似た意味を持つ「不世出」(読み方:ふせいしゅつ)と「超絶」(読み方:ちょうぜつ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「不世出」と「超絶」という言葉は、どちらも「非常に優れていて立派なこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
不世出と超絶の違い
不世出と超絶の意味の違い
不世出と超絶の違いを分かりやすく言うと、超絶よりも不世出の方が、優れている程度が大きいことを表すという違いです。
不世出と超絶の使い方の違い
一つ目の不世出を使った分かりやすい例としては、「彼の文章力には不世出の才を感じます」「不世出のアーティストの回顧展が開催されています」「不世出の天才と評されたバレリーナがいます」「不世出の起業家の半生は波乱万丈でした」などがあります。
二つ目の超絶を使った分かりやすい例としては、「超絶主義はアメリカ東部で発展した哲学運動です」「超絶当たるという占いを教えてもらいました」「超絶した技巧を駆使したピアノ曲練習曲です」「超絶縁計で微小電流を測定する」などがあります。
不世出と超絶の使い分け方
不世出と超絶という言葉は、どちらも「非常に優れていて立派なこと」を表すプラスイメージの言葉ですが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
不世出とは、めったにこの世に現れないほど非常に優れていることを意味します。「不世出のアーティスト」とは、そうそう見られないほどの類まれなる才能に恵まれたアーティストであることを表現しています。
超絶とは、ひときわ抜きん出て優れていることを意味します。他に比べて優れているというニュアンスがあり、「超絶当たる占い」とは、いくつかある占いの中でも他より目立ってよく当たる占いであることを表しています。
つまり、不世出はめったに世に出ないほど優れていることを表し、超絶は他に比べて優れていることを表します。二つの言葉を比べると、まれな優秀さを表す不世出の方が超絶よりも、優れている程度が大きい表現だと言えるでしょう。
不世出と超絶の英語表記の違い
不世出を英語にすると「rare」「extraordinary」「unparalleled」となり、例えば上記の「不世出の才」を英語にすると「rare gifts」となります。
一方、超絶を英語にすると「excellence」「superiority」「transcendence」となり、例えば上記の「超絶主義」を英語にすると「transcendentalism」となります。
不世出の意味
不世出とは
不世出とは、めったに世に現れないほど優れていることを意味しています。
不世出の読み方
不世出の読み方は「ふせいしゅつ」です。誤って「ふよしゅつ」「ふせしゅつ」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「不世出の天才」「不世出の政治家」「不世出の英雄」
「不世出の天才」「不世出の政治家」「不世出の英雄」などが、不世出を使った一般的な言い回しです。
不世出の使い方
不世出を使った分かりやすい例としては、「不世出の天才と呼ばれた落語家がいます」「これは不世出の歌劇王の生涯を描いた映画です」「彼は不世出の漢文学者と評されています」「不世出的天才といえば誰を思い浮かべますか」などがあります。
その他にも、「今もって語られる不世出の名画です」「不世出の天才であるシェークスピアの戯曲を英語の原文で読んでいます」「不世出の投資家が業界から身を引く意思を表明した」「オグリキャップは不世出のサラブレッドです」などがあります。
不世出とは、めったに世に出ることがないほどに優れていることを意味し、能力や価値などが他より抜きん出ていることを表す言葉です。不世出という漢字の組み合わせから、「出世しない」の意味で誤用されることがありますが、全く逆の意味になるので注意しましょう。
不世出の由来
不世出という言葉の由来は、三文字の漢字が持つ意味にあります。「世」は世の中や時代、「出」は姿を現すことであり、これらを打ち消す意味の「不」が組み合わさり、世の中に現れないこと、めったに姿を表さないことを表す言葉になりました。
不世出の対義語
不世出の対義語・反対語としては、それより下がないほど非常に劣っていることを意味する「下の下」、凡庸で劣っていることを意味する「庸劣」などがあります。
不世出の類語
不世出の類語・類義語としては、めったに見られないことや世にもまれなことを意味する「希代」、世に並ぶものがないほどすぐれていることを意味する「絶世」、多くのものの中でずば抜けて優れていることを意味する「傑出」などがあります。
超絶の意味
超絶とは
超絶とは、程度が他よりも、遥かにとび抜けて優れていることを意味しています。
その他にも、「他とは無関係に、より高い立場にあること」「カント哲学で、あらゆる可能的経験をこえた超感性的なものについての認識、超越」の意味も持っています。
超絶の使い方
「彼の超絶した力量を見せつけられた」「私には超絶技巧練習曲は難易度が高すぎる」「宇宙に超絶パワーの究極生命体が存在すると信じています」「超絶濃厚チーズケーキに感動しました」などの文中で使われている超絶は、「程度がとび抜けて優れていること」の意味で使われています。
一方、「俗世から超絶した暮らしに憧れています」の文中で使われている超絶は「より高い立場にあること」の意味で、「超絶主義はアメリカ的思想と言えるだろう」の文中で使われている超絶は「可能的経験をこえた超感性的なものについての認識」の意味で使われています。
超絶とは、上記の例文にあるように複数の意味を持つ言葉ですが、一般的には、「程度がとび抜けて優れていること」「より高い立場にあること」の意味で用いられています。哲学用語での超絶は「超越」とも言われ、カント哲学の超感性的なものについての認識であり、超越論的と区別されました。
「超絶主義」の意味
上記の例文にある「超絶主義」とは、19世紀中頃、R・W・エマソンらによって主張されたアメリカ・ロマン主義思想のことです。カントらヨーロッパの哲学者や文学者の影響を受けながら、アメリカで独自の発展を遂げ当時のアメリカ楽観主義を支えました。「超越主義」とも言います。
四字熟語「超絶怒涛」の意味
超絶を用いた四字熟語には「超絶怒涛」があります。ある事柄に関して、程度がずば抜けて素晴らしく、その勢いが凄まじいことを表します。怒涛とは、大きい波がいかり狂ったように、強烈な勢いをもって迫ってくることを表現した言葉です。
超絶の対義語
超絶の対義語・反対語としては、他に比べて劣っていることを意味する「遜色」、他のものと比較して劣っているように見えることを意味する「見劣り」などがあります。
超絶の類語
超絶の類語・類義語としては、群を抜いて優れていることを意味する「卓越」、他のものより抜きん出て優れていることを意味する「秀逸」、多くの中で特に優れていることを意味する「抜群」、他より目立って優れてていることを意味する「出色」などがあります。
不世出の例文
この言葉がよく使われる場面としては、まれにしか世に現われないほど優れていることを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「不世出の天才」の意味は、滅多に世に現れないほどの天性の才能の持ち主のことです。極めて独自性の業績を示したり、あまりに高い才能を示した人への賛辞的形容に使われています。
超絶の例文
この言葉がよく使われる場面としては、程度が抜きん出ていること、より高い立場にあること、 哲学で理解や自然などから遥かに抜きん出ていることを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3にある超絶は、程度が抜きん出ていることの意味で用いられています。例文1の「超絶技巧」とは、主に音楽の分野で、並みの演奏家にはとても演奏できないほどの難易度の高い演奏技術の意味で用いられています。
例文4の超絶は、ある考え方などから脱してより高い立場にあることの意味で用いられ、例文5の超絶は、哲学用語として用いられています。
不世出と超絶という言葉は、どちらも「非常に優れていて立派なこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、めったに世に出ないほど優れていることを表現したい時は「不世出」を、他と比べて優れていることを表現したい時は「超絶」を使うようにしましょう。