【忖度】と【斟酌】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「忖度」(読み方:そんたく)と「斟酌」(読み方:しんしゃく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「忖度」と「斟酌」という言葉は、どちらも推し量ることを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。



忖度の斟酌違い

忖度と斟酌の違いを分かりやすく言うと、忖度とは特に目上の人にあれこれと気をつかうこと、斟酌とは相手の立場に関係なく気をつかうことを意味しているという違いです。

一つ目の「忖度」は「目上の人に気を配る」という意味の言葉です。この言葉は少なくとも平安時代から存在していた言葉ですが、江戸時代まではほとんど使われていた形跡がなく、明治時代になってから使われることが多くなった言葉です。

使用頻度は違っても、意味はほぼ一定で、20年ほど前までは「相手の気持ちを推測する」という程度の意味しか持っていませんでした。国語辞書にはこの意味が載っています。

例えば脳死判定を受けた人や重度の障害によって意思表示をすることが出来ない人の考えを「自分の身になって考える」というような使われ方をしていました。

しかし2000年前後から政治などの分野で「上位者の意志や意向を推し量り、取り計らう」というような使い方がされるようになりました。従来は上下関係に限定されず使われていましたが、それ以降は目上の人の意向を汲み取るという意味で使われるようになりました。

また従来は単に推測するだけでしたが、「推測して上で行動する」というニュアンスも付け加えられています。目上の人が何も言わずとも、その心中を察して、その人にとって都合の良いように行動する、という意味で、忖度という言葉が使われるようになっています。

二つ目の「斟酌」は「事情や状況などを考慮して取り計らう」という意味の言葉です。ここでいう事情や状況の中には、その場の状況などの他に、相手の心中も含まれます。相手の心中を察するという場合には、忖度とほとんど同じ意味になります。

忖度という言葉は、斟酌に意味が近くなってきていると考えられています。

ただし、斟酌は忖度とは違って、目上の人にだけ限定されません。友人や後輩や赤の他人の意向を察することも斟酌です。

また、斟酌は必ずしも相手の心情だけに限定されません。その場の状況などを考え合わせて適切に行動するという意味でも使うことが出来ます。

例えば夕飯の支度をする時に、家族はカレーが良いと言っているけれども、三日前にハヤシライスだったばかりだから違うメニューに決める場合などが、日常的な場面での斟酌です。三日前にハヤシライスだったことを考え合わせるという点が斟酌に当たります。

忖度の意味

忖度とは、特に目上の人の意向に合うように取り計らうことを意味しています。忖度という言葉は、目下の人が勝手に目上の人の意向を汲んで、それに沿うように行動することです。

忖度の忖は「おしはかる」という意味で、度は「ほどあい」という意味です。忖度は文字通りには「相手の心の程度を推し量る」という意味になります。

この言葉は忖の字が常用外ですが、政権のスキャンダルから認知され始め、新聞やテレビを始めとしたマスメディアでもよく見かける言葉になっています。元々の意味は「相手の考えを推測する」という程度の意味でしたが、2000年前後から意味が変わり始めました。

「忖度」は、「目上の人の意向を推し量り、その人の都合のいい様に行動する」という意味の言葉になりました。ただし、国語辞書にはこうした意味は載っていないことが多いです。辞書を編纂するのにはとても時間がかかるためです。

忖度するのに言葉は要りません。目上の人がはっきりとした命令や指示をしなくても、態度や雰囲気から察して行動することが忖度です。そうした意味で、忖度は不透明性と結びつけられて考えられることが多く、否定的なイメージを持たれます。

確かに、忖度にはいわば「あうんの呼吸」のようなところがあります。仮に一から十まで全て言葉で説明が必要だとすれば、業務上のスピードは落ちますし、そもそもコミュニケーション自体が成り立ちません。

しかし上司と部下の間に忖度の関係が成り立っていると、目上の人は責任を負うことなく、部下にリスクのある仕事をさせることが出来ます。「部下が勝手にやった」と言い張ればいいからです。

