似た意味を持つ「残滓」(読み方:ざんし)と「残渣」(読み方:ざんさ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「残滓」と「残渣」という言葉は、どちらも残りかすを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
残滓と残渣の違い
残滓と残渣の意味の違い
残滓と残渣の違いを分かりやすく言うと、残滓には比喩的表現があり、残渣には比喩的表現はないという違いです。
残滓と残渣の使い方の違い
一つ目の残滓を使った分かりやすい例としては、「製造過程で発生する蒸留残滓の活用方法」「花火の残滓が目に入る大怪我だった」「NASAが巨大流星の残滓を回収した」「令和に移っても昭和の残滓を引きずる」などがあります。
二つ目の残渣を使った分かりやすい例としては、「この牧場では食品残渣飼料を使っています」「収穫にともなう植物残渣を処分する」「火災で残された残渣を分析する」「蒸留工程の残渣油を利用します」などがあります。
残滓と残渣の使い分け方
残滓と残渣という言葉は、どちらも残りかすの意味を持つ言葉であり、この意味ではどちらの言葉を使っても問題ありません。上記の例文の「蒸留残滓」とは、蒸留した時に出来る残りかすのことであり、残滓を残渣に置き換えることができます。
ところが残滓という言葉は、比喩的表現にも用いられ、物事の名残や何かがかすかに残っていることの意味も持ちます。上記の例文の「昭和の残滓を引きずる」とは、この意味で用いられており、残滓を残渣に置き換えることはできません。これが、残滓と残渣という言葉の明確な違いになります。
「残滓が残る」と「残渣が残る」は二重表現で誤り
なお、「残滓が残る」「残渣が残る」という表現は「頭痛が痛い」のような二重表現になり、誤った言い回しになるので注意しましょう。
残滓と残渣の英語表記の違い
残滓も残渣も英語にすると「residue」「residuum」「remnants」となり、例えば上記の「蒸留残滓」を英語にすると「distillation residue」となります。
残滓の意味
残滓とは
残滓とは、残りかすを意味しています。
残滓の使い方
残滓を使った分かりやすい例としては、「グラスの残滓を取り除く」「石炭採掘時に出る残滓を積み上げる」「茶碗に米粒の残滓がこびり付いてしまう」「水産系残滓処理の課題を洗い出す」などがあります。
その他にも、「封建制の残滓を除去し民主制へと転換する」「悪夢の残滓で嫌な気分だ」「差別の残滓を容認することは出来ない」「思い出という残滓の念に苦しむ」「旧制度の残滓とも言える法律だ」などがあります。
残滓の読み方
残滓の読み方は「ざんし」ですが、慣用読みで「ざんさい」とも読まれています。
残滓という言葉の「滓」は、訓読みで「かす」「おり」と読み、液体をこしたあとに残ったりや必要な部分を取り去ったあとの残りを意味します。残滓とは、残りかすのことであり、コーヒーを抽出した後の残りかすなどを表します。
残滓の言い換えは名残
残滓という言葉は、小説などの文学作品では比喩的表現として使われています。「物事の名残」のような意味で用いられ、上記の例文の「封建制の残滓」「悪夢の残滓」は「封建制の名残」「悪夢の名残」と言い換えることができます。
「残滓に堪えない」は誤り
残滓を用いた誤った言い回しには「残滓に堪えない」があります。正しくは「慚愧(読み方:ざんき)に堪えない」であり、自分の行いについて深く反省することを意味します。
残滓の類語
残滓の類語・類義語としては、なくならずに残っていることを意味する「残留」、同類の多くがなくなったあとも残っていることを意味する「残存」、 必要なものを取ったあとに残る価値のないものを意味する「残り滓」などがあります。
残渣の意味
残渣とは
残渣とは、ろ過したあとなどに残ったかすを意味しています。
残渣の使い方
残渣を使った分かりやすい例としては、「食品残渣を粉砕する機械を設置する」「火災残渣の処分に経費がかかる」「植物残渣は微生物の餌になります」「水分を含んでいる残渣物を乾燥させる」などがあります。
その他にも、「胃の調子が悪い時は低残渣食にしましょう」「火災残渣物の油性反応分析を行う」「介護職員が口腔内から残渣物を掻き出す」「コーヒー抽出残渣を植物生育に役立てる」「グラスに残渣が付着する」などがあります。
残渣という言葉の「渣」とは、おりやかす、沈殿物を表します。残渣とは、残りかすや、溶解や瀘過をしたあとに残った不溶物のことです。
「食品残渣」の意味
残渣を用いた日本語には「食品残渣」があり、食品関連事業所から出る食品由来のごみを意味します。飲食店の調理残渣のほか、客の食べ残しや売れ残り、消費期限切れの食品なども指す言葉です。
「残渣分析」は誤り
残渣を用いた誤った言い回しには「残渣分析」があります。正しくは「残差分析」であり、カイ二乗検定において有意な差が見られた場合に、どのセルが元となっているのかを特定するための分析でのことです。
残渣の類語
残渣の類語・類義語としては、あとに残っている物を意味する「残り物」、必要な部分を取り去ったあとの残りを意味する「かす」、不必要になった物や食べ残した物を意味する「余り物」などがあります。
残滓の例文
この言葉がよく使われる場面としては、あとに残ったかすを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3にある残滓は、目に見える物質的な「残りかす」の意味で使われています。例文4や例文5の残滓は、比喩的表現で、物事があとに影響がなおも残っていることを表しています。
残渣の例文
この言葉がよく使われる場面としては、溶解や瀘過をした時などのあとに残った不溶物を表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「残渣油」とは、蒸留工程の精留塔の底部から抜き出される油のことで、残油、釜残油とも呼ばれるものです。例文5にある「低残渣食」とは、消化吸収されやすい食事のことです。食物繊維や脂肪、刺激物が少ない食材で作られています。
残滓と残渣という言葉は、どちらも残りかすを意味し、この意味ではどちらの言葉を使っても構いません。ただし、物事の名残という比喩的表現をしたい時には「残渣」を使うようにしましょう。