【治める】と【収める】と【納める】と【修める】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

同じ「おさめる」という読み方、似た意味を持つ「治める」と「収める」と「納める」と「修める」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「修める」と「収める」と「納める」と「修める」という言葉は、読み方は同じでも意味は大きく違いますので、混同しないようご注意下さい。

「治める」と「収める」と「納める」と「修める」の違い

治めると治めると納めると修めるの違いを分かりやすく言うと、治めるとは国や地域や集団を統率することで、収めるとは物をある場所の中に入れることで、納めるとは物を差し上げることで、修めるとは技術や知識などを身につけることを意味しているという違いです。

一つ目の「治める」は「取りまとめる、率いる」という意味を持つ言葉です。例えば「政治」(読み方:せいじ)や「統治」(とうち)という言葉に使われていることから見て取れるように、治めるの対象は人間の集団である国・地域・集団・家などです。

二つ目の「収める」は「物をある場所にしまう」という意味の言葉です。例えば「回収」(読み方:かいしゅう)や「吸収」(読み方:きゅうしゅう)などの言葉から分かるように、収めるの対象は物品や金品などです。「収める」は「空間」を連想させる言葉です。

三つ目の「納める」は「物を差し上げる」という意味を持つ言葉です。「収納」(読み方:しゅうのう)という言葉がよく使われていることから分かるように、収めると納めるには似たところがあり、納める同様、収めるの対象は物品や金品です。

ですが「納める」には「目上の人に物をあげる」という意味合いがあります。収めるは場所ないし空間を連想させますが、「納める」は「立場」を連想させる言葉です。

四つ目の「修める」は「技能や知識などを身につける」という意味の言葉です。「修得」(読み方:しゅうとく)や研修(読み方:けんしゅう)などの言葉から分かるように、「習った知識や技法を自分の体に定着させて、染み渡らせる」のが「修める」です。

治めるの意味

治めるとは、国や地域、社会や集団などを乱すことなく安定化させることを意味しています。

法によって治めることを意味する「法治」(読み方:ほうち)、為政者に任せるのではなく自分たちで責任をもって治めることを意味する「自治」(読み方:じち)などの言葉に使われていることから分かるように、「治める」は社会や共同体の運営をすることです。

それもただ運営することではなく、「混乱がなく安定した秩序を保つような仕方で運営すること」が、「治める」という言葉によって表現される状況です。独裁者によって人民が虐げられているような状態、つまり支配は、本来は治めることではありません。

このことは「文治政治」と「武断政治」という区別に表れています。文治政治というのは、簡単に言えば、文化水準を高めることで混乱をなくし秩序を生み出そうとする政治のことで、武断政治とは逆に、逆らう人間には徹底した処罰をもって対処する政治の在り方です。

文治政治にだけ治の字が使われていて、武断政治には使われてはいません。このことに、治めるの治という字の特徴がはっきりと表れていると考えることが出来ます。

治めるの治という字は「治療」(読み方:ちりょう)などに使われることから、「正常な状態にする、丸くおさめる、整える」などの意味を持ちます。この意味も、文治政治の治の意味と重ねて覚えておくと、治めるという言葉の意味が分かりやすくなります。

なお治療のことを「治す」(読み方:なおす)と言い、また「熱をおさめる」の「おさめる」は「治める」と書くことも覚えておきましょう。

治めるの類義語としては、場の状況を支配することを意味する「制する」、組織などを自分の思い通りに操ることを意味する「牛耳る」などがあります

治めるの対義語としては、秩序と平穏を壊すことを意味する「乱す」、安定した状態を不安定な状態にすることを意味する「崩す」、安定した状態の物事に働きかけて混乱を生み出すことを意味する「かき回す」などがあります。

収めるの意味

収めるとは、物を一箇所に集めてしまうことを意味しています。「車庫に車をバックで収める」などのように使われることから分かるように、「収める」という言葉は「空間、場所」を連想させます。

容器の中に物を入れることを意味する「収容」(読み方:しゅうよう)や物を集めることを意味する「収集」(読み方:しゅうしゅう)という言葉から分かるように、「収める」とは、場所は場所でも、特に「一箇所に集める」という意味合いを持った言葉です。

例えば、意見などをひとまとにすることを「収斂」(読み方:しゅうれん)と言うことからもそれは明らかで、「会費の徴収」なども、「お金を一箇所に集める」という意味合いです。

収めるという言葉は、例えば「勝利を収める」や「成功を収める」などのように使われますが、この言葉も「勝利/成功を手中に収める」が一部省略された形だと考えると、「一箇所に集める」という意味合いがあることが分かります。

収めるの対義語としては、物を出した後、元合った場所に片付け合いことを意味する「散らかす」、逃げられて手の届かないところへ行かれてしまうことをを意味する「取りのがす」、チャンスなどを取り逃がすことを意味する「逸す」などがあります。

納めるの意味

納めるとは、目上の人に金品を差し上げることを意味しています。「収納」という言葉があるように、納めると収めるには似通ったところがあります。それは、例えば目的語が物品や金品だということは、納めると収めるの共通点です。

例えば神仏にお供え物をすることを意味する「奉納」(読み方:ほうのう)や政府などに物品や金品を納めることを意味する「上納」(読み方:じょうのう)を考えてみれば分かるように、納めるには「目上の人に物を差し出す」という意味があることが分かります。