責任の所在を明らかにするために、こうした不透明なコミュニケーションは意識的に排除すべきだと考える人が多くなってきています。

忖度の類語・類義語としては、相手にしつこく勧めることを意味する「慫慂」(読み方:しょうよう)などがあります。

この言葉は辞書的な意味では「相手にしきりに勧める」という意味ですが、実際の使われ方を見ると、多くは「社会で当然視されている風潮などを押し付ける」という意味で使われていることが分かります。例えば「結婚が慫慂される」などの場合を考えてみて下さい。

忖度の度の字を使った言葉としては、大小や強弱などの度合を意味する「適度」、物を揃えて準備をすることを意味する「支度」などがあります。

斟酌の意味

斟酌とは、事情や状況などを考えて適切に行動することを意味しています。斟酌という言葉は、忖度よりも広い意味を持ちます。

斟酌も忖度と同様に「推し量る」ことです。しかし対象は相手の心中や意向だけではなく、外の世界の状況などを取ることもあります。例えば目的地までの移動に複数の手段が考えられる時、時間や費用、体力や天候など様々な要素を考慮して考えることも斟酌です。

また忖度は目上の人に対する動作ですが、斟酌に立場は関係ありません。目上の人だけではなく、対等な人や目下に対しても斟酌することはあります。

このほか、斟酌には「遠慮して控えめにする」という用法があります。「斟酌のない言動」という表現は、遠慮のない言動のことです。

忖度という言葉は意味が変化して、斟酌の意味に近づいているとも考えられています。なので、忖度という言葉が変化した時に、なぜ斟酌という言葉があるのにわざわざ忖度を使うのかと疑問視されたこともありましたが、理由はいまだに分かっていません。

なお、忖度は悪い意味で使われることが多くなりましたが、斟酌にはそのような悪いイメージはありません。

斟酌の類語・類義語としては、様々な要素を合わせて考えることを意味する「考慮」「勘案」、相手に気配りすることを意味する「配慮」、何かを考える時に、あることを考えの中に入れることを意味する「顧慮」などがあります。

忖度の例文

1.政治の世界は未だに忖度問題で持ち切りだ。
2.政治家や官僚の忖度発言が話題になっている。
3.忖度は2017年の流行語にもなったが、未だによく使われる言葉だ。
4.政権を過度に忖度したとして、警察の行為が議論の的になっている。
5.忖度は日本語特有の言葉で、外国人にはなかなか理解しにくいものだと言われている。

この言葉がよく使われる場面としては、目上の人の意向を勝手に汲んで行動することを表現したい時などが挙げられます。

この言葉は元々は「相手が何を考えているかを推測する」という意味でしたが、2000年頃から政治の世界で従来とは異なった意味で使われ始め、2017年の政権のスキャンダルと共に一気に世の中に広まりました。

忖度は目下の人が勝手にやることで、目上の人は何の責任も負わされることはありません。そのため忖度は悪しき風潮だと考えられるようになってきています。責任の所在を明らかにして行われるべき物事では明確な命令と指示が徹底されるべきなのです。

なお例文5にあるように、忖度という言葉は外国語にはない日本語独特のニュアンスの言葉だと考えられています。もちろん外国でも、言葉に頼らずに相手の気持ちを汲む場面はあります。しかし明確な命令や指示がなしに動くという心理はなかなか理解されません。

斟酌の例文

1.ビジネスの場では斟酌することも大切だ。
2.ご斟酌賜りましたこと、痛く感謝申し上げます。
3.相手の気持ちを斟酌することは大切なことだけれど、それだけじゃなく、キチンと言葉にしたコミュニケーションも必要だよ。
4.彼はまさに斟酌折衷といったところで、どんな状況でも強かに乗り切る男だ。
5.このごろは斟酌を使うべきところで、忖度という言葉が使われるようになってきている。

この言葉がよく使われる場面としては、相手の事情を考えに含めることを表現したい時などが挙げられます。斟酌も「相手の気持ちを推し量る」という意味で使われることが多いですが、忖度とは異なり悪いイメージは持たれていません。

例文1や2にあるように、斟酌はビジネスシーンで相手方の事情を勘案する意味で用いられることの多い言葉です。例えば「ご斟酌下さいますようお願い申し上げます」「なにとぞご斟酌ください」「事情を斟酌いただき感謝申し上げます」などのように使われます。

なお例文4の「斟酌折衷」という言葉は、「色々な事情を勘案して真ん中を取る」という意味の言葉です。

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