の言葉としては、主君に対し真心を尽くして仕えることを意味する「忠義」、真心をもって務めを果たすこと「信義」などがあります。
人情の意味
人情とは
人情とは、人間のありのままの情感を意味しています。
その他にも、人としての情けや、他人への思いやりの意味も持っています。
表現方法は「人情に厚い」「人情溢れる」「人情深い」
「人情に厚い」「人情溢れる」「人情深い」「人情がない」「人情を重んじる」などが、人情を使った一般的な表現方法です。
人情の使い方
「世の中に人情味がなくなったら終わりだ」「その映画はお涙頂戴の人情ものだった」「交渉事に人情を持ち込むな」「人情豊かな町人たちの物語」などの文中で使われている人情は、「人間のありのままの情感」の意味で使われています。
一方、「人情の機微に触れるような対応だった」「私は世話好き人情家タイプだ」「私の上司は部下に慕われる人情派だ」などの文中で使われている人情は、「他人への思いやり」の意味で使われています。
人情とは、人間の情感や他人を思いやる心を意味し、日常生活で使ったり聞いたりする馴染みのある言葉なはずです。感情を表す言葉なので、感情に動かされずに考えたり判断したりするビジネスシーンにおいては使われることが少ない言葉です。
「人情味」の意味
人情を用いた日本語には「人情味」という言葉があり、人間らしい心のあたたかみを意味します。「人情味」という言葉には「人情味あふれる」という言い回しがあり、人間らしいあたたかい心が満ちている様子を表しています。
人情の対義語
人情の対義語・反対語としては、精神や感情などの心の働きのないことを意味する「無情」、他人に対する思いやりに欠けることを意味する「非人情」などがあります。
人情の類語
人情の類語・類義語としては、人間としての豊かな情緒を意味する「人間味」、物に感じて動く心の働きを意味する「情」、他人をいたわる心を意味する「情け」などがあります。
人情の情の字を使った別の言葉としては、物事に感じて起こる気持ちを意味する「感情」、思いやりのある寛大な心を意味する「温情」などがあります。
義理の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人として守る正しい道や、血のつながらない親族関係を表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2で使われている義理は、人として守り行うべき正しい道を意味します。例文2にある「義理と人情の板挟み」とは、義理と人情の間で身動きがとれず苦しむことを表します。ここでの義理は社会の掟としての正しい道を、人情はありのままの情感を意味する相対する言葉です。
例文3から例文5で使われている義理は、血のつながらない親族関係を意味します。例文3にある「義理の父」とは、配偶者の父親を意味し、「義父」とも表現します。同様に例文4の「義理の両親」は、「義父母」とも表現できます。例文5の「義理の息子」は「娘婿」とも表現できます。
人情の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人間の情感や他人を思いやる心を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4で使われている人情は、人間のありのままの情感を意味します。例文3にある「人情噺」とは、落語の分類のひとつであり、親子や夫婦など人間の情愛を描いた噺のことです。例文5で使われている人情は、他人への思いやりを意味します。
義理と人情という言葉は、似た意味を持つと思われがちなのですが、それぞれの意味は大きく異なります。義理は筋を通すことを意味し、人情はありのままの情感や思いやりを意味する、相対する性質の言葉であることを覚えておきましょう。