空間的な意味が強いのが収めるで、「納める」は「身分や上下の立場」といった意味合いが強く出た言葉です。商品の「納期」(読み方:のうき)という言葉も、「顧客への納期」だというように考えると、上と下の区別があることが分かります。

また年度内の仕事が終わりであることを意味する「仕事納め」という言葉のように、「物事の終わり」を意味する使い方もあります。捕まった泥棒に対して「年貢の納め時」ということがありますが、これにも「終わり」という意味合いが出ています。

ですが、先にも出した「収納」のように、納めると収めるには意味の違いをはっきりと設けることが出来ず、慣例的に使い分けられている場合もあります。

修めるの意味

修めるとは、技能や知識を身につけることを意味しています。「修める」という言葉を理解するにあたっては、「身体に染み渡るように覚える」というニュアンスつかむことが肝心です。

修めるとは知識や技能の「修得」(読み方:しゅうとく)のことです。単に知識を学ぶことも、同じく「習得」と呼ばれますが、「修得」には「身体に染みついている」というニュアンスがあります。

戦前の愛国主義的な道徳教育として、「修身」(読み方:しゅうしん)という学校科目がありました。戦後GHQによって即座に廃止されることになりましたが、この修身という言葉は、修めると身体の強い結びつきを象徴しています。

また知識や技能を身につけるだけではなく、修得を通じて一個の人格としての完成を目指すという意味合いが、「修める」という言葉にはあります。道徳教育の「修身」は、考えや行動、人格などを規律正しく整えることを意味する「身を修める」ことでした。

そうした「正しく整える」という意味は、壊れている箇所を正しく整えることを意味する「修正」、直して元に戻すことを意味する「修復」などの言葉に繋がっています。

修めるの類義語としては、物事の本質や意味を理解して我が物として修得することを意味する「会得」、物事に熟練することを意味する「マスター」などがあります。

治めるの例文と使い方

1.邪馬台国という、いわば一個の国を治める女が卑弥呼だった。
2.彼は人望だけでこの荒くれ者だらかのグループを治める辣腕だ。
3.大きな群れを治めるライオンを観察したドキュメンタリー番組を見た。

この言葉がよく使われる場面としては、国や地方、組織や集団を統率することを表現したい時などが挙げられます。治めるという言葉には「秩序を安定的に保つ」より以上の意味はないのですが、多くの場合「治める」は「リーダー」を指し示す言葉として使われます。

数多くいる普通の役人も統治機構の中にいるわけですから、治めるという仕事に従事しているのですが、彼ら彼女らに対しては、普通治めるという言葉は使われません。

収めるの例文と使い方

1.中間レポートは6000字以内に収めること、という注意書きがあったのを見落としていた。
2.彼は選手としてはイマイチだったが、監督としてはこれ以上ないほどの成功を収めることが出来たと述懐した。
3.富を手中に収め、名声を我が物とした偉人の没落譚は滑稽極まりなかった。

この言葉がよく使われる場面としては、物をある場所や範囲内に入れることを表現したい時などが挙げられます。例文2の「成功を収める」や例文3の「富を手中に収める」は、比喩的な使い方です。

例文1も、6000文字がある範囲を指し示す言葉として機能しているので、「収める」という言葉を使って表現されています。

収めると納めるの使い分けは、「収納」という言葉があることから実は難しいですが、「ある空間や範囲におさめる」は基本的には「収める」を使えることを覚えておいてください。

物事の状況が収束し、元々の状態に戻ることを意味する「元の鞘に収まる」(読み方:もとのさやにおさまる)という言葉なども、刀の「さや」という容器のイメージがあることを読み取れるようにしておいてください。

納めるの例文と使い方

1.会費を納めるのを忘れていて、督促状が届いた。
2.延期に延期を繰り返したが、なんとか版元に新作を納めることが出来た。
3.米で納めていた年貢が、税金に変わった時の人々の暮らしの変化は激しいものだった。

この言葉がよく使われる場面としては、目上の人や組織に金品を差し上げることを表現したい時などが挙げられます。収めるとは異なり、納めるは上下関係のニュアンスを持った言葉です。「上納金」や「奉納演武」など、目上の人に何かをあげるという意味です。

こうしたのとは別の意味の修めるとしては、その年の仕事が終わりであることを意味する「仕事納め」という言葉などがあります。ここでは「納める」は、「物事の終わり」を意味しています。

修めるの例文と使い方

1.満足に学業を修めることが出来ない人が、世界にはたくさんいる。
2.せっかく経済学部に入ったので資格の一つでもと思い、簿記を修めることにした。
3.戦前の修身という科目は、身を修めるという意味で、それには人格や精神、身体などを磨き上げて形成するという意味があった。

この言葉がよく使われる場面としては、知識や技能を身につけること、修得を表現したい時などが挙げられます。「修める」とは「身体に染み込ませる」まで徹底的に身につけることです。

そのように徹底的に身につけられた技能や知識、考え方は、その人の性格や人格を大きく決定づけます。このような意味合いから、戦前の愛国主義的な道徳教育は「修身」という科目でした。

修身とは例文3にあるように、心や体を徹底的に磨き上げ一個の完成品のように形成することを目的としていました。愛国教育ほど苛烈ではないとしても、「修める」も同じような意味合いを含むことは、ぜひとも理解しておくべきポイントです。