似た意味を持つ「移送」(読み方:いそう)と「搬送」(読み方:はんそう)と「輸送」(読み方:ゆそう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「移送」と「搬送」と「輸送」という言葉は、物を移すことという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
移送と搬送と輸送の違い
移送と搬送と輸送の意味の違い
移送と搬送と輸送の違いを分かりやすく言うと、移送は手続きや権利を移す時にも使い、搬送は交通手段を使って移す時に使い、輸送は遠くへ移す時に使うという違いです。
移送と搬送と輸送の使い方の違い
移送という言葉は、「犯人の身柄を移送する」「他の管轄の裁判所に移送された」などの使い方で、ある所から他の所へ移し送ることを意味します。
搬送という言葉は、「新たに搬送された傷病者は会話が出来る程度には意識がある」「集積所に集められた荷物はまず近くの管理所に搬送される」などの使い方で、運び送ることを意味します。
輸送という言葉は、「支援物資の輸送を行うための船が攻撃された」「貨物の輸送のために税関などを通さなければならない」などの使い方で、車や船、航空機などで人や物資を運ぶことを意味します。
移送と搬送と輸送の使い分け方
搬送と輸送は、人や物を運ぶことを意味する言葉ですが、前者は車などの交通手段を使って運ぶことを重視し、後者は距離的に遠くに運ぶことを重視するという違いがあります。
また、搬送は負傷者を病院に運ぶ時に使うことができますが、「負傷者を移送する」「負傷者を輸送する」などのように他の言葉に置き換えて使うことができません。
一方、移送という言葉は物を移動させる時だけではなく、手続きの管理や権利などを、それを所有する機関から他の機関に移動させることも意味する言葉です。
これらが、移送、搬送、輸送の明確な違いです。
移送の意味
移送とは
移送とは、ある所から他の所へ移し送ることを意味しています。
他にも、行政上の手続きや訴訟に関しての管理場所を、ある機関から他の機関に移すことも意味します。例えば、民事訴訟においては管轄が違ったことで移送をしなければならなかったり、簡易裁判所から地方裁判所に移送することなどが挙げられます。
移送を使った言葉として、「移送費」「移送取扱所」があります。
「移送費」の意味
一つ目の「移送費」とは、病気やけがで移動が難しい患者が、医師による指示で一時的もしくは緊急的に移送された場合に現金で支給される費用を指す言葉です。
治療のためであったり、入院や転院のために移動しなければならない際、バスや電車、タクシーを使うことが出来ず自動車などを利用した場合に支給されます。
「移送取扱所」の意味
二つ目の「移送取扱所」とは、配管やポンプを使って危険物を移送する設備を指す言葉です。ここでいう危険物とは、火災を引き起こす危険性が高いガソリンや灯油などで、法律で取り扱い方が定められているものを指します。
これは鉄道や道路のトンネル内には設置してはいけないという決まりや、市街地などでは深さ1.8m以下の地中に埋めて設置してはならないなどの決まりがあり、設置基準などが多く設けられています。
移送の類語
移送の類語・類義語としては、郵便で送ることを意味する「郵送」、送り届けることを意味する「送致」、命令などを口頭または書類で相手に伝えることを意味する「伝達」、他の場所へ移ることを意味する「移動」などがあります。
搬送の意味
搬送とは
搬送とは、交通手段を使って運び送ることを意味しています。
搬送は、人や物を運ぶ言葉として使われますが、負傷した人を運ぶ時にも使われます。
表現方法は「搬送する」「救急搬送」「搬送先の病院」
「搬送する」「救急搬送」「搬送先の病院」などが、搬送を使った一般的な言い回しです。
上記以外の搬送を使った言葉として、「搬送帯」「搬送波」があります。
「搬送帯」の意味
一つ目の「搬送帯」とは、物を連続的に一定の距離だけ運搬する自動装置を指す言葉で、ベルトコンベヤーとも言います。
今日ではベルトに乗せられて物が運ばれるだけではなく、機械が製品を持ち上げたり、他のベルトや機械に移動させたりする過程も生じます。その場合に使われる機械は、「搬送帯」ではなく「搬送機」と呼ばれます。
「搬送波」の意味
二つ目の「搬送波」とは、音声や映像、データなどの情報を伝送するための電波や光による信号波を意味する言葉で、キャリアとも呼ばれる言葉です。
また、「搬送」という言葉だけで、この搬送波を使った通信方式を搬送通信を表すこともあります。
搬送の類語
搬送の類語・類義語としては、人や物を目的のところに運ぶことを意味する「運送」、身に付けて持って行くことを意味する「携行」、動力を同じ機械の他の部分や機械に伝えることを意味する「伝動」、送り届けることを意味する「送達」などがあります。
輸送の意味
輸送とは
輸送とは、車や船、航空機などで人や物資を運ぶことを意味しています。
表現方法は「輸送する」「輸送会社」「輸送方法」
「輸送する」「輸送会社」「輸送方法」などが、輸送を使った一般的な言い回しです。
上記以外の輸送を使った言葉として、「輸送反応」「輸送結び」があります。
「輸送反応」の意味
一つ目の「輸送反応」とは、ほ乳類の子どもが親に運ばれる時に生じる反応で、ヒトにもみられる反応です。
動物は移動の時に敵に見つからないようにするために、生き延びるための子どもの本能として親に協力するかのように、抱っこして移動を始めると泣いている赤子の心拍数が下がって大人しくなります。
「輸送結び」の意味
二つ目の「輸送結び」とは、輪と輪を組み合わせることで滑車のような状態を作って、小さな力で強く荷物を締め付けるロープの結び方を指す言葉です。複数の荷物を固定する必要がある時に多く使われます。
似た結び方に「南京結び」がありますが、「輸送結び」との違いは、大きくて重い荷物を固定する時に使われる点です。
輸送の類語
輸送の類語・類義語としては、貨物を輸送することを意味する「通運」、旅客や貨物を運び送ることを意味する「運輸」、航空機で人や貨物などを輸送することを意味する「空輸」、送られてきたものをさらに他へ送ることを意味する「転送」などがあります。
移送の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある所から他の所へ移し送ることを意味する時などが挙げられます。
例文3の「移送費」とは、療養に必要な最小限度の日数分の通院に掛かる交通費を指す言葉です。
搬送の例文
この言葉がよく使われる場面としては、交通手段を使って運び送ることを意味する時などが挙げられます。
例文3の「徒手搬送」(読み方:としゅはんのう)とは、担架を使わないで傷病者を搬送する方法で、基本的にはその場が安全であれば取られない方法です。
輸送の例文
この言葉がよく使われる場面としては、車や船、航空機などで人や物資を運ぶことを意味する時などが挙げられます。
例文1の「輸送機」とは、人や貨物などを輸送するための軍用の飛行機を指す言葉です。民間で使われる貨物輸送のための航空機は貨物機と呼ばれて区別されています。
例文2の「輸送船」も上記「輸送機」と同じで、軍用の船舶を指す言葉です。
移送と搬送と輸送どれを使うか迷った場合は、手続きや権利を移すことを表す場合は「移送」を、交通手段を使って移すことを表す場合は「搬送」を、遠くへ移すことを表す場合は「輸送」を使うと覚えておけば間違いありません。