似た意味を持つ「割愛」(読み方:かつあい)と「省略」(読み方:しょうりゃく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「割愛」と「省略」という言葉は、どちらも何かを簡略化するという意味を持つという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
割愛と省略の違い
割愛と省略の意味の違い
割愛と省略の違いを分かりやすく言うと、割愛は惜しいと思いながら思い切って切り捨てたり手放したりすることを意味していて、省略は物事を簡単にするために、不必要な部分を一部取り除くことを意味しているという違いです。
割愛と省略の使い分け方
割愛というのは、不必要な部分を切り捨てるという意味であると勘違いをされることが多い言葉ですが、本来の意味としては、惜しいと思ったり、愛着があったりするものを、思い切って手放すことを意味する言葉です。
本当は切り捨てたり、手放したりしたくない事柄を、仕方がなく断ち切ることを「割愛」と表現します。例えば、目上の人や立場が上の人から頂いた言葉などを、時間の都合によって全文ではなく一部分だけ抜粋して紹介する場合などに「割愛」と使います。
このように、割愛という言葉は、切り捨てた物事に大きな価値があると認める表現なので、ビジネスシーンなどでも目上の人に対して使用することが出来る言葉です。また、公務員が他の自治体などに籍を移すことも「割愛」と表現したりします。
対する省略という言葉は、割愛のような情念や感慨を持たずに、ただ一部分を取り除くことを表現する言葉です。物事を簡単にするために、必要であると思われる一部分だけを抜粋することを省略と表現します。
例えば、詳しく説明すると沢山の時間がかかってしまう物事について「時間の関係で説明は省略させていただきます」などのように表現することで、簡略化させることがあります。省略された事柄については、後日別の方法で補われることもあります。
省略という言葉は、ビジネスシーンなどで使用する際には、場合によっては失礼にあたることもあるので、注意が必要です。省略という言葉には、切り捨てた部分に対する敬意は含まれないものであると覚えておくようにしましょう。
改まった場面や目上の人などに対して使う場合、手放した部分に惜しいと思う気持ちがある場合には「割愛」と表現し、単純に簡略化をするだけの場合には「省略」と表現するのだと考えるようにしましょう。
割愛の意味
割愛とは
割愛とは、自分自身が惜しいと感じるものを、思い切って切り捨てたり手放したりすることを意味しています。
割愛の語源
文字通り、愛を割って手放すことを「割愛」と表現するのだと考えると分かりやすいでしょう。
割愛の使い方
割愛という言葉については「不必要なものを切り捨てる」という意味だと誤解している人も多くいます。しかし、本来の意味は、本当は捨てたくない、惜しいと思っているものを、思い切って切り捨てることを意味している言葉です。
例えば、目上の人や立場が上の人から貰った言葉などを発表する場面で、時間の関係で全文を公表できない際などに「お時間の都合により、以下、割愛させて頂きます」と表現したりします。
これは、本当は全文を公表したいのだけれど、どうしても時間が足りないので、惜しいと感じながらも思い切って手放しました、という意味を含む言葉です。相手に対して敬意や申し訳なさなどを感じさせる表現であると言えます。
また、割愛には公務員が他の自治体や民間企業などに移籍することや、大学の職員が他の大学へ移籍することを指す場合もあります。これは、今いる場所を惜しみながら、別の場所に移るという意味を含んでいる言葉です。
「割愛願い」「割愛申請書」の意味
上記のような意味を持つことから、人材が足りない大学などが別の大学から人を移籍して欲しい場合などに「割愛願い」「割愛申請書」などを提出することがあります。これは、そちらの人材を割愛して欲しいと願い出る申請のことです。
表現方法は「割愛する」「割愛します」「割愛させていただきます」
「割愛する」「割愛します」「割愛させていただきます」などが、割愛を使った一般的な言い回しです。
割愛の類語
割愛の類語・類義語としては、所有物の一部をさいて他に譲る事を意味する「割譲」(読み方:かつじょう)などがあります。
割愛の「割」という字を使った別の単語としては、それぞれが自分の領地を根拠地として勢力を張ることを意味する「割拠」、いくつかに分けることを意味する「分割」、品質や分量に比して高価なことを意味する「割高」などがあります。
省略の意味
省略とは
省略とは、物事を簡単にするために一部分を取り除くことを意味しています。
省略の読み方
省略という言葉は「しょうりゃく」の他に「せいりゃく」と読む場合もありますが、一般的には、ほとんどが「しょうりゃく」という読み方で使われる言葉です。
省略の語源
省略という言葉は、はぶく、減らすという意味を持つ「省」という字と、簡単にするという意味を持つ「略」という字が合わさることで成り立っている言葉です。つまり、物事を簡単にして減らしている状態を「省略」という言葉で表現するものです。
省略の使い方
本来はあるべきものを取り除いて簡単に済ませることを省略と表現します。
例えば、手紙などを紹介するような場面では「前文省略」という言葉が使われたり、ビジネスシーンなどでも「詳しい説明は省略させていただきます」などのように使われたりします。
時間の関係などで、本来は長くかかる説明などを簡略化させたり、重要な部分だけを抜粋したりして他を省いたりすることを「省略する」と表現します。省略された部分、削られた部分については、後日メールなど、別のかたちで補われるのが一般的です。
このように省略という言葉で省かれるものは、不必要な部分であることが多いものです。長い説明の中から、重要な部分だけを残して、不必要な部分を省くような場合に「省略」という言葉を使うのだと覚えておくようにしましょう。
表現方法は「省略する」「省略します」「省略させていただきます」
「省略する」「省略します」「省略させていただきます」などが、省略を使った一般的な言い回しです。
省略の類語
省略の類語・類義語としては、本来あるべきものを省いて間隔をあけることを意味する「間引く」(読み方:まびく)という言葉があります。
省略の「省」という字を使った別の単語としては、自分の言動を反省することを意味する「自省」、郷里に帰ることや郷里に帰って父母を見舞うことを意味する「帰省」、文章の文字や文句を省略することを意味する「省文」などがあります。
割愛の例文
この言葉がよく使われる場面としては、惜しいと思うものを、思い切って切り捨てたり、手放したりすることを表現したい時などが挙げられます。割愛という言葉は、不要なものを捨てるという意味だと勘違いされやすい言葉です。
実際の割愛という言葉は、文字の通り「愛を割って」手放すことを意味しています。本当は手放したくない、本当は切り捨てたりしたくないものを、仕方なく断ち切ることを「割愛」と表現するものです。
また、公務員が他の自治体などに移籍をしたり、大学の職員が他大学へ移ったりすることを「割愛」と表現したりすることもあります。その際、移籍先は「割愛願い」や「割愛申請書」を提出したりします。
省略の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事を簡単にするために、一部を取り除いたり、不必要な部分を簡略化したりすることを表現したい時などが挙げられます。省略の類語には「間引く」という言葉があります。
省略というのは、割愛とは違って、その物事を省くことに惜しい気持ちを伴いません。その場では不必要だと思われる部分について、簡略化することを省略と表現しています。省略された内容については、後から別の方法で共有されることも多いものです。
省略というのは、その場においては余分である所や、不必要であると判断される所について、一時的に簡略化をするという意味を含んだ言葉であると覚えておくようにしましょう。