似た意味を持つ「誂える」(読み方:あつらえる)と「設える」(読み方:しつらえる)と「拵える」(読み方:こしらえる)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「誂える」と「設える」と「拵える」という言葉は、物を作り上げることという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「誂える」と「設える」と「拵える」の違い
「誂える」と「設える」と「拵える」の意味の違い
「誂える」と「設える」と「拵える」の違いを分かりやすく言うと、「誂える」は依頼することを表現する時に使い、「設える」は設置することを表現する時に使い、「拵える」は製作することを表現する時に使うという違いです。
「誂える」と「設える」と「拵える」の使い方の違い
「誂える」という言葉は、「礼服を誂える必要がある」「誂えてもらった着物は上等なものだった」などの使い方で、人に頼んで作らせることを意味します。
「設える」という言葉は、「台所に棚を設える」「車にカーナビを設えてもらった」などの使い方で、部屋などに家具を備え付けたり、整えて飾りつけることを意味します。
「拵える」という言葉は、「弁当を拵えてもらって嬉しい気持ちだ」「彼は言い拵えるのが上手い」などの使い方で、材料を使って、形あるものや機能をもったものを作り上げることを意味します。
「誂える」と「設える」と「拵える」の使い分け方
「誂える」と「拵える」はどちらも何かを作り上げることを意味に含む言葉ですが、前者は作ることを人に頼む時に使いますが、後者は動作主が作る時に使います。
また、「設える」もその場を作り上げるという意味では「誂える」や「拵える」と同じような意味と言えますが、「設える」は既製品などを設置することも含みます。そのため、一から作り上げる場合には使われません。
これが「誂える」、「設える」、「拵える」の明確な違いです。
「誂える」の意味
「誂える」とは
「誂える」とは、人に頼んで作らせることを意味しています。
「誂える」の語源
古語である「誂ふ」は頼むことや注文することを意味する言葉です。奈良時代に使われていた上代日本語では「あとらふ」という読み方をしていましたが、後に「あつらふ」という読み方をするようになりました。
この「誂ふ」が現代では「誂える」という形で使われるようになり、物事を頼んで何かを作らせることを意味するようになりました。
「誂え向き」の意味
「誂える」を使った言葉として、「誂え向き」があります。これは、人に頼んだように状況や周囲の環境などが希望通りであることを意味する言葉で、「お誂え向き」という使い方もなされます。
「誂える」の使い方
「誂える」を使った言葉として、「洋服を誂えてもらう」「ドレスを誂えるために好みの物を探す」「誂えたように事が上手く運んでいる」などがあります。商品だけでなく、比喩として使うことで環境などにも使うことができます。
「誂える」の類語
「誂える」の類語・類義語としては、人に依頼したり自分が希望したりする時に付ける条件を意味する「注文」、注文を出すことを意味する「発注」があります。
「設える」の意味
「設える」とは
「設える」とは、部屋などに家具を備え付けたり、整えて飾りつけることを意味しています。
「設える」の読み方
「設える」は「しつらえる」という読み方をしますが、「もうえる」や「せつえる」などの読み方はしません。
「設える」の由来
「室礼」(読み方:しつらい)という平安時代の言葉が由来となっています。「室礼」は飾りや身の回りの道具をその場にふさわしく整えることを意味する言葉です。この「室礼」が「設い」に変化し、今日の「設える」として使われるようになりました。
「設える」の使い方
「設える」を使った表現として、「部屋に設えられた新しい家具」「仏壇を設えるために部屋を片付ける」「パソコンのモニターを設える」などがあります。「設置する」などの言葉が使われることが多く、「設える」という言葉はあまり使われていません。
「設える」の対義語
「設える」の対義語・反対語としては、物を適当な場所にきちんと戻すことを意味する「片付ける」があります。
「設える」の類語
「設える」の類語・類義語としては、部品などを取り付けることを意味する「装着」、ある物事や条件を作り定めることを意味する「設定」、あらかじめ必要な物を揃えたり体制を整えたりして用意をすることを意味する「準備」などがあります。
「拵える」の意味
「拵える」とは
「拵える」とは、材料を使って、形あるものや機能をもったものを作り上げることを意味しています。
その他にも、手を加えて美しく見せるようにすることや、工夫をして実際にあるかのように見せかけること、何とか必要なものを整えること、友人や愛人を作ることなどの意味も持ちます。
「拵える」の読み方
「拵える」は「こしらえる」や「こさえる」という読み方をする言葉で、「こさえる」は「こしらえる」の俗な言い方とされています。
「拵える」の使い方
「拵える」を使った表現として、「朝食に味噌汁を拵える」「金を拵えなければならない」「女を拵えると聞いた瞬間怒りがこみ上げた」などがあります。「女を拵える」は男性が愛人を持つことを意味する慣用表現です。
「拵える」の対義語
「拵える」の対義語・反対語としては、物に力を加えてもとの形を崩したり失わせたりすることを意味する「壊す」、力を加えてもとの形を崩すことを意味する「潰す」があります。
「拵える」の類語
「拵える」の類語・類義語としては、機械などで物を作ることを意味する「製作」、生活に必要な物資などを作り出すことを意味する「生産」、原料に手を加えて製品にすることを意味する「製造」、新しい物を初めて作り出すことを意味する「創造」などがあります。
「誂える」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人に頼んで作らせることを意味する時などが挙げられます。
例文3の「誂えたかのような」は「お誂え向きに」や「誂え向きに」などの表現に置き換えて使うことができます。
「設える」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、部屋などに家具を備え付けたり、整えて飾りつけることを意味する時などが挙げられます。
例文2の「設える」は依頼して作って設置してもらうことを意味するため、「誂える」という言葉に置き換えて使うことができます。
「拵える」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、材料を使って、形あるものや機能をもったものを作り上げることを意味する時などが挙げられます。
例文2の「顔を拵える」とは、顔に化粧をすることを意味する慣用表現です。
例文3の「腹を拵える」とは、食事を済ませることを意味する慣用表現です。
「誂える」と「設える」と「拵える」どれを使うか迷った場合は、依頼することを表す場合は「誂える」を、設置することを表す場合は「設える」を、製作することを表す場合は「拵える」を使うと覚えておけば間違いありません。