似た意味を持つ「無辜」(読み方:むこ)と「無罪」(読み方:むざい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「無辜」と「無罪」という言葉は、どちらも「罪がないこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
無辜と無罪の違い
無辜と無罪の意味の違い
無辜と無罪の違いを分かりやすく言うと、無辜とは書き言葉で使われ、無罪とは話し言葉でも書き言葉でも使われるという違いです。
無辜と無罪の使い方の違い
一つ目の無辜を使った分かりやすい例としては、「無辜の市民を犠牲にする戦争には反対です」「多数の無辜の命を奪うテロが発生した」「無辜である自分に疑いがかけられている」「無辜の者を犯罪者に仕立て上げる」などがあります。
二つ目の無罪を使った分かりやすい例としては、「弁護人は無罪を主張していた」「時効で犯人が無罪放免になるのは納得できない」「有罪が確定するまで無罪と推定されます」「最高裁において逆転無罪となった」などがあります。
無辜と無罪の使い分け方
無辜と無罪という言葉は、どちらも「罪のないこと」という共通する意味を持っていますが、使い方には違いがあります。
無辜は日常会話ではあまり使われず、主として文章を書くときに使われる文章語です。聞き馴染みのない言葉ですが、文学作品の中で用いられている表現です。一方、無罪は日常会話でも文章語でも用いられ、汎用性のある言葉です。
また、「罪のないこと」のニュアンスにも若干の違いがあります。無罪は「法律を犯していない」という意味合いが強いことに対し、無辜は「非が無い」という意味合いが強い言葉です。何の罪も犯していないのに人災や天災にあう一般市民を「無辜の民」「無辜の市民」などと表現します。
これらが、無辜と無罪という言葉の違いになります。
無辜と無罪の英語表記の違い
無辜も無罪も英語にすると「innocent」「blameless」「guiltless」となり、例えば上記の「無辜の市民」を英語にすると「an innocent citizen」となります。
無辜の意味
無辜とは
無辜とは、罪のないこと、罪のない人を意味しています。
表現方法は「無辜の愛」「無辜の民」「無辜の怪物」
「無辜の愛」「無辜の民」「無辜の怪物」などが、無辜を使った一般的な言い回しです。
無辜の使い方
無辜を使った分かりやすい例としては、「戦争は多くの無辜の民を犠牲にします」「無辜の人々がテロリストの標的になる」「無辜のあなたの潔白を証明したい」「ドラキュラは無辜の怪物です」などがあります。
その他にも、「交通事故で無辜の命が奪われることがあります」「無辜の人に容疑がかけられている」「災害からの復興は無辜の祈りです」「石狩に無辜の民の像があります」「無辜の不処罰を明確にした制度です」などがあります。
無辜とは、罪のないことや罪のない人を意味し、日常会話ではほとんど使われず、文学作品などで用いられる文章語です。無辜という言葉の「辜」という漢字は、罪人を板や柱にからだを縛りつける「はりつけ」を表し、重い罪を意味します。
「無辜の民」の意味
上記の例文にある「無辜の民」とは、何の罪もないの人々のことであり、主に天災や人災などにあった人々を指す文学的表現です。「無辜之民」という四字熟語もあります。
無辜の対義語
無辜の対義語・反対語としては、身に覚えのない罪をいうたとえを意味する「濡れ衣」、罪を犯していないのに罪があるとされることを意味する「無実」などがあります。
無辜の類語
無辜の類語・類義語としては、心や行いがきれいなことを意味する「潔白」、心が清らかで私欲がないことを意味する「清廉」などがあります。
無罪の意味
無罪とは
無罪とは、罪がないことを意味しています。
その他にも、「刑事裁判で、被告人の行為が罪にならないか、または犯罪が証明されないこと」の意味も持っています。
表現方法は「無罪にする」「無罪になる」「無罪を主張する」
「無罪にする」「無罪になる」「無罪を主張する」などが、無罪を使った一般的な言い回しです。
無罪の使い方
「彼は無罪だと信じています」「父が無罪であることは明らかです」「自分は無罪だと抗議した」「海外渡航の手続きで無罪証明書を求められた」などの文中で使われている無罪は、「罪がないこと」の意味で使われています。
一方、「無罪推定の原則を無視した報道だ」「最高裁は無罪判決を言い渡した」「依頼人を無罪放免に導く敏腕弁護士です」「無罪請負人と呼ばれている伝説の弁護士がいます」などの文中で使われている無罪は、「刑事裁判で被告人の行為が罪にならないこと」の意味で使われています。
無罪とは、広義では罪のないことを意味し、前述の無辜と同じ意味を持ちます。狭義では、 刑事裁判において、被告人の行為が罪にならない、または犯罪が証明されないことを意味します。法律用語ですが、日常語としても用いられています。
「無罪放免」の意味
無罪という言葉を用いた日本語には「無罪放免」があります。勾留中の被告人が無罪判決を受けて釈放されることであり、転じて、疑いがすっかり晴れることも意味します。
無罪の対義語
無罪の対義語・反対語としては、罪のあることや犯罪の成立が認められることを意味する「有罪」、罪がないのに罰せられることを意味する「冤罪」などがあります。
無罪の類語
無罪の類語・類義語としては、根拠となる事実が全くないことを意味する「事実無根」、心が清くて私欲がなく後ろ暗いところのないことを意味する「清廉潔白」などがあります。
無辜の例文
この言葉がよく使われる場面としては、罪がないこと、罪がない者を表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「無辜の祈り」とは、「罪がない人々の祈り」「罪とは無関係の一般市民の祈り」の意味で使われています。例文4の「無辜の怪物」とは、過去をねじ曲げられた怪物のことであり、転じて、実際とは無関係に捏造された逸話や印象による影響を表します。
無罪の例文
この言葉がよく使われる場面としては、罪のないこと、 刑事裁判で判決により被告人の行為が罪とならないことを表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「推定無罪の原則」とは、「有罪と宣告されるまでは無罪と推定される」という近代法の基本原則のことです。「疑わしきは罰せず」「疑わしきは被告人の利益に」という言葉もあります。
無辜と無罪という言葉は、どちらも「罪がないこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、文語的表現をしたい時は「無辜」を、口語的表現をしたい時は「無罪」を使うようにしましょう。