同じ「かえる」という読み方、似た意味を持つ「帰る」と「返る」と「還る」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「帰る」と「返る」と「還る」という言葉は、どれも以前に戻ることを表現するという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「帰る」と「返る」と「還る」の違い
「帰る」と「返る」と「還る」の意味の違い
帰ると返ると還るの違いを分かりやすく言うと、帰るとは元いた場所に戻ることを意味していて、返るとは表裏や方向を変えることを意味していて、還るとは元々の状態に戻ることを意味しているという違いです。
「帰る」と「返る」と「還る」の使い分け方
一つ目の帰るというのは、元いた場所に戻るという意味を持つ言葉です。例えば「家に帰る」というのは、出かけ先から家に戻るという意味です。
帰るという言葉は、空間的な移動を表現しています。家とは別の場所へいて、そこからまた家に戻ることを「帰宅」(読み方:きたく)と言います。帰宅の際には空間的・場所的な移動が行われています。
二つ目の返るというのは、コインや衣服などの表を裏にすること、逆に裏を表にするという意味を持ちます。「裏返す」や「ひっくり返す」という言い回しがあります。
また、返るという言葉には、これまでの進行方向とは逆に進むこと、来た道を戻るという意味もあります。マラソンなどの「折り返し地点」や、「来た道を引き返す」というような表現があります。
三つ目の還るというのは、元々の状態に戻るという意味を持つ言葉です。ただし、「もどる」という読み方は常用外で、むしろ「還元」(読み方:かんげん)という言葉に使われていることで馴染みの深い言葉です。
例えば「消費者還元」という言葉は、お金を払ったお客さんに、お金を戻すという意味です。お金が元々の所有者であった消費者の手に戻るというのが、ここでの「還元」の意味です。
また60歳を意味する「還暦」(読み方:かんれき)という言葉にも、還の字が使われています。生まれ年と同じ干支になる、つまり生まれた時に還るのが60歳だからです。還暦とは、「生まれた時の元々の干支に戻る暦」という意味です。
通常私達は、干支の十二支しか意識しません。しかし干支は本来、十二支と十干からなる60の組み合わせが周期的に交代しています。
帰るは場所の移動を意味しますが、還るは元々の状態に戻るという意味です。還るには、場所を移動するという意味合いはありません。
「帰る」の意味
「帰る」とは
帰るとは、元いた場所に移動して戻ることを意味しています。帰るという言葉は空間的な意味合いを持っていて、場所を移動して戻るという意味を持ちます。
表現方法は「家に帰る」「基本に帰る」「ランナーが帰る」
「家に帰る」「基本に帰る」「ランナーが帰る」「日本に帰る」などが、帰るを使った一般的な言い回しです。
「帰る」の使い方
家に帰ることを意味する「帰宅」(読み方:きたく)や国に帰ることを意味する「帰国」(読み方:きこく)などの言葉を考えてみて下さい。どちらの言葉にも場所を移動するという意味合いが含まれています。
帰るという行動をとるのは、元いた場所から離れている人です。距離的にどれくらいの離れているかとか、どれくらいの期間離れているのかは関係ありません。家から5分のコンビニから戻る時も「帰る」ですし、東京から沖縄の実家へ戻るのも「帰る」です。
また、お店からお客さんが立ち去ることを「帰る」と表現することがあります。飲食店で「〇番様お帰りです」という言葉を聞くことがあります。
「帰る」の対義語
帰るの対義語・反対語としては、今いる場所から別の場所へ赴くことを意味する「行く」、離れた場所にいる人が自分の場所へ移動することを意味する「来る」などがあります。
「帰る」の類語
帰るの類語・類義語としては、家に帰ることを意味する「家路につく」があります。
帰るの帰の字を使った別の言葉としては、出先から会社へ戻ることを意味する「帰社」、帰り道を意味する「帰路」、田舎へ帰ることを意味する「帰省」などがあります。
「返る」の意味
「返る」とは
返るとは、表と裏がひっくりかえること、今まで進んでいた方向とは逆に引き戻すこと、呼びかけに答えがかえってくること、失くしていた物が手元に戻ることを意味しています。
表現方法は「初心に返る」「我に返る」「立ち返る」
「初心に返る」「我に返る」「立ち返る」などが、返るを使った一般的な言い回しです。
「返る」の使い方
「ひっくり返す」という言葉があります。衣服やトランプなどを表から裏に、また裏から表にするという意味の言葉です。このことから分かるように、返すというのは、表裏や上下のあるものの向きを反対にすることを意味します。
