似た意味を持つ「認識」(読み方:にんしき)と「意識」(読み方:いしき)と「認知」(読み方:にんち)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「認識」と「意識」と「認知」という言葉は、はっきり知ることという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
認識と意識と認知の違い
認識と意識と認知の使い分け方
認識と意識と認知の違いを分かりやすく言うと、認識は対象を深く理解する時に使い、意識は対象を気に掛ける時に使い、認知は対象をはっきりと認める時に使うという違いです。
認識と意識と認知の使い方の違い
認識という言葉は、「USBメモリを認識しない」「音声認識システムを起動する」などの使い方で、対象を知った上で理解することを意味します。そのため、USBメモリが存在することや音声が聞こえてきた事実だけではなく、その内容を理解するまでを含みます。
意識という言葉は、「注意事項を意識しながら取り組む」「試験を意識して勉強する」などの使い方で、事物を気に掛けることを意味します。その動作主の心の動きを表す言葉であるため、はっきりと理解することもあれば、知るだけに留まる場合もあります。
認知という言葉は、「新店舗をようやく認知した」「企業の認知度をあげる」などの使い方で、事物をはっきりと知ることを意味します。認識とは違って、その事物の存在などを知るだけに留まります。
そのため、その事物に関する情報をより把握している順に並べると、認識≧意識>認知となります。意識は理解した上でその事物を気に掛けることもあれば、理解せずに気に掛けることもあります。
また、認識は知るという行為に、意識は主体の心の動きにそれぞれ重きを置いているという違いがあります。これらが、認識、意識、認知の明確な違いです。
認識の意味
認識とは
認識とは、ある物事を知り、その意義を正しく理解することを意味しています。
表現方法は「認識する」「認識を持つ」「認識を深める」
「認識する」「認識を持つ」「認識を深める」などが、認識を使った一般的な言い回しです。
認識の使い方
認識を使った分かりやすい例としては、「私の夫がダメンズだと認識するわけがない」「一人一人が当事者だという認識を持つことが大切だ」「今回の選挙で政治に対する認識を深める結果となった」などがあります。
認識を使った言葉として、「認識論」「認識ある過失」があります。
「認識論」の意味
一つ目の「認識論」とは、認識、知識などの性質や起源、人が理解できる限界などについて考える哲学の部門の一つで、「知識論」とも呼ばれます。
人はどうやって物事を正しく知ることができるのか、考え方が正しいか否かを確かめる方法はあるのかなどの問いが認識論で扱われます。今日でいう認識論の原点は、知識とは何かというプラトンの問いです。
「認識ある過失」の意味
二つ目の「認識ある過失」とは、行為者が罪になるような結果に至ることを認識しながらも、その結果を実際に発生させることを意味する言葉です。
例えば、公園の横を車で走行していると仮定します。この公園で遊んでいた子どもが一人、道路に飛び出して来ようとしているのを確認したものの、子どもと車が接触するほどではないと過信するも結果事故となってしまった場合、認識ある過失とみなされます。
認識の類語
認識の類語・類義語としては、ある立場からの物事の考え方を意味する「見方」、物事の違いをはっきり見分けることを意味する「弁別」、物の真偽や価値などを見分けることを意味する「鑑識」、事柄の当否などを判断して決めることを意味する「認定」があります。
認識の認の字を使った別の言葉としては、認めて受け入れることを意味する「認容」、信頼して認めることを意味する「信認」、人の行為や思想などをよいと認めることを意味する「是認」、暗黙のうちに認め許すことを意味する「黙認」などがあります。
意識の意味
意識とは
意識とは、物事や状態をはっきりと知ることを意味しています。また、気に掛けることという意味もあります。
表現方法は「意識する」「意識がある」「意識がない」
「意識する」「意識がある」「意識がない」などが、意識を使った一般的な言い回しです。
意識の使い方
意識を使った分かりやすい例としては、「異性を意識すると何事も手につかなくなってしまう」「当事者意識があるだけがこの会社では出世している」などがあります。
意識を使った言葉として、「意識の流れ」「意識改革」があります。
「意識の流れ」の意味
