似た意味を持つ「既出」(読み方:きしゅつ)と「既存」(読み方:きそん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「既出」と「既存」という言葉は、どちらも以前からあることを表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
既出と既存の違い
既出と既存の意味の違い
既出と既存の違いを分かりやすく言うと、既出とは事柄に対して使われ、既存とは事物に対して使われるという違いです。
既出と既存の使い方の違い
一つ目の既出を使った分かりやすい例としては、「このレポートの既出の章で述べた通りです」「既出でしたらすみませんが教えて下さい」「既出のクイズ問題を分析する」「動画が既出ですが写真もアップしておきます」などがあります。
二つ目の既存を使った分かりやすい例としては、「改訂版は既存のテキストと異なる点が多い」「既存住宅売買瑕疵保険のメリットは大きい」「既存店の売上高は減少傾向にある」「既存不適格建築物を改築したい」などがあります。
既出と既存の使い分け方
既出と既存という言葉は、現時点よりも前に現れていることを表しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
既出とは、すでに示されていることを意味します。「レポートの既出の章」「既出のクイズ問題」のように、現時点よりも前に提示されている事柄に対して使われる言葉です。
既存とは、すでに存在することを意味します。「既存のテキスト」「既存住宅」のように、以前から実在する事物に対して使われる言葉です。
つまり、既出とは目に見えない事柄に対して使われることが多く、既存とは実在する事物に対して使われることが多いという違いがあります。
既出と既存の英語表記の違い
既出を英語にすると「something previously covered」「previous」となり、例えば上記の「既出の章」を英語にすると「previous chapters」となります。
一方、既存を英語にすると「existing」「preexist」となり、例えば上記の「既存のテキスト」を英語にすると「existing text」となります。
既出の意味
既出とは
既出とは、すでに示されていることを意味しています。
表現方法は「既出ですが」「既出の質問」「既出済み」
「既出ですが」「既出の質問」「既出済み」などが、既出を使った一般的な言い回しです。
既出の使い方
既出を使った分かりやすい例としては、「既出問題を出題することはありません」「既出かもしれませんが、ご教授ください」「この薬の効用は既出の通りです」「既出の内容があるかもしれません」「既出の質問かどうか確認する」などがあります。
その他にも、「既出でしたらすみません」「ツイッターに既出済みですがブログにもアップします」「既出の質問でしたら失礼します」「計算方法は既出の通りです」「既出の内容でしたらすみません」などがあります。
既出の読み方
既出の読み方は「きしゅつ」です。「既」を「概」という文字と混同して「がいしゅつ」と読まれることがありますが、「がいしゅつ」という読み方は誤りです。一方、ネットスラングとして、既出の意味で「がいしゅつ」と書かれることがあります。
既出という言葉の「既」は訓読みで「すでに」と読み、物事が済んでしまったことを表します。「出」は外へ出ることや、現れることを表します。既出とは、過去に出ていること、すでに示されていることを表す言葉です。
「既出でしたらすみません」の意味
上記の例文にある「既出でしたらすみません」とは、インターネットの投稿サイトやSNSでよく使われているフレーズです。質問や画像などを投稿する時に、すでに同じ内容のものが出されているかもしれないことに対して、許しを得る謙虚な姿勢を示します。
既出の対義語
既出の対義語・反対語としては、まだ発表されていないことを意味する「未発表」、あとで述べることを意味する「後述」、初めて出てくることを意味する「新出」などがあります。
既出の類語
既出の類語・類義語としては、すでに述べたことを意味する「既述」、前に述べたことを意味する「前述」、前に述べたことを意味する「前陳」などがあります。
既存の意味
既存とは
既存とは、以前から存在することを意味しています。
表現方法は「既存メンバー」「既存策」「既存品」
「既存メンバー」「既存策」「既存品」などが、既存を使った一般的な言い回しです。
既存の使い方
既存を使った分かりやすい例としては、「既存のやり方にとらわれるな」「既存住宅売買瑕疵保険に加入する」「既存店売上高は減少傾向にある」「既存の制度を活用する」「既存宅地証明書を発行する」「既存住宅状況調査技術者の資格を取得する」などがあります。
その他にも、「既存不適格建築物をそのまま継続利用する」「既存のアカウントがあります」「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業を推進する」「既存住宅性能評価書を交付します」などがあります。
既存の読み方
既存の読み方は「きそん」です。「きぞん」と読むのは本来は誤りですが、現状では慣用読みとして「きぞん」という読み方も広く受け入れられています。
既存という言葉の「存」とは、 現に事物が存在することを表します。既存という言葉は、すでに事物が存在することや、以前から存在することを表す言葉です。日常的な会話よりも、ビジネスシーンや改まった場で使われています。
「既存不適格建築物」の意味
既存という言葉を用いた日本語には「既存不適格建築物」があります。建築時の法律に基づいて建てられた建物が、その後の法改正により、現行法の基準を満たさなくなった状態を指します。使い続けても違法ではありませんが、増改築を行う際には、現行の法令に適合させる必要があります。
既存の対義語
既存の対義語・反対語としては、新しく事をすることを意味する「新規」、組織・制度・機関などを新しくつくることを意味する「新設」、新しい施設や設備などをこしらえることを意味する「開設」、配当や配給などがまだないことを意味する「未配」などがあります。
既存の類語
既存の類語・類義語としては、現実存在としてあることやあるものを意味する「存在」、物事が存在する所を意味する「所在」、現実に存在していることを意味する「現存」などがあります。
既出の例文
この言葉がよく使われる場面としては、すでに示されていることを表現したい時などが挙げられます。
例文1のように、既出という言葉はビジネスシーンでも使われています。ここでは、クレーム対応について、過去の打ち合わせのなかで取り上げたことを表しています。例文3の「既出ですが」とは、すでに同じ内容のことが示されていることを予め知らせておく時のフレーズです。
既存の例文
この言葉がよく使われる場面としては、以前から存在することを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「既存品」とは、すでにある商品を意味します。ここでは新商品と対比して、既存品という言葉が用いられています。例文4の「既存宅地」とは、市街化調整区域に指定される前から法的に宅地として利用されていた土地のことです。
既出と既存という言葉は、どちらも以前から存在することを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、すでに示されている事柄を表現したい時は「既出」を、以前から存在する事物を表現したい時は「既存」を使うようにしましょう。