似た意味を持つ「私情」(読み方:しじょう)と「私心」(読み方:ししん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「私情」と「私心」という言葉は、どちらも「個人的感情や利己心」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
私情と私心の違い
私情と私心の意味の違い
私情と私心の違いを分かりやすく言うと、私情とは個人的な感情の意味で使われることが多く、私心とは利己的な心の意味で使われることが多いという違いです。
私情と私心の使い方の違い
一つ目の私情を使った分かりやすい例としては、「仕事に私情を挟むことのないように」「論文に私情を交えてはいけません」「私情や煩悩のない人間などいないだろう」「私情のない実直な政治家になりたい」などがあります。
二つ目の私心を使った分かりやすい例としては、「リーダーは私心のない判断をするべきです」「社会のために尽くそうと私心を捨てる」「経営者として私心なく公明正大でありたい」「主君に対して私心を述べる」などがあります。
私情と私心の使い分け方
私情と私心という言葉は、どちらも「自分ひとりの考え、個人的感情」「自分だけの利益を図る心、利己心」を表し、ほぼ同じ意味を持ちます。そのため、上記の例文にある私情と私心は、互いに置き換えても意味の上では問題ありません。
ただし、一般的な使い方には違いがあります。私情という言葉は、「自分ひとりの考え、個人的感情」の意味で使われることが多く、一方の私心は、「自分だけの利益を図る心、利己心」の意味で使われることがほとんどです。
二つの言葉は同じ意味を持ちますが、個人的な感情を表す時には「私情」を、利己的な心を表す時には「私心」を用いた方が、相手に伝わりやすいでしょう。
私情と私心の英語表記の違い
私情を英語にすると「personal feelings」「interest」となり、例えば上記の「私情を挟む」を英語にすると「let personal feelings get in the way」となります。
一方、私心を英語にすると「selfishness」「selfish motive」となり、例えば上記の「私心のない」を英語にすると「out of selflessness」となります。
私情の意味
私情とは
私情とは、個人的な感情、私意を意味しています。
その他にも、「利己的な心、私心」の意味も持っています。
表現方法は「私情を持ち込む」「私情を挟む」「私情を捨てる」
「私情を持ち込む」「私情を挟む」「私情を捨てる」などが、私情を使った一般的な言い回しです。
私情の使い方
「彼は仕事に私情を挟むような人ではない」「ビジネスに私情を持ち込むな」「私情が入るとろくなことにならない」「嫌なことがあると私情にとらわれてしまう」「私情を捨てる覚悟が必要です」などの文中で使われている私情は、「個人的な感情、私意」の意味で使われています。
一方、「私情を挟まず公平に判断する」「政治は私情や権力にまみれている」「教授は私情なく英語教育の発展に貢献してきた」などの文中で使われている私情は、「利己的な心、私心」の意味で使われています。
私情の「私」は公でない個人の立場や自分一身に関することを表し、「情」は物事に感じて起こる心の動きを表す漢字です。私情とは、個人的な感情や自分の考えを意味する言葉です。転じて、自分の利益を追求しようとする利己的な心の意味も持つようになりました。
「私情を挟む」の意味
上記の例文にある「私情を挟む」とは、ビジネスの場や多くの人々に関係する物事にも関わらず、自分ひとりの個人的な感情や、利己的な考えを持ち出すことです。「私情が入る」も、ほぼ同じような意味で用いられる言い回しです。
「私情のため休む」「私情で恐縮ですが」「私情で申し訳ない」は誤り
私情という言葉は、誤用が多い言葉です。例えば、自分の用事のために欠席することを意味する「私用のため休む」を「私情のため休む」と誤って表現されることがあります。
また、個人的な事情で恐縮するさまを「私事で恐縮ですが」と表現しますが、間違えて「私情で恐縮ですが」「私情で申し訳ない」などと表すケースが見られます。