一つ目の「意識の流れ」とは、留まることがなく、絶えず流れていく人間の意識の動きを意味する心理学用語です。アメリカの心理学者ウィリアム・ジェームズが1890年に用いたのが始めです。
1915年、『尖った屋根』を著したドロシー・リチャードソンを皮切りに、物語の登場人物の思考や感情などが時間の流れと共に変わっていく手法として、「意識の流れ」が使われるようになりました。
「意識改革」の意味
二つ目の「意識改革」とは、考え方や取り組みの姿勢などを新しいものに変えることを意味する言葉です。特定の一人に対してというよりは、企業や団体が変わりゆく環境に適応するために使う言葉です。
意識の類語
意識の類語・類義語としては、自分の置かれている位置や自分の価値などをはっきりと知ることを意味する「自覚」、相違などを感じ取る心の働きを意味する「感覚」、正常に意識が働いている様子を意味する「正体」、確かな意識を意味する「正気」があります。
意識の意の字を使った別の言葉としては、どうするつもりかという考えを意味する「意向」、進んで何かをしようと思う気持ちを意味する「意欲」、わざとすることを意味する「故意」、心の中に隠している別の考えを意味する「他意」などがあります。
認知の意味
認知とは
認知とは、ある事柄をはっきりと認めることを意味しています。
表現方法は「認知する」「認知される」「認知が高まる」
「認知する」「認知される」「認知が高まる」などが、認知を使った一般的な言い回しです。
認知の使い方
認知を使った分かりやすい例としては、「色々あったが自分の子供だと認知することにした」「この仕組みが広く認知されるように営業している」「好きなアイドルの認知が高まれば高まるほど変なファンが寄ってこないか心配だ」などがあります。
認知を使った言葉として、「認知症」「認知機能」があります。
「認知症」の意味
一つ目の「認知症」とは、様々な原因で脳の細胞が死んでしまうなどで、脳に障害が起こり、生活する上で支障が出ている状態を指す言葉です。もとは痴呆と呼ばれていた症状ですが、2004年に厚生労働省によって認知症という言い方に変えられました。
現在の医学では治療方法は見つかっておらず、認知症患者の介護の負担の大きさが原因で心中問題にまで発展することもあります。また、認知症患者による自動車の運転は判断力が低下していることから危険とされており、社会的な問題の一つとなっています。
「認知機能」の意味
二つ目の「認知機能」とは、視覚や聴覚などによって外部から得られた情報をもとにして、周囲の物事や自分の状態を正しく把握し、適切に行動するために脳の高度な機能のことです。具体的には、記憶、理解、計算、学習、判断などの能力を指します。
認知の類語
認知の類語・類義語としては、印象などを感じて心に受け止めることを意味する「感受」、感じ取ることを意味する「感知」、物事の種類や性質などを見分けることを意味する「識別」、正当または事実であると認めることを意味する「承認」などがあります。
認知の知の字を使った別の言葉としては、天が人間に与えた使命を知ることを意味する「知命」、気が付くことを意味する「察知」、細かなところまでよく知っていることを意味する「熟知」、何が起こるかと前もって知ることを意味する「予知」などがあります。
認識の例文
この言葉がよく使われる場面としては、事物を知って理解することを意味する時などが挙げられます。
例文1の「齟齬」とは、意見や事柄が食い違って合わないことを意味します。
例文2の「共通認識」とは、同じ物事や同じ言葉について、同じように理解をしていることを意味する言葉です。
意識の例文
この言葉がよく使われる場面としては、気に掛けることを意味する時などが挙げられます。
例文2の「意識調査」とは、社会において行われている調査で、商品やサービスの購入理由や満足度など購入した後店側では把握が難しい情報を集めるため、活用されます。
認知の例文
この言葉がよく使われる場面としては、はっきりと知り、認めることを意味する時などが挙げられます。
例文2の「メタ認知」とは、自分自身を客観的に認知する能力を意味する言葉です。そのため、メタ認知が高い人は、周りへの配慮ができる、柔軟性がある、仕事への意欲が高いなどの特徴があります。
例文3の「認知」は、婚姻関係にない男女の間に生まれた子どもを、父親や母親が自分の子どもであると認めて法律上の親子関係を発生させることを意味します。
認識と意識と認知どれを使うか迷った場合は、物事を知って理解することを表す場合は「認識」を、物事を気に掛けることを表す場合は「意識」を、物事を知って認めることを表す場合は「認知」を使うと覚えておけば間違いありません。