似た意味を持つ「過料」(読み方:かりょう)と「罰金」(読み方:ばっきん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「過料」と「罰金」という言葉は、どちらも金銭罰を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
過料と罰金の違い
過料と罰金の意味の違い
過料と罰金の違いを分かりやすく言うと、過料とは行政法上の罰で前科が付かない、罰金とは刑法上の罰で前科が付くという違いです。
過料と罰金の使い方の違い
一つ目の過料を使った分かりやすい例としては、「行政命令違反に対する過料を支払う」「過料は科料と違って刑法は関係ありません」「過料の金額が低いので効果が薄い」「過料の手続規程について議論する」などがあります。
二つ目の罰金を使った分かりやすい例としては、「駐車違反の罰金を払う」「罰金も科料も刑罰です」「有罪判決の種類には罰金刑や禁錮刑などがあります」「罰金の支払い方法を確認する」などがあります。
過料と罰金という言葉は、新型コロナウイルスに関連する特別措置法と感染症法の改正案を議論するなかで用いられた言葉でもあります。
過料と罰金の使い分け方
二つの言葉は、ある法令を違反した場合に科せられる金銭罰を表しますが、意味や使い方は異なります。
過料とは、行政法上の軽い禁令を犯した者に科する金銭罰を意味し、行政罰で前科は付かないものです。条例で路上喫煙が禁止されている場所で、歩きたばこをした場合などに科せられるものです。
一方、罰金とは、刑法上で規定する犯罪の処罰として科せられる金銭を意味し、刑事罰でとなり前科がつきます。交通違反や窃盗、盗撮などの犯罪に対して科せられるものです。
つまり、過料は行政法上の制裁であり、罰金は刑法上の制裁です。過料と罰金という言葉を比べると、前科がつかない「過料」よりも、前科がつく「罰金」の方が重みのある言葉と言えるでしょう。
過料と罰金の英語表記の違い
過料を英語にすると「administrative fine」「non-criminal fine」となり、例えば上記の「命令違反に対する過料」を英語にすると「administrative fine for violation of the order」となります。
一方、罰金を英語にすると「penalty」「fine」となり、例えば上記の「駐車違反の罰金」を英語にすると「parking fines」となります。
過料の意味
過料とは
過料とは、国または地方公共団体が、行政上の軽い禁令を犯した者に科する金銭罰を意味しています。
過料の読み方
過料は「かりょう」という読み方のほかに、「あやまちりょう」とも読みます。「かりょう」の同音異義語で刑法が規定する財産刑を意味する「科料」と判別するために、過料を「あやまちりょう」と読むこともありますが、一般的には「かりょう」と読まれています。
表現方法は「過料を科す」「過料に処する」「過料を払わない」
「過料を科す」「過料に処する」「過料を払わない」などが、過料を使った一般的な言い回しです。
過料の使い方
過料を使った分かりやすい例としては、「行政罰で過料が科せられた」「過料の徴収方法は自治体により異なります」「過料を経費計上する場合の勘定科目を確認する」「行政の求めを無視して過料が科せられる」などがあります。
その他にも、「過料は損金不算入の対象になるのか確認する」「過料の金額に応じて時効期間が定められている」「路上喫煙は過料であり警察取り締まりの対象外です」「飲食店への過料の上限を引き下げる」などがあります。
過料という言葉は歴史的に古くからあり、中世時代に過失などの軽い罪を償うために科した金銭を、江戸時代には本刑に代えて科した金銭を意味する言葉です。現代では、おもに行政上の義務強制や制裁のために違反者に対して科せられる金銭罰の意味で使われています。
過料は「秩序罰」「執行罰」「懲戒罰」に分類される
過料は「秩序罰」「執行罰」「懲戒罰」の3種に分類することができます。秩序罰は自治体の迷惑防止条例違反であり、懲戒罰には判員制度での裁判員の出頭義務違反が該当します。また、執行罰は砂防法36条で規定されている砂防設備設置義務違反がこれにあたります。
過料の類語
過料の類語・類義語としては、 租税などを取り立てることを意味する「収斂」、罰金や違約金を意味する「ペナルティー」などがあります。
罰金の意味
罰金とは
罰金とは、罰として出させる金銭を意味しています。
その他にも、刑法の規定する主刑の一つで、犯罪の処罰として科せられる金銭の意味も持っています。
表現方法は「罰金に処する」「罰金を科す」「罰金刑」
「罰金に処する」「罰金を科す」「罰金刑」などが、罰金を使った一般的な言い回しです。
罰金の使い方
「約束を破ったら罰金だぞ」「君が勝手に決めた罰金は払えない」「バイトの遅刻で罰金を請求された」「罰金を踏み倒すつもりだ」「我が家には罰金ルールがあります」などの文中で使われている罰金は、「罰として出させる金銭」の意味で使われています。
一方、「罰金刑を受けて前科者になる」「罰金が払えないので親に泣きつく」「盗撮事件の罰金刑率が高い」「法人に罰金刑を科すこともできる」「罰金刑が一覧になっているサイト」などの文中で使われている罰金は、「刑法の規定する犯罪の処罰として科せられる金銭」の意味で使われています。
罰金という言葉は、制裁のために取り立てる金銭と、刑法の規定する犯罪の処罰として科せられる金銭の二つの意味があります。日本の刑法では1万円を境として、1000円以上1万円未満を「科料」、1万円以上を「罰金」と呼び分けています。
「日数罰金」の意味
罰金という言葉を用いた日本語には「日数罰金」があります。日数罰金とは、罰金刑を金額で言い渡さず何日分の罰金というように一定の日数で言い渡すものです。責任の量を明らかにし、1日分に該当する金額を被告人の資力に応じて決め、貧富の差に合理的に対処しようとする制度です。
罰金の対義語
罰金の対義語・反対語としては、労務または物の使用の対価として給付される金銭や物品を意味する「報酬」、賞として与える金銭を意味する「賞金」などがあります。
罰金の類語
罰金の類語・類義語としては、債務不履行の場合に債権者に支払うことを前もって決めた金銭を意味する「違約金」、 刑法上で没収の目的物が没収できないとき物の価額の納付を強制する処分を意味する「追徴」、 軽微な犯罪に科する財産刑を意味する「科料」などがあります。
過料の例文
この言葉がよく使われる場面としては、国または公共団体が国民に対して科する金銭罰で刑法上の刑罰以外のもの、行政上の義務を履行させる手段としての執行罰を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「行政罰」とは、行政法上の義務違反に対して加えられる罰のことです。違反した場合に科せられる金銭罰が「過料」です。例文5にある「過料の上限額」とは、ある過料に対する最大値の金額のことです。
罰金の例文
この言葉がよく使われる場面としては、罰として納めさせる金銭、制裁のために取り立てる金銭、刑法の規定する主刑の一つを表現したい時などが挙げられます。
例文1の罰金は、罰として納めさせる金銭の意味で使われ、この場合、約束を破ったことに対する制裁のために取り立てる金銭です。例文2から例文5にある罰金は、刑法の規定する主刑の一つで、犯罪の処罰として科せられる金銭の意味で使われています。
過料と罰金という言葉は、どちらも違反に対する金銭罰を意味する言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、行政法上の金銭罰表現したい時は「過料」を、罰として納めさせる金銭や刑法が規定する金銭罰を表現したい時は「罰金」を使うようにしましょう。