上下が逆転するという意味での「ひっくり返す」には、例えば「戦局がひっくり返る」という場合があります。今までの優位・不利の立場が逆転するということです。
また「引き返す」という言葉がありますが、これは今まで来た道を戻るという意味です。このことから分かるように、返るは方向を変えて戻るという空間的・場所的な意味合いを持つこともあります。
この意味での返るは、帰ると近い意味を持ちます。ただし、返るは経路を念頭に置くのに対して、帰るは目的地を念頭に置いています。「もと来た道を引き返す」と「元の場所に帰る」という違いです。
返るには、「折り返し電話」や「折り返しのお手紙」などの使い方もあります。相手の呼びかけに応答することを「返事を返す」とも言います。
はたまた、「落とし物が返ってくる」という言葉が使われることから分かるように、返るという言葉は、手元に戻るという意味で使われることもあります。
その他、「静まり返る」や「あきれ返る」のように、動詞の連用形について、程度を強調する意味もあります。静まり返るというのは、単に静かなだけではなく、物音一つしないというような意味です。
「返る」の類語
返るの類語・類義語としては、一度出て行ったものが戻ることを意味する「出戻る」、元の場所に戻ることを意味する「舞い戻る」などがあります。
返るの返の字を使った言葉としては、借りた物を返すことを意味する「返却」、親切にしてくれたことに報いることを意味する「恩返し」などがあります。
「還る」の意味
「還る」とは
還るとは、元々の状態に戻ることを意味しています。
表現方法は「自然に還る」「土に還る」「野性に還る」
「自然に還る」「土に還る」「野性に還る」などが、還るを使った一般的な言い回しです。
「還る」の使い方
「還る」を「かえる」と読むのは常用外の読み方ですので、普通は使われません。
「還る」という言葉は使い方が限定されている言葉です。例えば、亡くなった後に埋葬することを「土に還す」と表現することがあります。また「自然に還る環境に優しい素材」という言い回しもあります。
どのような使い方にしても、「還る」という言葉は、ある物がそこから生じた大元や、根源的なものに戻るという意味です。「亡くなった人を土に還す」というような「還す」の使い方は、人間が大地から生まれた存在だという観念から生じています。
「自然に還る素材」というような「還す」の使い方は、この素材が元々は自然物だったという考えから来ています。
「還る」の類語
還るの類語・類義語としては、戦地などの遠方から祖国や故郷などに帰ることを意味する「帰還」、物を元々の素材や性質に戻すこと、複雑な物事を単純な要素に引き戻して考えることを意味する「還元」、奪い返すことを意味する「奪還」などがあります。
特に「帰還」という言葉には、元いた場所に「帰る」ことと、根源的なものに「還る」ことの二つの意味が重ねられています。
「帰る」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、元いた場所に戻ることを表現したい時などが挙げられます。「出かける」や「行く」とセットになっているのが「帰る」という動作です。
「元いた場所」とは家や学校、会社などの自分が所属している場所のことです。学校や会社は家を中心に考えれば「行く先」ですが、「他校での練習試合から学校に帰る」や「打ち合わせのために出かけていたが、今から帰社する」というような場合は「帰る先」です。
「返る」にも「今来た道を引き返す」のように、空間的に戻るという使い方がありますが、家などの目的地を念頭に置く場合には「帰る」が使われます。
「返る」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、裏表を入れ替えることや、失くした物が戻ってくることなどを表現したい時などが挙げられます。また、体の動作を表現する言葉に「返る」という言葉が使われていることがあります。
例文2の「反り返る」とは、背筋を強く伸ばすという意味の言葉です。また寝ている時に姿勢を変える「寝返り」や、転がることや足を滑らせることを「ひっくり返る」と言うこともあります。
返るという言葉には様々な意味があります。「帰る」や「還る」ではない「かえる」だと覚えておくことも出来ます。
「還る」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、元々の状態に戻ることを表現したい時などが挙げられます。還るという言葉は常用外の還の使い方なので、帰るや返るで代用される場合が多いです。例文1なら返る、例文2と例文3なら帰るを代用することが出来ます。
しかし元々の状態、根源的な状態に戻るという意味合いを出したい時には、振り仮名を振るなどして使うことが出来ます。