似た意味を持つ「念のため」(読み方:ねんのため)と「一応」(読み方:いちおう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「念のため」と「一応」という言葉は、どちらも万が一に備えることを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「念のため」と「一応」の違い
「念のため」と「一応」の意味の違い
「念のため」と「一応」の違いを分かりやすく言うと、「念のため」とは目上の人に対して使える、「一応」とは目上の人に対して使えないという違いです。
「念のため」と「一応」の使い方の違い
一つ目の「念のため」を使った分かりやすい例としては、「念のため彼女に直接聞いた方がいいだろう」「念のためもう一度探してみることにしました」「念のためクローゼットの裏を探しました」などがあります。
二つ目の「一応」を使った分かりやすい例としては、「この絵はこれで一応出来上がりです」「間違いがあるかもしれないので一応見直しましょう」「一応傘を持って行くことにしました」「一応保険証をを持って行きなさい」などがあります。
「念のため」と「一応」の使い分け方
「念のため」と「一応」はどちらも同じ意味を持つ言葉ですが、使い方に少し違いがあるので注意が必要です。
結論から言ってしまうと、「念のため」は目上の人に対して使うことが可能で、「一応」は目上の人に対して使えないというのが違いになります。
どちらの言葉も敬語ではありませんが、「一応」は相手にいい加減な印象を与えるのに対して、「念のため」は良い印象を与えることができます。ただし、「念のため」は敬語表現ではないので、前後の言葉を敬語にする必要があると覚えておきましょう。
「念のため」と「一応」の英語表記の違い
「念のため」を英語にすると「just to make sure」「by way of precaution」となり、例えば上記の「念のためクローゼットの裏を探しました」を英語にすると「I searched behind the closet just to make sure that nothing was there」となります。
一方、「一応」を英語にすると「just in case」「somewhat」「just to make sure」となり、例えば上記の「一応保険証をを持って行きなさい」を英語にすると「Take your health insurance card with you just in case」となります。
「念のため」の意味
「念のため」とは
「念のため」とは、万が一に備えることを意味しています。
表現方法は「念のため休む」「念のためご報告まで」「念のため確認させてください」
「念のため休む」「念のためご報告まで」「念のため確認させてください」「念のため確認させていただきたく存じます」「念のため申し添えます」などが、「念のため」を使った一般的な言い回しになります。
「念のため」の使い方
「念のため」を使った分かりやすい例としては、「念のため雨具を持って行きなさい」「念のため連絡先を教えてください」「念のため資料をもう一度お送りいたします」「本当にこれでいいのか念のため確認させてください」などがあります。
「念のため」はいっそう注意して確かめることや不足事態に備えるという意味をする言葉です。簡単に言うならば、万が一に備えることを意味しています。また、「念のため」は日常生活とビジネスシーンのどちらでも使うことが可能です。
「念のため」は敬語表現ではないのですが、とても良い印象を与える言葉なのでビジネスシーンなどで目上の人に対しても使うことができます。ただし、前後の文章を敬語にする必要があると覚えておきましょう。
また、「多分」「恐らく」「一応」などの曖昧な表現はビジネスシーンにおいて好まれません。そのため、「多分」「恐らく」「一応」などを使いたい場合は「念のため」に置き換えるようにしましょう。
「念のため」の類語
「念のため」の類語・類義語としては、めったにないことが起こるのに備えることを意味する「万が一に備えて」、注意して確かめることを意味する「念押し」、約束違反や言い逃れができないように念を押すことを意味する「釘を刺す」などがあります。
「一応」の意味
「一応」とは
「一応」とは、十分とは言えないが一通りであることを意味しています。その他にも、ほぼその通りであるが念のためのことの意味も持っています。
「一応」の使い方
「この作品はこれで一応出来上がりです」「一応完成したのでに見てもらうことにしました」などの文中で使われている「一応」は、「十分とは言えないが一通りであること」の意味で使われています。
一方、「間違いがあるかもしれないので一応見直しましょう」「雨が降る可能性があるので一応傘を持って行くことにしました」などの文中で使われている「一応」は、「ほぼその通りであるが念のためのこと」の意味で使われています。
「一応」は主に二つの意味を持つ言葉です。一つ目は十分とは言えないが一通りであること、つまり十分とは言えないが、最低限は満たしているという意味で使います。
二つ目はほぼその通りであるが念のためのこと、つまり万が一に備えるという意味になります。また、どちらの意味も副詞として使うというのが抑えておいた方が良い点です。
「一応」は上記の他に、一回や一度行くことの意味で名詞として使うこともできます。ただし、現代ではあまり使われない表現方法です。
「一応」の敬語表現
「一応」は敬語表現ではなく、かつあまり良い印象を与えない言葉なので、目上の人に対しては使えないと覚えておきましょう。もし、目上の人に対して使いたい場合は、「一通り」や「念のため」に置き換えるようにしましょう。
分かりやすい例を挙げると、「部長、資料の方は一応完成しました」とすると失礼な印象を与えるので、「部長、資料の方は一通り完成しました」とすると良い印象を与えることができます。
また、お客様に対して、「記入漏れがないか一応確認させていただきます」するといい加減な印象を与えるので、「記入漏れがないか念のため確認させていただきます」とすると良い印象を与えることができます。
「一応」の漢字の別表記
「一応」は漢字の別表記として、「一往」と書くこともできます。ただし、副詞で使う場合は「一応」の方を使うのが一般的です。
「一応」の類語
「一応」の類語・類義語としては、とりあえず全体に渡っていることを意味する「一通り」、他のことは差し置いてまず第一にすることを意味する「とりあえず」、先のことはともかく今のところのことを意味する「差し当たり」などがあります。
「念のため」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、万が一に備えることを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文のように、「念のため」は日常生活やビジネスシーンなど様々な場面で使うことができます。
「一応」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、十分とは言えないが一通りであることを表現したい時などが挙げられます。その他にも、ほぼその通りであるが念のためのことを表現したい時にも使います。
例文1から例文3の「一応」は十分とは言えないが一通りであること、例文4と例文5の「一応」はほぼその通りであるが念のためのことの意味で使っています。
「念のため」と「一応」はどちらも万が一に備えることを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、目上の人に対して使えるのが「念のため」、目上の人に対して使えないのが「一応」と覚えておきましょう。