似た意味を持つ「固辞」(読み方:こじ)と「辞退」(読み方:じたい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「固辞」と「辞退」という言葉は、どちらも依頼に応じないことを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
固辞と辞退の違い
固辞と辞退の意味の違い
固辞と辞退の違いを分かりやすく言うと、辞退よりも固辞の方が、応じないという意志が強いという違いです。
固辞と辞退の使い方の違い
一つ目の固辞を使った分かりやすい例としては、「彼は役員の職を固辞するつもりだ」「町長選の出馬を固辞する考えを示した」「怪しいビジネス勧誘は頑なに固辞すること」「再三の申し出を固辞することができなかった」「謝礼を固辞する」などがあります。
二つ目の辞退を使った分かりやすい例としては、「取引先からの提案を辞退することになった」「面接辞退をメールで申し出る」「家庭の事情によりメンバー入りを辞退します」「入札を辞退する場合は、辞退届を提出してください」などがあります。
固辞と辞退の使い分け方
固辞と辞退という言葉は、周囲からの依頼や勧めを引き受けずにお断りする時に使われる言葉ですが、二つの言葉には違いがあります。
辞退とは、勧められたことを遠慮して断ることを意味し、特に権利や地位などが自分に相応しくないとしてお断りする時に使われる言葉です。一方、固辞とは、強い意志をもって辞退することを意味し、お断りする気持ちが特に強い場合に使われています。
固辞と辞退という言葉を比べると、固辞の方が強い意志があり、頑なな態度を表します。固辞は、「絶対にやらない」と強固な姿勢で辞退すること、と覚えておけば良いでしょう。
固辞と辞退の英語表記の違い
固辞を英語にすると「firm refusal」「decline firmly」となり、例えば上記の「職を固辞する」を英語にすると「firmly decline the post 」となります。
一方、辞退を英語にすると「refusal」「nonacceptance」「declining」となり、例えば上記の「提案を辞退する」を英語にすると「refuse the suggestion」となります。
固辞の意味
固辞とは
固辞とは、かたく辞退することを意味しています。
表現方法は「固辞する」「頑なに固辞」「断固固辞」
「固辞する」「頑なに固辞」「断固固辞」などが、固辞を使った一般的な言い回しです。
固辞の使い方
固辞を使った分かりやすい例としては、「彼女は絶対に嫌と固辞した」「現時点での入会は固辞する姿勢を見せた」「強い意志をもって勧誘を固辞する」「社会的儀礼の範囲を超えた接待は固辞します」などがあります。
その他にも、「就任を要請されても彼は固辞する意向である」「社長は会長になることを固辞された」「忙しいので、その打診は固辞します」「出馬要請を固辞する意志を伝えた」「PCR検査を固辞する渡航者もいるそうだ」などがあります。
固辞とは、きっぱり断ることや、固く辞退することを意味します。たとえ自分にとって光栄なことや、利益になるような依頼であっても、引き受けずに強い意志を持って拒否する時に使われる言葉です。
固辞の語源
固辞という言葉の「固」という漢字は、がっちり固まって動かないこと、頑なであることを表します。「固執」「頑固」「断固」などの熟語においても、周囲の状況や意見に左右されず、態度がはっきりとしているさまの意を含んでいます。
固辞の対義語
固辞の対義語・反対語としては、依頼や申し入れを快く承諾することを意味する「快諾」、やむをえないものとしてあまんじて受け入れることを意味する「甘受」などがあります。
固辞の類語
固辞の類語・類義語としては、相手の申し入れを断ることを意味する「謝絶」、相手の頼みや要求をこばむことを意味する「拒絶」、相手の申し出に対し拒絶することを意味する「断り」などがあります。
辞退の意味
辞退とは
辞退とは、勧められたことを遠慮して断ること、自分の既得の地位や権利などを遠慮して放棄することを意味しています。
表現方法は「辞退する」「辞退の申し出」「辞退させていただきます」
「辞退する」「辞退の申し出」「辞退させていただきます」などが、辞退を使った一般的な言い回しです。
辞退の使い方
辞退を使った分かりやすい例としては、「入学を辞退する場合は速やかにお知らせください」「芥川賞の受賞を辞退した」「事情により大会の出場を辞退したい」「一身上の都合により内定を辞退させていただきます」などがあります。
その他にも、「メールで選考辞退の旨を伝える」「入札辞退届を提出しました」「受賞者が叙勲を辞退することもある」「御香典の儀はご辞退申し上げます」「今回はご辞退させていただきたく存じます」などがあります。
辞退の語源
辞退という言葉は、自分にとって光栄なことや利益になる勧めや依頼などに、なんらかの理由で応じないことを意味します。また、遠慮して権利や地位の授与を受けないことも表します。辞退の「辞」は辞めることや断ること、「退」は後ろに下がることや、身を置いていた地位から去ることを表します。
「入札辞退」の意味
辞退を用いた日本語には「入札辞退」があります。国や官公庁あるいは自治体が実施する入札案件について、指名業者などの入札参加業者が参加する権利を自ら放棄することを意味します。上記の「入札辞退届」とは、入札辞退する際に発注機関へ提出する書類のことです。
辞退の対義語
辞退の対義語・反対語としては、相手からの提案や申し入れなどを受け入れることを意味する「受諾」、相手の意見・希望・要求などを聞いて受け入れることを意味する「承諾」、相手の言うことを承知してそれに従うことを意味する「承服」などがあります。
辞退の類語
辞退の類語・類義語としては、今まで自分がついていた任務を辞退することを意味する「辞任」、頼まれても断ることを意味する「願い下げ」、要求や提案を聞き入れないで断ることを意味する「拒絶」、ある場所から引き下がることを意味する「遠慮」などがあります。
固辞の例文
この言葉がよく使われる場面としては、断固としてことわること、固く辞退することを表現したい時などが挙げられます。
例文3の「固辞された」は受け身の表現ですが、例文4や5にある「固辞される」とは、固辞することの敬語表現です。例文4ではご遺族が強い意志をもって断る行為を敬って表し、例文5では見知らぬ人が名前を告げることを固く拒否することを敬った表現にしています。
辞退の例文
この言葉がよく使われる場面としては、自分には相応しくないとしてことわること、勧められたことを遠慮して断ることを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2にある「内定辞退」とは、企業が内定を出したあとに応募者側から辞退することをいいます。内定辞退に至る背景には、他の企業に入社することの他に、選考プロセスの中で感じる不安や不満などが挙げられます。
固辞と辞退という言葉は、どちらも依頼や勧めなどに応じないことを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、より強い意志で応じないことを表現をしたい時は「固辞」を使うようにしましょう。