似た意味を持つ「埒外」(読み方:らちがい)と「管轄外」(読み方:かんかつがい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「埒外」と「管轄外」という言葉は、ある範囲の外を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
埒外と管轄外の違い
埒外と管轄外の意味の違い
埒外と管轄外の違いを分かりやすく言うと、埒外とは物事の範囲外を意味し、管轄外とは権限や支配の範囲外を意味するという違いです。
埒外と管轄外の使い方の違い
一つ目の埒外を使った分かりやすい例としては、「哲学は科学の埒外の次元を探求することである」「興味関心の埒外にある」「その結果は彼の想像の埒外にあった」「よもやの退場処分となり勝敗の埒外となった」などがあります。
二つ目の管轄外を使った分かりやすい例としては、「この件は彼らの管轄外だ」「病院の受け入れ先がなく管轄外搬送された」「管轄外本店移転の際の印鑑届について説明を受けた」「管轄外の不動産についても抵当権設定する」などがあります。
埒外と管轄外の使い分け方
埒外と管轄外という言葉は、定められた領域や場所から外れたところを表す言葉です。似た表現をする言葉ですが、意味や使い方は異なります。埒外はある物事の範囲の外を意味し、あらゆる物事に対して使われます。管轄外は権限や支配が及ぶ範囲の外を意味し、主に行政機関に対して使われています。
埒外と管轄外を比較すると、埒外の方が広い意味を持ち汎用性があると言えるでしょう。
埒外と管轄外の英語表記の違い
埒外を英語にすると「out of bounds」「beyond the pale」となり、例えば上記の「科学の埒外」を英語にすると「outside the pale of science」となります。
一方、管轄外を英語にすると「outside one’s jurisdiction」となり、例えば上記の「彼らの管轄外」を英語にすると「outside their jurisdiction」となります。
埒外の意味
埒外とは
埒外とは、ある物事の範囲の外を意味しています。
表現方法は「生活の埒外」「日常の埒外」「埒外の民族」
「生活の埒外」「日常の埒外」「埒外の民族」などが、埒外を使った一般的な言い回しです。
埒外の使い方
埒外を使った分かりやすい例としては、「わが国も経済危機の埒外にはありません」「予測の埒外の展開だった」「物理学の埒外である事象が観測された」「経済成長の埒外に置かれた途上国だ」などがあります。
その他にも、「法の埒外にて処理されるべき問題だ」「自然科学の埒外の世界観だ」「想像の埒外すぎる光景に衝撃を受けた」「政策的配慮の埒外の民族となってしまった」「彼は常識の埒外にいる人だ」などがあります。
埒外の読み方
埒外は「らちがい」と読みます。埒は「らち」「らつ」の二つの読み方がありますが、「らつがい」とは読みません。
埒外の語源
埒外という言葉の「埒」とは、仕切りの垣や囲いを意味し、もともとは馬を囲う柵のことでした。「埒」を使った馴染みのある表現には「埒が明かない」があり、馬を引き入れる柵が開かない、転じて、物事の決まりがつかないことの意味で使われています。
埒外とは仕切りの外であり、対象の範囲外を表す言葉です。埒外は日常会話ではあまり使われず、文語的表現です。もろもろの物や事柄の外側、という意味で使われる汎用性のある言葉なので、小説などの創作物や新聞などで使われています。
埒外の対義語
埒外の対義語・反対語としては、ある物事の範囲内を意味する「埒内」、一定の制限や範囲を越えないことを意味する「枠内」、ある範囲や制限の内にあることを意味する「限り」などがあります。
埒外の類語
埒外の類語・類義語としては、 一定の範囲や限度を越えることを意味する「枠外」、製品などが定められた基準に当てはまらないことを意味する「規格外」などがあります。
埒外の埒の字を使った別の言葉としては、道理にはずれていてけしからぬことを意味する「不埒」、勝手気ままでしまりのないことを意味する「放埒」、処置して決着をつけることを意味する「仕埒」などがあります。
管轄外の意味
管轄外とは
管轄外とは、管轄の範囲外を意味しています。
表現方法は「管轄外だ」「管轄外です」「管轄外の」
「管轄外だ」「管轄外です」「管轄外の」などが、管轄外を使った一般的な言い回しです。
管轄外の使い方
管轄外を使った分かりやすい例としては、「管轄外の警察署から着信があった」「警察官は管轄外の地域でも現行犯逮捕ができる」「管轄内と管轄外の抵当権を同日申請した」「管轄外本店移転をオンライン申請で届けることにした」などがあります。
その他にも、「管轄外の税務署では税務申告が出来なかった」「希望する搬送病院は管轄外なので無理だった」「管轄外供託許可申請の書式を取り寄せた」「管轄外本店移転をしたので印鑑カードが使えなくなった」などがあります。
管轄外という言葉の「管轄」とは、権限をもって支配することや、その支配の及ぶ範囲を意味します。従って、管轄外とは、権限や支配が及ぶ範囲外であることを意味します。一般に管轄という言葉は、行政が取扱う事務について地域的や内容的に限定づける範囲に使われています。
「管轄外本店移転」の意味
管轄という言葉を用いた日本語には「管轄外本店移転」があり、会社の本店を移転する場合に、これまでの管轄法務局の管轄区域外に移転することを意味します。法務局にはそれぞれ管轄区域が設けられており、法人登記の申請先は会社の本店所在地を管轄する法務局に対して行います。
管轄外の対義語
管轄外の対義語・反対語としては、一定の区域のなかや範囲のうちを意味する「域内」、範囲の内を意味する「圏内」などがあります。
管轄外の類語
管轄外の類語・類義語としては、ある一定の範囲の外や区域の外を意味する「域外」、携帯電話で電波の届く範囲外であることを意味する「圏外」などがあります。
管轄外の轄の字を使った別の言葉としては、ある範囲を管轄することを意味する「所轄」、全体をまとめて取り締まることを意味する「総轄」、中間の機関を経ずに直接に管轄することを意味する「直轄」などがあります。
埒外の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある物事の範囲の外を表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、埒外という言葉は概念や事物の範囲外の意味で広く用いられています。例文5にある「埒外ではない」とは、範囲外ではなく対象であることを意味し、「埒内」と言い換えることができます。
管轄外の例文
この言葉がよく使われる場面としては、管轄の範囲外を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「管轄外登録費用」とは、車を購入した際に購入者の住所を管轄する陸運局以外で登録手続きする場合にかかる費用です。例文2にあるように、求人情報を提供したり職業相談にのったりする行政機関のハローワークは、住んでいる地域によって管轄が決められています。
埒外と管轄外という言葉は、どちらも範囲外を表す言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、ある物事の範囲外を表現したい時は「埒外」を、管轄の範囲外を表現したい時は「管轄外」を使うようにしましょう。