似た意味を持つ「偽造」(読み方:ぎぞう)と「捏造」(読み方:ねつぞう)と「改ざん」(読み方:かいざん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「偽造」と「捏造」と「改ざん」という言葉は、偽りのものを作り上げることという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「偽造」と「捏造」と「改ざん」の違い
「偽造」と「捏造」と「改ざん」の意味の違い
「偽造」と「捏造」と「改ざん」の違いを分かりやすく言うと、「偽造」は本物そっくりに作り上げることを表し、「捏造」は事実でないことを事実のように扱うことを表し、「改ざん」はを文書などを勝手に変えることを表すという違いです。
「偽造」と「捏造」と「改ざん」の使い方の違い
「偽造」という言葉は、「公的文書が偽造された」「貨幣の偽造は大罪である」などの使い方で、偽物を作ることを意味します。
「捏造」という言葉は、「彼の話は8割が捏造されただと感じる」「研究結果の捏造が明らかとなった」などの使い方で、事実でないことを事実のように作り上げることを意味します。
「改ざん」という言葉は、「企業内で帳簿の改ざんが行われていた」「記録が改ざんされていたことに気付かなかった」などの使い方で、文書などを勝手に直すことを意味します。
「偽造」と「捏造」と「改ざん」の使い分け方
「捏造」と「改ざん」は、前者が事実ではないことをあたかも事実かのように作り上げることを意味し、後者が元々存在しているものに勝手に手を加えることを意味します。どちらも、行為を終えた後に残るものは一つとなります。
一方、「偽造」は、手本になるオリジナルと同じような偽物を一から作ることです。そのため、「捏造」や「改ざん」と違って、行為を終えた後に結果残るものは本物と偽物の二つとなります。
これらが、「偽造」、「捏造」、「改ざん」の明確な違いです。
「偽造」の意味
「偽造」とは
「偽造」とは、偽物を作ることを意味しています。
「偽造」と似た言葉に「模倣」や「模造」がありますが、前者は公的に発行されたお金や権利の証明書などを真似た時に、後ろ二つの言葉は民間の商品などを真似た時に使われるという違いがあります。
表現方法は「偽造する」「偽造を防ぐ」「偽造を見抜く」
「偽造する」「偽造を防ぐ」「偽造を見抜く」などが、偽造を使った一般的な言い回しです。
「偽造」を使った言葉として、「有形偽造」「無形偽造」があります。
「有形偽造」の意味
一つ目の「有形偽造」とは、権利や権限がない人が他人名義の文書を作成することを指す言葉で、文書の名義人と作成者が同一だと偽って文書を作成することも意味します。これにより作られた文書を「不真正文書」や「偽造文書」と言います。
「無形偽造」の意味
二つ目の「無形偽造」とは、有形偽造と違って、文書を作成する権限を持つ人が虚偽の内容を記して文書を作成することを指す言葉です。これにより作られた文書を「虚偽文書」と言います。
「偽造」の類語
「偽造」の類語・類義語としては、本物に似せて作ることを意味する「贋造」、本来の作者の作品に見せかけて作ることを意味する「偽作」、本物を真似て作ることを意味する「擬製」などがあります。
「捏造」の意味
「捏造」とは
「捏造」とは、事実でないことを事実のように作り上げることを意味しています。
「捏造」の読み方
「捏造」は「ねつぞう」という読み方をしますが、これは慣用読みで、元は「でつぞう」と読んでいた言葉です。
表現方法は「捏造する」「捏造されている」「捏造である」
「捏造する」「捏造されている」「捏造である」などが、捏造を使った一般的な言い回しです。
「捏造」の由来
捏造の「捏」は、土に水などを加えて練ることを意味する言葉であることから、元は土を捏ねて形を造ることを表していましたが、ここから形だけの偽物を造ることを意味するようになり、何も無いところから存在を生むという意味に転じました。
捏造と同じように、ないことをあるように作り上げることを意味する「でっち上げる」という言葉は、「捏」(読み方:でつ)という動詞が使われるようになった後に生まれ、「捏ち上げる」と表記されていました。
「捏造報道」の意味
「捏造」を使った言葉として、「捏造報道」があります。これは、マスコミなどが虚偽の内容を報道することを指す言葉です。
最初から虚偽であることを認識したうえで行う架空のニュースや推測を事実のように報道することを捏造報道と言い、そうでないものは「虚偽報道」と区別して考えられることもあります。
「捏造」の類語
「捏造」の類語・類義語としては、既にある物を加工して形や内容などを変えることを意味する「変造」、嘘を言うことを意味する「虚言」、事実をわざと歪めて伝えることを意味する「歪曲」などがあります。
「改ざん」の意味
「改ざん」とは
「改ざん」とは、文書などを勝手に直すことを意味しています。
「改ざん」の漢字表記
「改ざん」は「改竄」という漢字表記が存在しますが、「竄」という漢字が常用漢字ではないことから、ひらがなに置き換えて使われることがほとんどです。
表現方法は「改ざんする」「改ざんされる」「改ざんを防ぐ」
「改ざんする」「改ざんされる」「改ざんを防ぐ」などが、改ざんを使った一般的な言い回しです。
「改ざん」の由来
改ざんの「竄」という漢字は、ネズミが巣穴に入ることを表していることから、逃れる、隠れるといった意味があります。
こういった、ネズミの動作が由来となって、こっそり文字を挿入することを意味するようになり、さらにこっそり文字を書き換えることを意味するようになりました。
今日では改ざん行為には悪意があり、不正な行いであると考えられていますが、悪意の有無は本来問わない言葉です。そのため、知識不足で間違った変更を行うといったことにも「改ざん」という言葉が当てはまります。
しかし、日本では改ざんを防ぐための法律が設けられていたり、企業が帳簿の改ざんを行い支払う税金を小さくする脱税や、業績不良を良好であるように見せる粉飾決算が存在することからも、悪意が込められた事案が多いことも事実です。
「改ざん」の類語
「改ざん」の類語・類義語としては、細かなところに手を入れて見た目を取り繕ったり誤魔化すことを意味する「細工」、自分の都合の良いように手を加えることを意味する「操作」、事実を曲げて書くことを意味する「曲筆」などがあります。
「偽造」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、偽物を作ることを意味する時などが挙げられます。
どれもオリジナルに似た偽物を造ることを意味するため、「捏造」や「改ざん」を置き換えて使うことはできません。
「捏造」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、事実ではないことを事実として作り上げることを意味する時などが挙げられます。
「捏造」という言葉は、例文1や例文3のように学術的な話題に使うこともでき、例文2のように日常会話内でも使うことが出来る言葉です。
「改ざん」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、文書などを勝手に直すことを意味する時などが挙げられます。
例文2のように悪意がないものに対してや、文書ではない記憶に対しても使うことができます。
「偽造」と「捏造」と「改ざん」どれを使うか迷った場合は、偽物を作ることを表す場合は「偽造」を、嘘を事実のように扱うことを表す場合は「捏造」を、文書などを勝手に変えることを表す場合は「改ざん」を使うと覚えておけば間違いありません。