似た意味を持つ「青田買い」(読み方:あおたがい)と「青田刈り」(読み方:あおたがり)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「青田買い」と「青田刈り」という言葉は、どちらも先を見越して手を打つという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「青田買い」と「青田刈り」の違い
「青田買い」と「青田刈り」の意味の違い
青田買いと青田刈りの違いを分かりやすく言うと、青田買いは将来の価値を見込んで先に確保をしておくことで、青田刈りはその物の価値は関係なく、実る前に根こそぎ刈り取ることであるという違いです。
「青田買い」は農業の現場で使用された言葉
青田買いというのは、本来は農業の現場で使用される言葉であり、稲の収穫前に田んぼの様子を見て、その田の収穫量を良いものであると見極めて、先買いすることを意味しています。
そのことから、価値のあるものを、先に見極めて他者に取られる前に確保しておくことを「青田買い」と表現するようになりました。農業だけでなく、近年では企業が人材を確保する際や、不動産業界においても、この言葉は使用されます。
企業が卒業前の優秀な人材を早めに確保することや、不動産会社が、今後価値の上がりそうな土地にある建築物について買い取ることなどの先物取引のことを「青田買い」と表現します。
「青田刈り」は戦国時代の戦術で使用された言葉
対する「青田刈り」については、本来は戦国時代の戦術のひとつでした。敵方の兵に食料を調達させないようにするために、まだ稲が青いうちに刈り取ってしまうことを「青田刈り」と表現します。
これは、敵の食糧補給を邪魔して、食糧難に陥れることで打ち負かす攻め方である、兵糧攻めの一種です。しかし、近年では、青田刈りという言葉を青田買いという言葉と混同して使用している人が多くいます。
そのため、辞書などでも青田刈りの項目に「青田買いと同じ」と記載されることが多くなりました。使い方としては、企業などが早い段階から人材を確保するという意味で使用されることが多いものです。
ただし、青田買いと違い、青田刈りの場合には、その物の価値については考えないものとされています。能力の有無や価値の有無は考慮に入れず、何でも良いから刈り取ることを「青田刈り」と表現します。
「青田買い」と「青田刈り」の使い分け方
青田買いについては、価値のあるものを先取りするというプラスの意味で使用されることが多いもので、青田刈りについては、価値の有無は関係なくただ先取りするという意味で使用されているものであると覚えておくようにしましょう。
「青田買い」の意味
「青田買い」とは
青田買いとは、稲の収穫前に田の様子を見て、その田の収穫量を見越して先買いをすることを意味しています。青田売買という言い方でも表現されるもので、これは先物取引の一種です。
「青田買い」の由来
青田買いというのは、まだ田んぼが青い状態の時、つまり、まだ収穫時期ではない時に、収穫量を予測して、先に買ってしまうことを意味している言葉です。本来は、このように農業の場で使用される言葉でした。
「青田買い」の就職採用シーンでの意味
近年では、企業が人材確保のために、卒業予定の学生の採用を早くから内定することについても、青田買いという表現で示されることがあります。稲の先買いと同じで、他の企業に取られる前に、優秀な人材を確保するという意味を持ちます。
これは、卒業前の学生をまだ実る前の稲、能力を収穫量に例えて表現している言葉です。また、不動産業界でも、新築未完成の建物を先に購入しておくことを青田買いと表現したりします。
このように、今現在の状況ではなく、将来性に期待をして、その対象を確保しておくことを「青田買い」「青田売買」と表現するのだと覚えておくようにしましょう。
表現方法は「青田買いされた」「青田買いする」「青田買いすべき男」
「青田買いされた」「青田買いする」「青田買いすべき男」などが、青田買いを使った一般的な言い回しです。
青田買いの使い方
青田買いを使った分かりやすい例としては、「インターンで来ている優秀な学生が他社に青田買いされた」「高校野球のスカウトは優秀な球児を中学2年の時に青田買いする」「青田買いすべき男だが中小企業である我が社に入社してくれるだろうか」などがあります。
「青田買い」の類語
