似た意味を持つ「首相」(読み方:しゅしょう)と「総理」(読み方:そうり)と「総裁」(読み方:そうさい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どの言葉を使えば日本語として正しい言葉となるのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「首相」と「総理」と「総裁」という言葉は、内閣総理大臣という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
首相と総理と総裁の違い
首相と総理と総裁の使い分け方
首相と総理と総裁の違いを分かりやすく言うと、首相は内閣総理大臣の通称として使い、総理は内閣総理大臣の略称として使い、総裁は政党のトップを表現する時に使うという違いです。
首相と総理と総裁の使い方の違い
首相という言葉は、「首相官邸にて会議が行われる」「歴代首相を覚えるのは一苦労だ」などの使い方で、内閣総理大臣の通称を意味します。
総理という言葉は、「総理大臣による被災地の視察」「実際には総理がどういう仕事をこなしているのかわからない」などの使い方で、内閣総理大臣を意味します。
総裁という言葉は、「総裁選挙に立候補した人たち」「日本銀行総裁」などの使い方で、政治や公的機関において最終決裁権を持つ代表職を意味します。
どの言葉も内閣総理大臣の名前のすぐ後ろに付けて敬称のように使うことができますが、首相と総裁は日本だけでなく諸外国にもおり、その上総裁は内閣総理大臣だけではなく、日本銀行のトップなどにも使う言葉です。
そのため、どれを使っても間違いではないですが、公的な文書や法律などで通称である首相は使われることはありません。また、総裁と表記されているものが必ずしも総理大臣であるとは限らないため、読み取る際には留意しましょう。
これらが、首相、総理、総裁の明確な違いです。
首相の意味
首相とは
首相とは、内閣総理大臣の通称を意味しています。また、諸外国の内閣のトップを指す時にも首相という言葉を使うことができます。
首相がいる諸外国として、イギリス、スウェーデン、オランダなどが挙げられます。イギリスには王室が残っていますが、日本の天皇と同じようにイギリスの国王には政治の権力はなく、首相が政治権力を持ちます。
また、フランス、ロシア、韓国には首相だけではなく大統領も存在しています。ロシアと韓国は大統領が政治権力を持っていますが、フランスでは外交を大統領が、内政を首相が行うといった役割分担がなされています。
首相を使った言葉として、「首相指名選挙」「首相指示」があります。
「首相指名選挙」の意味
一つ目の「首相指名選挙」とは、国会で内閣総理大臣を指名するための選挙を指す言葉で、首班指名選挙や内閣総理大臣指名選挙とも言います。衆議院と参議院がそれぞれ国会議員の中から指名を行い、万が一それが異なった場合、衆議院が指名した者が当選となります。
「首相指示」の意味
二つ目の「首相指示」とは、政策の実現や問題への対応を図るために、担当する国務大臣や行政機関などに行う指示を意味する言葉で、総理大臣指示や総理指示とも呼ばれます。
首相の類語
首相の類語・類義語としては、世襲によって国を治める最高位の人を意味する「君主」、一国の君主を意味する「国王」、君主の称号の一つである「皇帝」、ある分野や社会で非常に大きな権力や支配力を持つ人を意味する「帝王」などがあります。
首相の首の字を使った別の言葉としては、順位の最上位を意味する「首位」、その国の中央政府のある都市を意味する「首都」、ある期間の初めを意味する「期首」、組織や団体の中心にいて指導的な役割を果たす人を意味する「首脳」などがあります。
総理の意味
総理とは
総理とは、全体を統一して管理することを意味しています。また、内閣総理大臣の略称でもあります。
総理を使った言葉として、「総理衙門」「総理府」があります。
「総理衙門」の意味
一つ目の「総理衙門」(読み方:そうりがもん)とは、中国の清朝末期に外交を専門としていた役所を意味する言葉です。1861年アロー戦争の後に設置され、1901年には外務省とってかわられたことから影響力が低下し、廃止されることになりました。
「総理府」の意味
二つ目の「総理府」とは、内閣総理大臣自らが分担管理する事務や、各行政機関の調整に関わる事務を担当していた日本の行政機関の一つです。1949年に新設され、2001年に内閣府に統合されることとなったため、総理府という名称では今は存在しません。
総理の類語
総理の類語・類義語としては、取り締まったり指図をしたりすることを意味する「監督」、全体をまとめて統轄して監督することを意味する「統監」、著述や編集などを監督することを意味する「監修」、国政などを統括することを意味する「総統」などがあります。
総理の理の字を使った別の言葉としては、団体を代表して担当事務を処理する特定の役職を意味する「理事」、ある規準などから外れないよう全体を統制することを意味する「管理」、物事を取りさばいて始末をつけることを意味する「処理」などがあります。
総裁の意味
総裁とは
総裁とは、政党や銀行などのトップとして全体を取りまとめる職務を意味しています。
総裁を使った言葉として、「総裁選」「総裁政府」があります。
「総裁選」の意味
一つ目の「総裁選」とは、総裁選出のために行われる選挙を指す言葉ですが、今日では政権を握る自由民主党の党首がほとんど内閣総理大臣を兼任していることから、内閣総理大臣を選出する選挙を意味します。
総裁が内閣総理大臣を兼任する場合には、所属している党の事務は幹事長が主に担当することになっています。
「総裁政府」の意味
二つ目の「総裁政府」とは、1795年フランス革命末期に成立した共和政の行政府を指す言葉です。5人の総裁からなる集団指導体制がとられたものの、度重なるクーデタによって政治不安が強まり、ナポレオンによって総裁政府は1799年に倒されることとなります。
総裁の類語
総裁の類語・類義語としては、病院など院という漢字のつく施設や機関のトップを意味する「院長」、団体や会の仕事を統括して代表する人を意味する「会長」、会議の席で議事を進行させ採決を行う人を意味する「議長」などがあります。
総裁の裁の字を使った別の言葉としては、物事の善悪や可否を判断して決めることを意味する「裁定」、物事の正と不正を判定することを意味する「裁判」、法律などの社会的なルールに背いた者に対して加えられる罰を意味する「制裁」などがあります。
首相の例文
この言葉がよく使われる場面としては、内閣総理大臣の通称として使われる時などが挙げられます。
例文2の「首相動静」とは、内閣総理大臣の動向に関する記事を指す言葉で、日本の主要な新聞に掲載されています。
総理の例文
この言葉がよく使われる場面としては、内閣総理大臣の略称として使われる時などが挙げられます。
例文3の「総理する」という使い方は、総理という言葉の本来の意味である、全体を統一して管理することを表現する使い方です。
総裁の例文
この言葉がよく使われる場面としては、政治などの最終決定権を持つ者を意味する時などが挙げられます。
どの例文も首相や総理という言葉に置き換えて使うことができます。ただし、例文2はどこの総裁か明確な記述がないため、政策が金融政策であった場合は日本銀行総裁を表す可能性があります。このように、首相や総理に置き換えることができない場合もあります。
首相と総理と総裁どれを使うか迷った場合は、内閣総理大臣の通称を表す場合は「首相」を、内閣総理大臣の略称を表す場合は「総理」を、その政党のトップを表す場合は「総裁」を使うと覚えておけば間違いありません。