似た意味を持つ「心象」(読み方:しんしょう)と「印象」(読み方:いんしょう)と「心証」(読み方:しんしょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「心象」と「印象」と「心証」という言葉は、心に受ける感じという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
心象と印象と心証の違い
心象と印象と心証の意味の違い
心象と印象と心証の違いを分かりやすく言うと、心象は心に浮かぶ感じを表現する時に使い、印象は物や人から受ける感じを表現する時に使い、心証は人だけから受ける感じを表現する時に使うという違いです。
心象と印象と心証の使い方の違い
心象という言葉は、「心象を言葉で表すことができない」「美術の課題は心象風景を描くことだった」などの使い方で、心の中に浮かんだイメージを意味します。
印象という言葉は、「可愛らしい人というのが彼女の第一印象だった」「絵画から切ない印象を受けた」などの使い方で、人間の心に対象が与える感じを意味します。
心証という言葉は、「心証を損なわないように対応する」「その書類に虚偽がないという心証を得た」などの使い方で、人から受ける印象を意味します。
心象と印象と心証の使い分け方
印象と心証は、対象から受けた感じを意味する言葉ですが、心証は人から受けるものを表すのに対して、印象は物や出来事から受けるものも含みます。
また、心象と心証は同じ読み方をしますが、心に何かを思い浮かべる際に対象が必ずしも必要なわけではないのが心象であるのに対して、心証は必ず影響を与える対象が必要になります。
これらが、心象、印象、心証の明確な違いです。
心象の意味
心象とは
心象とは、心の中に描き出される姿や形を意味しています。
「心象が悪い」「心象を損なう」「心象を損ねる」は間違い
間違えやすい言い回しとして、「心象が悪い」「心象を損なう」「心象を損ねる」があります。それぞれ「心証が悪い」「心証を損なう」「心証を損ねる」が正しい日本語となりますので注意しましょう。
心象を使った言葉として、「心象風景」「心象地理」があります。
「心象風景」の意味
一つ目の「心象風景」とは、現実ではなく心の中に思い描いたり、浮かんだり、刻み込まれている風景を指す言葉で、現実にはありえない風景である場合もあります。
芸術世界では、作者の心の奥に無意識に感じているものを形にした、心象風景をテーマにした作品が生み出されることもありました。『銀河鉄道の夜』で有名な宮沢賢治は、『春と修羅』という詩集を「心象スケツチ」としていました。
「心象地理」の意味
二つ目の「心象地理」とは、馴染みの深い空間と、その自分たちの空間の彼方に広がる馴染みのない空間とを心の中で名付けて区別することを指す言葉です。
アメリカの文学研究者であったサイードによって使われた言葉ですが、彼は自著『オリエンタリズム』の中で、西洋にとっての東洋は珍しい体験談などの舞台であり、ヨーロッパ人の頭の中で作り出されたものであることから、心象地理と呼んでいました。
心象の類語
心象の類語・類義語としては、象徴やシンボルを意味する「表象」、心に浮かんでくる具体的な考えを意味する「写象」(読み方:しゃしょう)があります。
印象の意味
印象とは
印象とは、人の心に対象が与える直接的な感じを意味しています。その他にも、強く感じて忘れられないことも意味します。
表現方法は「印象を与える」「印象に残る」「好印象」
「印象を与える」「印象に残る」「好印象」「第一印象」などが、印象を使った一般的な言い回しです。
印象の使い方
印象を使った分かりやすい例としては、「婚活パーティーで出会った女性が地元が同じで好印象を与えることが出来たようだ」「この会社が印象に残るロゴだから覚えやすい」などがあります。
印象を使った言葉として、「印象操作」「印象主義」があります。
「印象操作」の意味
一つ目の「印象操作」とは、相手が抱く自らや第三者への印象を、自分にとって好都合なものになるように情報の出し方や内容を操作することを意味する言葉です。
例えば、飲食店の情報サイトでのレビュー点数が高い場合、そのお店に行ってみたいとい思う人が多くなります。反対に、点数が低い場合は行ってみたいと感じる人は減ります。このように数字の評価を何らかの方法で操作することは印象操作にあたります。
「印象主義」の意味
二つ目の「印象主義」とは、19世紀後半から20世紀初頭にかけてヨーロッパに広まった芸術的な考え方の一つです。自然や事物から受ける感動を忠実に表現しようとするのが特徴で、絵画や彫刻、音楽、文学でこの考え方が見られました。
もとは、パリで行われた芸術運動の名前で、パリの風刺新聞にモネの『印象・日の出』という絵画が取り上げられたことがきっかけで印象派、印象主義という言葉が生まれました。
印象の類語
印象の類語・類義語としては、忘れられない程深く感じることを意味する「感銘」、物事の雰囲気などからそれとなく受ける感じを意味する「感触」、やや漠然とした心身の状態を意味する「気分」、物事に感じて起こる気持ちを意味する「感情」があります。
心証の意味
心証とは
心証とは、人から受ける感じを意味しています。また、心に受ける印象も意味します。
表現方法は「心証を害する」「心証を得る」「心証を損なう」「心証を損ねる」
「心証を害する」「心証を得る」「心証を損なう」「心証を損ねる」などが、心証を使った一般的な言い回しです。
心証の使い方
心証を使った分かりやすい例としては、「社長の心証を害するとこの会社にはいられないから注意が必要だ」「第一印象で心証を損なうことがないように営業を行うのが重要だ」などがあります。
心証を使った言葉として、「心証形成」「心証の雪崩現象」があります。
「心証形成」の意味
一つ目の「心証形成」とは、証拠を調べた結果得た資料を基盤に裁判官の脳内に認識や確信が構成されていく過程を指す言葉です。自由な心証によって、事実についての首長を真実と認めるべきかの判断をすることができる考え方を自由心証主義を言います。
この自由心証主義に対して、複数の証人が同じ事実を証言した場合には事実を認定しなければならないといった考え方を、法定証拠主義と言います。
「心証の雪崩現象」の意味
二つ目の「心証の雪崩現象」とは、一つの強力な証拠や証言に引きずられて、他の証拠も有罪、もしくは無罪の方向に考えを歪めてしまう現象を指します。
心証の類語
心証の類語・類義語としては、物事について心に感じたことや思ったことを意味する「感想」、事に触れて心に感じた事柄を意味する「所感」があります。
心象の例文
この言葉がよく使われる場面としては、心に浮かぶイメージを意味する時などが挙げられます。
例文2の「心象世界」とは、現実に起こりえないことも含む心の中に浮かんだ世界を指す言葉です。
どの心象も、印象や心証に置き換えて使うことはできません。
印象の例文
この言葉がよく使われる場面としては、事物や人から受ける感じを意味する時などが挙げられます。
どの例文の印象も、心象に置き換えて使うことはできません。また、例文1の「好印象」「悪印象」や例文2の「印象的」という言葉は、心証に置き換えて使うことはできません。
心証の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人から受ける感じを意味する時などが挙げられます。
例文1や例文2の心証は、印象とほとんど同じ意味であるため置き換えて使うことができます。
例文3の「心証を得る」は、証拠を見て事実に関する確信を得ることを意味します。ここでいう証拠には証人による証言も含まれているため、人が明示されていなくとも心証という言葉を使うことができます。
また、例文の「心証を害する」「心証が悪い」などは、心象と間違えて使われることが非常に多いですが、置き換えて使うことはできません。
心象と印象と心証どれを使うか迷った場合は、心に浮かぶ姿や形を表す場合は「心象」を、物や人から受ける感じを表す場合は「印象」を、人から受ける感じを表す場合は「心証」を使うと覚えておけば間違いありません。