似た意味を持つ「脚本」(読み方:きゃくほん)と「脚色」(読み方:きゃくしょく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「脚本」と「脚色」という言葉は、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
脚本と脚色の違い
脚本と脚色の意味の違い
脚本と脚色の違いを分かりやすく言うと、脚本とは演劇などの構成やセリフを記した本のこと、脚色とは小説や事件をもとに脚本を作ることという違いです。
脚本と脚色の使い方の違い
一つ目の脚本を使った分かりやすい例としては、「このマンションには有名な脚本家が住んでいる」「文学部の息子は脚本家を目指している」「舞台脚本コンクールに応募した」「ハリウッド映画の脚本が無料公開されている」などがあります。
二つ目の脚色を使った分かりやすい例としては、「このシナリオは映画用に小説を脚色したものです」「自叙伝を脚色したテレビドラマです」「この作品は伝説が脚色されたものである」「事実を脚色するのはやめて下さい」などがあります。
脚本と脚色の使い分け方
脚本と脚色という言葉は、どちらも演劇や映画に関して使われ、混同して使われる傾向がありますが、意味は異なります。
脚本とは、演劇や映画などの仕組みや俳優のせりふなどを記したも本を意味します。一方、脚色とは、演劇や映画などの制作のために、小説や事件などを脚本にすることを意味します。
つまり、物語や小説などの原作をベースにして、演劇や映画などの放送用に本を作る過程を「脚色」といい、その脚色して出来上がった本を「脚本」といいます。
さらに、脚色という言葉には、脚本を作りあげることの意味の他に、事実を誇張して面白く伝えていくのに粉飾をすることの意味も持っています。これらが、脚本と脚色という言葉の違いになります。
脚本と脚色の英語表記の違い
脚本を英語にすると「scenario」「script」となり、例えば上記の「脚本家」を英語にすると「scriptwriter」となります。
一方、脚色を英語にすると「dramatization」「adaptation」となり、例えば上記の「映画用に小説を脚色したもの」を英語にすると「an adaptation of a novel for movie」となります。
脚本の意味
脚本とは
脚本とは、演劇や映画などの仕組み・舞台装置、俳優のセリフ・動作などを記したものを意味しています。
脚本の使い方
脚本を使った分かりやすい例としては、「ドラマの脚本を書く仕事をしています」「あのアニメをドラマ化した脚本は秀逸だ」「ゲームシナリオライターからドラマの脚本家に転身した」「脚本テンプレートを使って書く」などがあります。
その他にも、「ミリオンセラー小説を脚本化する」「アニメの脚本家になりたい」「脚本家になるにはどうしたらよいのだろう」「日本脚本家連盟スクールの資料を取り寄せた」「脚本の書き方講座を受講する」などがあります。
脚本という言葉にある「脚」とは、支えとなるもの、芝居のための下書きという意味があります。脚本とは、劇を上演するために必要な登場人物たちの言葉や行動、人物たちの生きる世界や状況を具体的に文字化した書きもののことです。
脚本家の意味
脚本は小説や事実を脚色して作られたものが多くありますが、脚色したものではなく新たに書き下ろしたオリジナル脚本もあります。このような映画・テレビドラマ・アニメ・漫画・ゲーム・舞台・ラジオドラマなどの脚本を書く職業のことを脚本家と言います。
脚本の類語
脚本の類語・類義語としては、演劇や放送などで演出のもととなるセリフやト書きなどを書いた本を意味する「台本」、場面の構成や人物の動き・せりふなどを書き込んだものを意味する「シナリオ」、演劇の脚本や台本を意味する「戯曲」などがあります。
脚色の意味
脚色とは
脚色とは、小説や事件などを舞台・映画・放送で上演できるように脚本にすることを意味しています。
その他にも、事実をおもしろく伝えるために粉飾を加えることの意味も持っています。
表現方法は「脚色する」「脚色が入る」「脚色を加える」
「脚色する」「脚色が入る」「脚色を加える」などが、脚色を使った一般的な言い回しです。
脚色の使い方
「実話を脚色してドラマ化しました」「映画版の脚色を手がけることになった」「小説の脚色テクニックを教わる」「あの事件を脚色してシナリオにするつもりだ」「脚本賞ではなく脚色賞を受賞した」などの文中で使われている脚色は、「小説や事件などを脚本にすること」の意味で使われています。
一方、「面白く伝えるために脚色を加える」「話したことは多少脚色した部分もあります」「歴史漫画では史実に脚色が入るだろう」「私の話を脚色するのはやめて欲しい」などの文中で使われている脚色は、「事実に粉飾を加えること」の意味で使われています。
脚色の読み方
脚色は「きゃくしょく」と読みます。「あしいろ」と読むと競馬用語になり、レースや調教で走っている馬の脚の運び具合やスピード加減のことになりますので、ご注意ください。
脚色の由来
脚色という言葉は、中国語に由来します。古代中国で「脚色」は、役人になる時に提出する履歴書や身分証明書を言いました。のちに、中国の演劇界で、俳優の役柄や筋書きを「脚色」というようになり、日本でも明治以降この意味で使われるようになりました。
「脚色賞」の意味
アカデミー賞の部門には「脚色賞」「脚本賞」があります。脚色賞とは小説や舞台劇などから起こされた脚本におくられる賞のこと、脚本賞は正式にはオリジナル脚本賞といい、映画のために新しく書かれた脚本におくられる賞のことです。
脚色の類語
脚色の類語・類義語としては、事件や小説などを劇にすることを意味する「劇化」、表面をつくろい飾ったり事実を誇張したりしておもしろくすることを意味する「潤色」、既存の事柄の趣旨を生かして作りかえることを意味する「翻案」などがあります。
脚本の例文
この言葉がよく使われる場面としては、演劇・映画・放送などでせりふやト書などを記したものを表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「脚本テンプレート」とは、脚本を作る際の雛形であり、テキストを流し込むことである程度の形に出来上がるものです。例文2にある「脚本コンクール」とは、財団やテレビ局などが優秀な映画やドラマなどの脚本を募集し、優秀作を作品化したり賞金などを与えるものです。
脚色の例文
この言葉がよく使われる場面としては、小説,事件などを演劇やテレビなどに演出できるよう仕組むこと、事実をおもしろく伝えるために粉飾を加えることを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文4にあるように、脚色を使った言い回しに「脚色を加える」「脚色が入る」などがあります。他にも「脚色を施す」「脚色を入れる」などと言います。
脚本と脚色という言葉は、どちらも映画や演劇で使われる言葉ですが、意味は異なります。どちらの言葉を使うか迷った場合、演劇などの構成やセリフを記した本を表現したい時は「脚本」を、小説や事件などをもとに脚本を作ることを表現したい時は「脚色」を使うようにしましょう。