青田買いと同じような表現として「黒田売買」「白田売買」という言葉もあります。この黒田売買というのは、稲の植え付け前、まだ土が見えていて田が黒いうちに収穫を予想して、米を売買することを意味しています。
白田売買というのは、田にまだ雪が残っているうちに、その年の収穫量を予測して米を売買することを意味しています。これらも併せて覚えておくと良いでしょう。
青田買いの「買」という字を使った別の単語としては、買い取ることや買いおさえることを意味する「買収」、買うことや買い入れることを意味する「購買」、ものを買わないことを意味する「不買」などがあります。
「青田刈り」の意味
「青田刈り」とは
青田刈りとは、敵方に食料を調達させないために、まだ稲が未熟なうちに刈り取ることを意味しています。また、近年では、青田買いという言葉と混同され、先物買いという意味で使用されていることもありますが、これは間違った使い方です。
「青田刈り」の由来
青田刈りというのは、本来は、戦をしている最中、敵方に食料を調達させないようにするために、まだ稲が青いうちに刈り取って、収穫をさせないようにするという戦国時代の戦術のひとつでした。
そこから転じて、企業が採用活動に当てはめ、他の企業に取られる前に、人材をその優劣を問わずに早いうちから採用してしまうことを指す言葉としても使用されるようになりました。
「青田刈り」の就職採用シーンでの意味
近年では青田買いと青田刈りは混同される傾向にあり、文化庁の調べによると、青田買いのことを青田刈りという言葉で使用している人は、調査人数の半数ほどを占める割合となりました。
そのことから、辞書などでも、青田刈りの項目に「企業が人材確保のために、卒業予定の人材を早くから採用すること」という意味が加えられる傾向にあります。
青田買いの場合は、優秀な人材の確保という意味になりますが、青田刈りの場合は、人材の優劣は関係なく、誰でも良いから確保をするという意味になるので、その違いについては注意が必要です。
表現方法は「青田刈りされた」「青田刈りする」「青田刈りすべき男」
「青田刈りされた」「青田刈りする」「青田刈りすべき男」などが、青田刈りを使った一般的な言い回しです。
「青田刈り」の使い方
青田刈りを使った分かりやすい例としては、「青田刈りされる前により早い段階から優秀なインターン生を確保する必要がある」「青田刈りでの採用を断られる可能性を減らすため、弊社では長期インターン生を募集している」などがあります。
「青田刈り」の類語
青田刈りの「刈」という字を使った別の単語としては、稲を刈り取ったあとの田を意味する「刈田」、山野の草や柴を刈り、田に緑肥として敷き込むことを意味する「刈敷」、稲や麦、草などを刈る人を意味する「刈手」などがあります。
「青田買い」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、稲の収穫前にその田の収穫量を見越して、先買いをしたり、将来性を見込んで何かを確保しておくことなどを表現したい時などが挙げられます。
この青田買いという言葉は、本来は農業現場で使用される言葉でした。しかし、近年では、将来を見込んで確保するという意味で、新入社員をいち早く獲得したり、不動産業界で、価値のありそうな土地を確保したりする場合にも使用されるようになりました。
青田買いの他にも、青田売買という表現がされることもあります。また、青田買いよりも更に早い段階で確保することを、黒田売買、そのさらに前の段階で確保することを白田売買と表現したりもします。
「青田刈り」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、敵方に食料を調達させないために、まだ稲が未熟なうちに刈り取ってしまうことなどを表現したい時などが挙げられます。近年では、青田買いという言葉と混同して使用されがちな言葉でもあります。
文化庁の調べでも、青田買いと青田刈りを間違えて使用している人の数は半数ほどにもなるので、辞書でも青田買いと同じような意味を持つものとして記載がされるようになってきました。
しかし、本来は、青田買いとは違い、青田刈りというのは、物の良し悪しを吟味せずに確保すること、全て刈り取ることを意味しているので、あまり良い意味であるとは言えません。
青田買いというのは「買う」という言葉にあるように、価値のあるものを買っておくという意味です。対する青田刈りというのは「刈り取ってしまう」という意味であり、マイナスの意味を含む言葉であると覚えておくようにしましょう。