【怨嗟】と【怨恨】と【怨念】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「怨嗟」(読み方:えんさ)と「怨恨」(読み方:えんこん)と「怨念」(読み方:おんねん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「怨嗟」と「怨恨」と「怨念」という言葉は、恨むという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




怨嗟と怨恨と怨念の違い

怨嗟と怨恨と怨念の意味の違い

怨嗟と怨恨と怨念の違いを分かりやすく言うと、怨嗟はうらみ嘆くことを表現する時に使い、怨恨は深く恨むを表現する時に使い、怨念は恨む気持ちを表現する時に使うという違いです。

怨嗟と怨恨と怨念の使い分け方

怨嗟という言葉は、「怨嗟の声が高まるのも無理はない」「失言をした有名人は怨嗟の的になる」などの使い方で、うらみ嘆くことを意味します。怨恨や怨念と違って嘆くという意味もあります。

怨恨という言葉は、「怨恨によってその事件が勃発したらしい」「怨恨を晴らすためならできることは何でもする」などの使い方で、復讐を考えるほどに深くうらむことやその気持ちを意味します。

怨念という言葉は、「商店街の復興を願う一方で新しいスーパーへの怨念を抱く」「今の彼からは怨念のこもった言葉しか聞き出せないだろう」などの使い方で、うらむ気持ちを意味します。

そのため、三つの言葉をより恨む気持ちの強い順に並べると、怨恨>怨念≧怨嗟となります。

また、怨嗟は恨むことという動作を表していますが、怨念は恨む気持ちという感情のみを表しています。怨恨は動作も感情も表すことができますが、復讐が必要なほどの感情でなければ、怨嗟や怨念を使います。これが、怨嗟、怨恨、怨念の明確な違いです。

怨嗟の意味

怨嗟とは

怨嗟とは、恨み嘆くことを意味しています。

怨嗟の読み方

怨嗟とは「えんさ」という読み方をしますが、「おんさ」という読み方はしません。

表現方法は「怨嗟の声」「怨嗟の念」「怨嗟のまなざし」

怨嗟を使った表現として、「怨嗟の声」「怨嗟の念」「怨嗟のまなざし」などがあります。怨嗟という言葉自体は恨む気持ちを表すことには使えません。

そのため、念といった気持ちを意味する言葉と共に使うか、声やまなざしといった感情を伝えるような場所と共に怨嗟を使うことで、恨むことではなく、恨む気持ちを意味するようになります。

怨嗟の使い方

怨嗟を使った分かりやすい例としては、「あまりのブラック企業っぷりに退職者は皆怨嗟の声を上げて去って行った」「彼女はふとした瞬間に怨嗟の念が宿った目つきをすることがある」「隣の芝生は青く見られるようで羨望と怨嗟のまなざしで周りから見られる」などがあります。

怨嗟の対義語

怨嗟の対義語・反対語としては、ありがたいと思う気持ちを表すことを意味する「感謝」があります。

怨嗟の類語

怨嗟の類語・類義語としては、悲しみ憤ることを意味する「悲憤」、ひどく怒ることを意味する「憤激」、言うことや他に与える批評が極めて手厳しい様子を意味する「辛辣」、忘れられないほどの恨みを意味する「遺恨」などがあります。

怨恨の意味

怨恨とは

怨恨とは、恨むことを意味しています。

怨恨は、フランス語でルサンチマンといい、主に弱者が強者に対して憤りや怨恨、憎悪といった感情を持つことを指します。

また、哲学上の概念でもあります。1960年代中ごろからルサンチマン概念を論じていたジラールは、乗り越えることのできない理想のモデルに対して誰もが抱くような単なる嫉妬心であるとしていました。

表現方法は「怨恨の念」「怨恨の線」「怨恨の情」

「怨恨の念」「怨恨の線」「怨恨の情」などが、怨恨を使った一般的な言い回しです。

怨恨の使い方

怨恨を使った分かりやすい例としては、「不正を働いた社員に対して会社は怨恨の念を隠しきれない」「この事件については怨恨の線で捜査を進めている」「誰にも向けることが出来ない怨恨の情を昔から持っている」などがあります。

「怨恨祈願」の意味

怨恨を使った言葉として、「怨恨祈願」があります。これは、ひどく恨む気持ちから復讐が上手くいくようといった願いを神社に祈願することを指します。

神社では心願成就祈祷といって、どんな願いや希望も成就するよう祈祷をしてくれます。ただし、悪意のあるような、怨恨を孕むような他人に害をもたらす願いは後々自らにかえってくるとして祈願してはいけません。

怨恨の対義語

怨恨の対義語・反対語としては、報いなければならない義理のある恩を意味する「恩義」、恵みや慈しみを意味する「恩愛」があります。

怨恨の類語

怨恨の類語・類義語としては、個人的なうらみを意味する「私怨」、外へ出さずに心の中で押さえている怒りやうらみを意味する「鬱憤」、酷く恨み憎むことを意味する「怨毒」(読み方:えんどく)、ひどく怒ることを意味する「憤怒」などがあります。

