似た意味を持つ「浅慮」(読み方:せんりょ)と「短慮」(読み方:たんりょ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「浅慮」と「短慮」という言葉は、浅はかな考えという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
浅慮と短慮の違い
浅慮と短慮の意味の違い
浅慮と短慮の違いを分かりやすく言うと、浅慮は考えが浅いことを表現する時のみに使い、短慮はそれ以外を表現する時にも使うという違いです。
「浅慮」も「短慮」も浅はかな考えを意味する言葉ですが、後者の短慮には、気の短いことやせっかちな様子を表す意味もあります。これが浅慮と短慮の明確な違いです。
思慮などが浅いことを意味する「浅薄」(読み方:せんぱく)という言葉は、浅慮と短慮の類義語に当たります。
そのため、浅慮と短慮と違って知識や見識などが浅い様子を表す意味も含まれているので、「浅薄な学識」「見識が浅薄だ」という例文の浅薄を浅慮と短慮に置き換えることはできません。
浅慮と短慮の英語表記の違い
浅慮を英語にすると「thoughtlessness」「imprudence」「indiscretion」となり、例えば「自分の浅慮を後悔した」を英語にすると「repented his thoughtlessness」となります。
一方、短慮を英語にすると「imprudence」「rashness」「hot temper」となり、例えば「一徹短慮な人だ」を英語にすると「He is stubborn and hot-tempered」となります。
浅慮の意味
浅慮とは
浅慮とは、考えの浅いことや浅はかな考えを意味しています。
表現方法は「浅慮でした」「浅慮な人」
「浅慮でした」「浅慮な人」などが、浅慮を使った一般的な表現方法です。
浅慮の読み方
浅慮という言葉は、日常会話で使われる言葉ではないもののビジネス間では謝罪の言葉の中で使われることがある言葉です。読み方は「あさりょ」などではなく、「せんりょ」です。
浅慮を使った言葉として「浅慮遠望」と「集団浅慮」があります。
四字熟語「浅慮遠望」の意味
一つ目の「浅慮遠望」(読み方:せんりょえんぼう)とは、浅はかな考えを持っていたり、大して深く考えてもいないのに、先のことを見据えていることを意味する四字熟語です。
この四字熟語の対義語・反対語である「深謀遠慮」と「深慮遠謀」は先のことまでしっかりと考えていることを意味する四字熟語です。
四字熟語「集団浅慮」の意味
二つ目の「集団浅慮」とは、社会心理学者ジャニスによって提唱された言葉で、集団思考という呼ばれ方が多くなされ、グループシンクともいいます。
集団で会議を行う場合、強い結束がマイナス方向に作用して、個人で意思決定を行う場合よりも非合理的な決定を行ってしまう傾向を「集団浅慮」といいます。ことわざの「三人寄れば文殊の知恵」と逆の事象です。
例えば、無理な計画を打ち立てたことに異議を唱えたにも関わらず、上司の決定によりその計画が進められることとなり、失敗して取引先に迷惑を掛けることとなった場合、集団浅慮故の失敗と言えます。
このように、支配的なリーダーがいて意見が通らなかったり、自分たちは失敗するはずがないと思い込んでいたり、場の空気に流されたり、自分たちに都合の悪い情報を遮断することで集団浅慮につながります。
「浅慮の一失」は誤字
浅慮の誤った使い方として「浅慮の一失」があります。本来は「千慮の一失」(読み方:せんりょのいっしつ)と表記します。どんなに賢い人であったとしても、多くの考えの中には一つくらい間違いや思い違いがあることを意味する言葉で、浅はかという意味はどこにもありません。
浅慮の対義語
