似た意味を持つ「表題」(読み方:ひょうだい)と「標題」(読み方:ひょうだい)と「掲題」(読み方:けいだい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「表題」と「標題」と「掲題」という言葉は、題名という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
表題と標題と掲題の違い
表題と標題と掲題の意味の違い
表題と標題と掲題の違いを分かりやすく言うと、表題は全体のタイトルに使い、標題は個々の見出しに使い、掲題はメールの件名に使うという違いです。
表題と標題と掲題の使い方の違い
表題という言葉は、「本に書かれている表題を忘れてしまった」「表題に関しましてご意見頂きたく思います」などの使い方で、書物の表紙などに記してある題名を意味します。
標題という言葉は、「標題をつけるのも一苦労だ」「標題音楽の鑑賞は心を豊かにしてくれる」などの使い方で、講演、演劇、芸術作品などの題名を意味します。
掲題という言葉は、「掲題の件につきましてご相談があります」「掲題に関する会議を行います」などの使い方で、題名を掲示することやその題名を意味します。
表題と標題と掲題の使い分け方
本には、名前があり、目次を開くと項目が並んでいるものが多くあります。この本の名前自体を表題と言い、一つ一つの項目を標題を言います。
また、ヴィヴァルディの「春」「夏」「秋」「冬」という4曲の総称である「四季」のような、クラシック曲に見られる作品形態の総称に対して表題を使い、個々の楽曲のタイトルに対して標題を使います。
書物や文書に使われるものが表題、音楽作品に使われるものが標題と区別されていることもありますが、実際にはどちらの言葉も同じ意味を持つため、標題が表題を含んでいることが大きな違いになります。
一方の掲題は、近年メールにて使われ始めた造語で、本文冒頭でメールの題名を確認する際に多く使われています。この使い方は表題でも標題でもできますが、掲題はメール以外で使われることはなく、かしこまった文章で使われることもあまりありません。
これらが、表題、標題、掲題の明確な違いです。
表題の意味
表題とは
表題とは、書物の表紙などに記してある題名を意味しています。
表題を使った言葉として、「表題曲」「表題登記」があります。
「表題曲」の意味
一つ目の「表題曲」とは、アルバムCDのタイトルと同じ名前の曲や、映画やドラマ、アニメなどの主題歌で作品と同じ名前が付けられた楽曲を指す言葉で、タイトルチューンとも呼ばれます。
マンガ作品や小説作品がアニメやドラマ、映画作品にされる際に書き下ろされることが多いですが、反対に楽曲から着想を得て生まれた作品に、その楽曲が使用される場合は表題曲とは言わず、ヒット曲映画化作品と言います。
「表題登記」の意味
二つ目の「表題登記」とは、土地や建物に関する登記を新しく行うことを意味する言葉です。新しくできた建物は、完成時にどんな建物なのか、誰が所有しているのかを最初に登記する必要があります。これを、建物表題登記と言います。
また、建物ではなく、海や河川を埋め立てた際に新しくできた土地を登記する場合は、土地表題登記と言います。
表題の類語
表題の類語・類義語としては、書物などの題目を意味する「題号」、文書などの初めに書いてある題目を意味する「首題」、書物や掛け軸などの表紙に記してある題名を意味する「外題」(読み方:げだい)などがあります。
標題の意味
標題とは
標題とは、講演や演劇、芸術作品などの題名を意味しています。
標題を使った言葉として、「標題紙」「標題音楽」があります。
「標題紙」の意味
一つ目の「標題紙」とは、標題、著者名、出版社や発行年月日が記載されるページを指す言葉です。本の中にあるため、タイトルページとも呼ばれます。
また、論文や随筆などでは、作品の題名や著者名を書く最初のページを指します。ただし、論文の場合は必ずしも標題紙が付けられているわけではありません。
「標題音楽」の意味
二つ目の「標題音楽」とは、内容を示す題名もしくは説明文がつけられ、聴き手に物語的な展開を誘導して想像力に働きかける音楽を意味する言葉です。
そのため、音楽分野における標題は単なる一作品の見出しというわけではなく、作曲者以外には付けることはできないものとして扱われます。14行からなる詩であるソネットを用意した作曲家もおり、聴き手の想像力を補助してくれます。
また、標題音楽と対になるものとして、物語や文学的なものを表現するのではなく、音楽そのものを表現しようとするような絶対音楽も存在します。
標題の類語
標題の類語・類義語としては、歌舞伎狂言や浄瑠璃などの題名を意味する「名題」(読み方:なだい)、題目を意味する「品題」、講演や演説などの題目を意味する「演題」、文章の編や章に付ける題目を意味する「編目」などがあります。
掲題の意味
掲題とは
掲題とは、題名を掲示することやその題名を意味しています。
掲題の使い方
今日、ビジネス上のメールで使われるようになりましたが、多くの辞書には記載がない造語です。使い方は、表題や標題と同じですが、掲題はメールで使われることがほとんどです。
目上の人にも使うことができる言葉ではありますが、そもそも題名に用件を書いた上で、「掲題の件につきまして」などの表現を冒頭に挿入することはメールを送る主旨の省略になるため、失礼にあたるという考え方もあります。
また、造語であることから、公用文書などのかしこまった文書では基本的に使われることはありません。
表現方法は「掲題の件につきまして」「掲題の件について」「掲題に関して」
掲題を使った表現として、「掲題の件につきまして」「掲題の件について」「掲題に関して」「掲題の通り」「掲題件につき」「掲題にもありますように」などがあります。どの表現もビジネス間でのやり取りで多く使われる表現です。
掲題の類語
掲題の類語・類義語としては、目印をつけることを意味する「標記」、文書のタイトルや電子メールの件名を意味する「題記」、タイトルや標記などを意味する「首記」があります。
表題の例文
この言葉がよく使われる場面としては、全体のタイトルを意味する時などが挙げられます。
例文1の「表題役」とは、オペラや演劇、映画などにおいて作品名と同じ名前の役を意味する言葉です。
標題や掲題と比べて使われることの多い言葉ですが、省略するために使っている言葉として認識されているため、目上の人に対して使うのには向いていません。
標題の例文
この言葉がよく使われる場面としては、個々の見出しを意味する時などが挙げられます。
例文1や例文2で使われている標題が、個々の見出しを表している文脈で使われていなければ、表題という言葉に置き換えて使うことができます。
掲題の例文
この言葉がよく使われる場面としては、題名を掲示することやその題名を意味する時などが挙げられます。
例文2の「掲題船」とは、貨物を輸出入したりする船を指す言葉です。船や海に何らかの問題があった場合に大きな見出しで具体的な便の名称が書かれ、本文でどういう状況で遅延、欠航が決まったのかなど詳細が書かれることになります。
表題と標題と掲題どれを使うか迷った場合は、全体のタイトルを表す場合は「表題」を、個々の見出しを表す場合は「標題」を、メールのタイトルを表す場合は「掲題」を使うと覚えておけば間違いありません。