怨念の意味

怨念とは

怨念とは、うらみのこもった思いを意味しています。

怨念の読み方

怨念は「おんねん」という読み方をしますが、「えんねん」という読み方はしません。

怨の「おん」という読み方は呉音といって漢字の音読みと呼ばれるもののなかで最も古い読み方です。一方、怨の「えん」という読み方は漢音といって最も中国語の発音に近い読み方です。

また、呉音は仏教のような宗教に関する用語に多く使われている読み方でもあるため、「怨念」や「怨霊」といった霊的であったり宗教的な話題に出てくる「怨」は「おん」と読むことが多いとされています。

表現方法は「怨念を抱く」「怨念がこもる」「怨念を晴らす」

怨念を使った言葉として、「怨念を抱く」「怨念がこもる」「怨念を晴らす」などがあります。

怨念の使い方

日常生活で使われることはあまりない言葉ではありますが、例えばミステリのような文学作品では犯人が犠牲者に対して持ち合わせる感情として使われます。

また、ホラー作品には、強い怨念を残して亡くなった幽霊が呪いを人々に伝播させていくといった内容の映画『呪怨』があり、ホラー映画や小説などでも怨念がテーマとして扱われています。

怨念の類語

怨念の類語・類義語としては、うらんで敵とすることを意味する「怨讐」、他人を傷つけようという気持ちを意味する「害意」、悪事をたくらむ心を意味する「悪念」、心がねじ曲がって悪いことを意味する「邪悪」などがあります。

怨嗟の例文

1.その業界に全く興味のない有名人がメディアで好き勝手言及していたことで市民からの怨嗟の声が止まらない。
2.今回の討論で彼は怨嗟の念を込めたような声色をしていた時があり、恐れを感じた。
3.絶対王政時代のフランスでは王室が怨嗟の対象になったことで革命が起きることとなった。
4.ツイッターとは、リサーチしてみればみるほどつぶやきというのには程遠い怨嗟の声が渦巻いているものなのだ。
5.私にとって政治とは平和的に行われるものであり、民衆の怨嗟の情念でもって行われるべきではないと信じている。
6.会社の上司から処世術とは人々の怨嗟の対象にならないためのテクニックのことを言うのだと教わった。

この言葉がよく使われる場面としては、うらみ嘆くことを意味する時などが挙げられます。

例文2の「怨嗟の念」という言葉は、嘆くことを表す怨嗟にとっての感情という意味を表す方法です。そのため、怨恨や怨念という言葉に置き換えて使うことができます。

怨恨の例文

1.後日メディアで取り上げられていたのを見て知ったが、先日の事件は怨恨の線が強いと言われている。
2.怨恨の情を持つことになるような出来事はめったに起こるものではない。
3.最近読み始めた本の主人公の怨恨の描写が非常に巧みであるからか、心に訴えかけられ震えてしまう程であった。
4.被害者の金品が手つかずで残されていた事や傷の多さから考えて、犯行動機は怨恨と見られている。
5.いじめに遭っていた彼女は、いじめを行う者だけなくいじめを黙認していた教師たちにも怨恨の情を向けていた。
6.就職氷河期世代が受けた社会の不当な仕打ちへの怨恨はとても根深いものがあり、そう簡単には消えないだろう。

この言葉がよく使われる場面としては、復讐を考えてしまう程恨むことやその感情を意味する時などが挙げられます。

例文2の「怨恨の情」の怨恨は、怨嗟と同じように動作を表しているため、「怨嗟の情」と置き換えて使うことができますが、例文1や例文3には置き換えて使うことはできません。

怨念の例文

1.彼女は私が持っているものが羨ましいのか、常日頃から怨念にとらわれているような眼差しで見られる。
2.今までの理不尽なやり方に対する怨念を晴らすために、
3.怨念を抱く気持ちがあまりにも強いと、怨霊となってしまう話は聞いたことがある。
4.彼は経営者に抜擢されることで、改革について敵対派閥からさんざん批判をされてきた分の怨念を晴らすと息巻いていた。
5.男が女を一度でも裏切るとどんな理屈でも説得できないし、その怨念は想像を越えるほど恐ろしいものなのだ。
6.感謝は持つのも持たれるのもいいものだが、怨念は持つのも持たれるのも決していいものじゃないのだから水に流すべきだ。

この言葉がよく使われる場面としては、対象を恨む気持ちを意味する時などが挙げられます。

復讐するほどの恨みであれば、例文中の怨念という言葉を怨恨に置き換えて使うことができますが、怨嗟に置き換えて使うことはできません。

怨嗟と怨恨と怨念どれを使うか迷った場合は、うらみ嘆くことを表す場合は「怨嗟」を、深く恨むことを表す場合は「怨恨」を、恨む気持ちを表す場合は「怨念」を使うと覚えておけば間違いありません。

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