似た意味を持つ「慰留」(読み方:いりゅう)と「残留」(読み方:ざんりゅう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「慰留」と「残留」という言葉は、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
慰留と残留の違い
慰留と残留の意味の違い
慰留と残留の違いを分かりやすく言うと、慰留とは留まらせること、残留とは留まることという違いです。
慰留と残留の使い方の違い
一つ目の慰留を使った分かりやすい例としては、「転職を考える彼は会社から慰留された」「慰留されて退職できない」「移籍を考える選手に監督が慰留を求める」「退職届けを出したら課長に慰留された」などがあります。
二つ目の残留を使った分かりやすい例としては、「食品中の残留農薬を調べる機械です」「某大リーガーが残留より古巣のチームを選んだ」「私は中国残留孤児3世です」「母乳中の残留性有機汚染物質を調べた」などがあります。
慰留と残留という言葉は、会社を辞める時や役職を辞任する時、あるいは転職する場面などで使われる言葉です。また、二つの言葉はプロ野球界での移籍のニュースに関しても使われています。そのため混同される傾向がある言葉ですが、意味は異なるので注意が必要です。
慰留と残留の使い分け方
慰留とは、慰めなだめて辞職などを思いとどまらせることを意味し、退職しようとする人を会社側が引き留めることを表す言葉です。一方、残留とは残ってとどまることを意味し、自らの意志で会社に留まることを表します。
つまり、慰留とは誰かを留まらせること、残留とは自らの意志で留まることです。この意味で、二つの言葉は相反する言葉と言えるでしょう。
慰留と残留の英語表記の違い
慰留を英語にすると「resigning」「dissuasion」「persuading」となり、例えば上記の「彼は慰留された」を英語にすると「he was resigning」となります。
一方、残留を英語にすると「remnant」「retention」「residual」となり、例えば上記の「残留農薬」を英語にすると「residual agricultural chemicals」となります。
慰留の意味
慰留とは
慰留とは、退こうとする人をなだめて、思いとどまらせることを意味しています。
表現方法は「慰留を促す」「慰留を求める」「慰留を試みる」
「慰留を促す」「慰留を求める」「慰留を試みる」などが、慰留を使った一般的な言い回しです。
慰留の使い方
慰留を使った分かりやすい例としては、「退職願いを出したら慰留された」「長引く退職慰留に嫌気がさす」「慰留された場合の断り方を考える」「会社として慰留を促すことを決めた」「引退を考えている選手の慰留に努める」などがあります。
その他にも、「監督の辞意表明に慰留を求める声が相次いだ」「慰留交渉に応じるつもりはない」「会社の慰留ハラスメントに対処する」「慰留されて移籍できなかった」「退職希望の部下を慰留する」などがあります。
慰留という言葉の「慰」とは慰めることや相手の気持ちをいたわり落ち着かせることを表し、「留」とはその場に止めておくことや留まることを表します。慰留とは、 退こうとする人を慰めなだめて、思い留まらせることを意味する言葉です。
「慰留交渉」の意味
上記の例文にある「慰留交渉」とは、退職の意向を表明した人に対して、会社側や上司が退職を思いとどまらせるよう交渉を行うことです。会社側は待遇や給料の改善などを提案して、退職の取消を図ります。
慰留の類語
慰留の類語・類義語としては、同じ所や地位にそのままいることを意味する「留まる」、移動させないで元の所にいさせることを意味する「止める」(読み方:とどめる)、いさめて思いとどまらせることを意味する「諫止」、行動に出るのをやめさせることを意味する「引止める」などがあります。
残留の意味
残留とは
残留とは、残りとどまること、無くならずにに残っていることを意味しています。
表現方法は「残留する」「残留します」
「残留する」「残留します」などが、残留を使った一般的な言い回しです。
残留の使い方
残留を使った分かりやすい例としては、「残留農薬を洗い流せるという洗剤を買った」「残留塩素測定器を製造する会社です」「戦後、多くの子どもたちが残留孤児となりました」「溶接や鋳造などによって残留応力が発生します」などがあります。
その他にも、「居心地の良いチームなので全員残留します」「物体に残された残留思念を感じることがある」「プール水の残留塩素濃度をチェックする」「毒性が強く残留性がある化学物質です」などがあります。
残留という言葉の「残」とは後に残ることや余り、「留」とはその位置から動かないことや留まることを表します。残留とは、残りとどまること、あとに残ること、その残ったものを表す言葉であり、日常生活からビジネスシーンまで様々な場面で使われる言葉です。
「残留孤児」の意味
上記の例文にある「残留孤児」とは、外国に行った両親に死別または生別したまま、現地に取り残された子供のことを意味します。特に第二次大戦終結後、中国東北部にいた日本人の子供が肉親と離ればなれになり、中国人養父母のもとで育てられてきた人は「中国残留孤児」と呼ばれています。
「残留応力」の意味
残留を用いた日本語には「残留応力」があります。引っ張り、圧縮、曲げ、熱処理などの外力に対して物体内部に生じて、外力を除いたあとにも保留される力のことです。材料の強化などに利用される力であり、内部応力,固有応力,初期応力,組立て応力とも言います。
残留の対義語
残留の対義語・反対語としては、霧が晴れるように消えてなくなることを意味する「霧消」、風に雲が散るようにすっかり消えてなくなることを意味する「雲散」、物が消えてなくなることを意味する「消失」、存在していたものがなくなってしまうことを意味する「消滅」などがあります。
残留の類語
残留の類語・類義語としては、なくならないで残っていることを意味する「残存」、残りや余りを意味する「残余」、売れ残った品物を意味する「残品」、未処理で残った事務を意味する「残務」などがあります。
慰留の例文
この言葉がよく使われる場面としては、慰めなだめて、辞職などを思いとどまらせることを表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「慰留ハラスメント」とは、労働者が会社などの雇用主に対して退職の意思表示をしたにも関わらず、退職届を受理しない、嫌がらせをするなどして執拗に労働者を引き留めることです。悪質なものになると、脅したり暴力を振るうなど強引な手段が行われることもあります。
残留の例文
この言葉がよく使われる場面としては、残りとどまること、あとに残ること、その残ったものを表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「蒸発残留物」とは水の中に含まれているもので、蒸発したときに残渣として得られたものを言います。水道水の蒸発残留物の主な成分はミネラルで、カルシウムやマグネシウムなどの塩類や有機物です。
例文4の「残留性有機汚染物質」とは自然に分解されにくく、生態系や食品にとりこまれ摂取されることで人の健康に害を及ぼす有機物のことです。例文5にある「残留思念」とは、超常現象や精神世界などの用語で、人間が強く何かを思ったときにその場に残留するとされる感情などの思念を意味します。
慰留と残留という言葉は、ビジネスシーンにおいては会社を退職したり転職する場面で使われています。どちらの言葉を使うか迷った場合、思い留まらせることを表現したい時は「慰留」を、留まることを表現したい時は「残留」を使うようにしましょう。