浅慮の対義語・反対語としては、深く考えをめぐらすことや深い考えを意味する「深慮」、深く考えて立てた計画を意味する「深謀」(読み方:しんぼう)、色々なことを考えに入れて念入りに検討することを意味する「熟慮」があります。
浅慮の類語
浅慮の類語・類義語としては、しっかりとした心構えができていない考えを意味する「甘い考え」、物事の本質や筋道を深く考えない様子を意味する「短絡的」、いい加減な様子を意味する「安直」などがあります。
浅慮の浅の字を使った別の言葉としては、浅い海や水深約200mまでの海を意味する「浅海」、深いことと浅いことや色の濃淡を意味する「深浅」(読み方:しんせん)、あさはかな見識や考えを意味する「浅見」(読み方:せんけん)などがあります。
短慮の意味
短慮とは
短慮とは、考えが浅はかなことや思慮が足りない様子を意味しています。その他にも、気の短いことや短気な様子も意味します。
短慮を使った言葉として、「軽率短慮」「一徹短慮」「短慮功を成さず」があります。
四字熟語「軽率短慮」の意味
一つ目の「軽率短慮」とは、よく考えないで軽はずみに物事を決めたり、行動したりすることを意味する四字熟語で、「短慮軽率」と表記することもあります。
この四字熟語の類義語として、考えや行動などが軽はずみで浮ついている様子を意味する「軽佻浮薄」(読み方:けいちょうふはく)という言葉があります。
また、深く考えをめぐらし、のちの遠い先のことまで見通した綿密な計画を立てることを意味する「深謀遠慮」(読み方:しんぼうえんりょ)は、「軽率短慮」の対義語にあたります。
四字熟語「一徹短慮」の意味
二つ目の「一徹短慮」(読み方:いってつたんりょ)とは、浅い考えながら頑なに思い込むことを意味する四字熟語です。
かたくなで一度決めたらあくまでも自分の考えや態度を変えようとしない様子を意味する「頑固一徹」、負け惜しみの強いことを意味する「漱石枕流」(読み方:そうせきちんりゅう)などが一徹短慮の類語・類義語にあたります。
「短慮功を成さず」の意味
三つ目の「短慮功を成さず」とは、短慮の者は事を終わりまでやり遂げることができないという意味を持つことわざです。
短慮の対義語
短慮の対義語・反対語としては、読みの深い考えを意味する「深慮」、よく考えをめぐらすことを意味する「熟慮」があります。
短慮の類語
短慮の類語・類義語としては、ちょっとした刺激にもすぐ怒る性質を意味する「癇性(読み方:かんしょう)、気が短くせっかちな様子を意味する「性急」、苛立ち急ぐことやせっかちに事を運ぼうとすることを意味する「躁急」(読み方:そうきゅう)があります。
短慮の短の字を使った別の言葉としては、寿命の短いことや若くして死ぬことを意味する「短命」、見通しのない意見を意味する「短見」(読み方:たんけん)、あさはかであることや未熟であることを意味する「浅短」(読み方:せんたん)などがあります。
浅慮の例文
この言葉がよく使われる場面としては、浅はかな考えを意味する時などが挙げられます。
例文2の「浅慮の致すところです」や「浅慮を恥じるばかりです」のような使い方はビジネスにおいて使われる謝罪の言葉です。
例文3の「集団的浅慮」は集団浅慮、集団思考やグループシンクと同じで、集団で物事の意思決定を行うと個人で意思決定を行うよりも失敗する危険性があるという考え方です。
短慮の例文
この言葉がよく使われる場面としては、浅はかな言動や気が短いことを意味する時などが挙げられます。
例文2の「短慮性急」の性急は、落ち着きがなく気短な様子を表す言葉です。そのため、短慮と性急、同じせっかちの意味を持つ言葉が二語並んでいます。
例文1と例文4の短慮は浅はかな言動を示し、例文2、例文3、例文5の短慮は短気な様子を示していますので、文脈に応じて判断するようにしてください。
浅慮と短慮どちらを使うか迷った場合は、考えが浅はかな様子のみを表す場合には「浅慮」を、浅はかな様子だけでなく気の短さも表す場合は「短慮」を使うと覚えておけば間違いありません。