さらに私情という言葉は、音の響きが似ている「痴情」(読み方:ちじょう)と混同して使われることもあります。恋愛に関するいざこざを表す「痴情のもつれ」を、誤って「私情のもつれ」と表現しないように注意しましょう。
私情の対義語
私情の対義語・反対語としては、世間の人情や俗人の心を意味する「世情」、個々の具体的な事柄を考えないで広く全体を論じる議論を意味する「一般論」、公平で偏っていないことを意味する「公正」などがあります。
私情の類語
私情の類語・類義語としては、個人的な利害や感情で公平な取扱いができない状態を意味する「情実」、自分の利益だけを追求しようとするさまを意味する「利己的」、他人の事は考えず自分の都合だけを考えることを意味する「自分勝手」などがあります。
私心の意味
私心とは
私心とは、一個人としての気持ち、自分一人の考え、私意を意味しています。
その他にも、「自分一人の利益を図る心、利己心、私情」の意味も持っています。
私心の読み方
私心の読み方には二通りあり、「ししん」の他に「わたくしごころ」とも読みますが、一般的には「ししん」と読まれています。「わたくしごころ」と読む場合、個人的感情や利己心だけでなく、ひそかに恋い慕う心という意味も加わることに注意しましょう。
表現方法は「私心を捨てる」「私心がない」「私心のない判断を行う」
「私心を捨てる」「私心がない」「私心のない判断を行う」などが、私心を使った一般的な言い回しです。
私心の使い方
「承認欲求という私心を捨てるべきです」「先導者は私心がないことが重要です」「私心のない人はいないでしょう」などの文中で使われている私心は、「自分一人の考え」の意味で使われています。
一方、「私心のない判断を行うようにしています」「私心なく社会に貢献する」「私に私心がないことを証明しましょう」「私心なかりしかと自分に問いかける」などの文中で使われている私心は、「自分一人の利益を図る心」の意味で使われています。
私心とは、上記の例文にあるように二つの意味がありますが、現在では「自分一人の利益を図る心、利己心」の意味で使われることが多くなっています。もともとは、自分が持つ個人的な考えを意味する言葉ですが、この意味が発展して、他人を顧みず自分の利益を図る心を表すようになりました。
「動機善なりや、私心なかりしか」の意味
私心を用いた名言には「動機善なりや、私心なかりしか」(読み方:どうきぜんなりや、ししんなかりしか)があります。これは京セラの創業者である稲盛和夫氏の言葉で、「判断や行動は良い動機に基づくものなのだろうか、私利私欲で物事を始めていないか」と自問自答しているさまを意味します。
私心の対義語
私心の対義語・反対語としては、私的な感情にとらわれたり利害の計算をしたりしないことを意味する「無私」、我欲や私心のないことを意味する「無我」などがあります。
私心の類語
私心の類語・類義語としては、自分一人の利益や満足だけを求める気持ちを意味する「我欲」、利益を得ようとする欲望を意味する「利欲」、自我やエゴイズムを意味する「エゴ」、何事も自分を中心に考え他人については考えが及ばないさまを意味する「自己中心的」などがあります。
私情の例文
この言葉がよく使われる場面としては、個人の立場に立っての感情、自分の欲望を満たしたいと思う感情を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3の文中にある私情は、「個人の立場に立っての感情」の意味で用いられています。例文4や例文5の私情は、「自分の欲望を満たしたいと思う感情」の意味で用いられています。
私心の例文
この言葉がよく使われる場面としては、自分一個人としての気持ち、 個人的な感情、私欲をむさぼる心を表現したい時などが挙げられます。
例文1の文中にある私心は、一個人としての気持ちの意味で用いられています。例文2から例文5にある私心は、私欲をむさぼる心や利己心の意味で用いられています。
私情と私心という言葉は、どちらも「個人的感情や利己心」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、個人的感情を表現したい時は「私情」を、利己心を表現したい時は「私心」を使えば相手に通じやすいでしょう。