似た意味を持つ「異存」(読み方:いぞん)と「異論」(読み方:いろん)と「異議」(読み方:いぎ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「異存」と「異論」と「異議」という言葉は、他と違った意見や考えという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
異存と異論と異議の違い
異存と異論と異議の意味の違い
異存と異論と異議の違いを分かりやすく言うと、異存は確定事項に対する不満の有無を表現する時に使い、異論は他の異なる意見を表現する時に使い、異議は不満や不服を表す意見を表現する時に使うという違いです。
異存と異論と異議の使い方の違い
異存という言葉は、「異存を唱えるにも体力を使う」「異存があればすぐに述べるように」などの使い方で、他とは異なる意見や、不服を表す意見を意味します。
異論という言葉は、「組織内で異論があったため」「異論を呈する気概は大切である」などの使い方で、他の違った意見や議論を意味します。
異議という言葉は、「異議がないため満場一致の採決であった」「ご異議はありませんか」などの使い方で、反対や不服であることを示す意見を意味します。
異存と異論と異議の使い分け方
異存と異議は、どちらも不満や不服の意味が込められ使われる言葉ですが、前者は確定事項に対しての不服に対する意見の有無を特に意味し、後者は不満や不服を表す意見内容を指す言葉です。
また、異議は法律用語でもあるため、公的文書などでも使われている言葉です。
一方、異論も他とは異なった意見や議論を意味するものの、反対意見であったり不満、不服といった意味は本来含まれていません。
これらが、異存、異論、異議の明確な違いです。
異存の意味
異存とは
異存とは、他と異なった考えや反対意見を意味しています。
表現方法は「異存はございません」「異存はない」「異存を唱える」
異存を使った表現として、「異存はございません」「異存はない」「異存を唱える」などがあります。一つ目の例のように、敬語表現と共に使うことで目上の人に対して使うこともできます。
相手の反対意見を伺う場合には「ご異存ございますか」「ご異存ございましたらご連絡ください」などの表現となりますが、確定事項の報告と共に異存が使われるため、相手の意見を求めていないニュアンスが含まれます。
そのため、目上の人に対して意見を尋ねる場合は「何かご意見ございますか」など別の言い方をするのが好ましいともされています。もちろん自身の反対意見を「ご異存」と表現することは不適切です。
異存の対義語
異存の対義語・反対語としては、他人の意見などに対して賛成することを意味する「同意」があります。
異存の類語
異存の類語・類義語としては、物足りなく満足しないことを意味する「不満」、人の欠点や過失などを取り上げて責めることを意味する「非難」、非難するような顔つきを意味する「難色」、物事がうまくかみ合わないことを意味する「齟齬」などがあります。
異論の意味
異論とは
異論とは、他と違った意見や議論を意味しています。また、反対の意見や不服な気持ちも意味します。
「異論反論オブジェクション」というコーナーが有名
1989年より放送されていたニュース番組内で「異論反論オブジェクション」というコーナーがありましたが、2019年に同局のニュース番組内で復活を遂げました。
有名人気ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」にて登場人物がこのコーナー名を取り上げた会話が繰り広げられていました。
表現方法は「異論を唱える」「異論がある」「異論ありません」
異論を使った表現として、「異論を唱える」「異論がある」「異論ありません」「異論無し」「異論の余地がない」などがあります。ビジネスシーンなどで使う場合は反対の意味を含む「異存ありません」という表現と同じように使うことができます。
異論の対義語
異論の対義語・反対語としては、世間一般に認められている意見を意味する「通論」、賛成の気持ちを意味する「賛意」、人の意見や行動を認めてそれに同意することを意味する「賛成」があります。
異論の類語
異論の類語・類義語としては、他の人とは違った考えを意味する「異見」、相手の論や批判に反対の意見を述べることを意味する「反論」、他の人と違う説を意味する「異説」、他の物と異なる点を意味する「差異」などがあります。
異議の意味
異議とは
異議とは、一つの意見に対して反対や不服であることを示す意見を意味しています。
法律用語として、相手の行為に対して反対や不服の意思表示をする際に使います。
異議を使った言葉として、「異議をとどめない承諾」「異議申し立て」があります。
「異議をとどめない承諾」の意味
一つ目の「異議をとどめない承諾」とは、異議があるもののその旨を相手に伝えることなく承諾することを意味する言葉で、「異議なき承諾」とも呼ばれることがあります。
本来は渡さなくてもいい金銭などを払うことを承諾してしまった後は、対抗できる理由があったとしても対抗できなくなると定められていましたが、民法の改正により「異議をとどめない承諾」の制度は廃止されることとなります。
「異議申し立て」の意味
二つ目の「異議申し立て」とは、日本の行政における不服申し立ての方法の一つで、処分庁に対して行うものです。
平成28年に行政不服審査法が改正されたことで、異議申し立て、審査請求、再審査請求の三種類に統一され、これら三つをまとめて「不服申し立て」と言うようになりました。
表現方法は「異議なし」「異議をとどめる」「異議がある」
「異議申し立て」以外では「異議なし」「異議をとどめる」「異議がある」などが、異議を使った一般的な言い回しです。
異議の対義語
異議の対義語・反対語としては、他人の意見や主張などに賛同することを意味する「同調」があります。
異議の類語
異議の類語・類義語としては、相手の発言などを不当として反対の意見などを主張することを意味する「抗議」、二つの物事がかけ離れていることを意味する「懸隔」、相手の主張に対して自身の立場を堅持して反論することを意味する「抗弁」などがあります。
異存の例文
この言葉がよく使われる場面としては、他と違った考えや反対意見を意味する時などが挙げられます。
反対や不服を表す意見の内容ではなく、意見の有無を言及することに使われる言葉ですので、「異存はない」「異存もあった」など、有無を表す言葉と共に使います。
異論の例文
この言葉がよく使われる場面としては、他の異なった意見や議論を意味する時などが挙げられます。
その他にも、「異論を呈す」「異論を挟む」「異論は認めない」などの使い方をすることができます。
異議の例文
この言葉がよく使われる場面としては、不満を表すような意見を意味する時などが挙げられます。
その他にも、「異議をとどめる」「異議あり」「異議なし」などの使い方をすることができます。
異存と異論と異議どれを使うか迷った場合は、確定事項に対する不満の有無を表す場合は「異存」を、他の異なる意見を表す場合は「異論」を、不満や不服を表す意見を表す場合は「異議」を使うと覚えておけば間違いありません。