同じ「はいしゅつ」という読み方の「輩出」と「排出」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「輩出」と「排出」という言葉は同音の言葉ですが、それぞれの漢字によって使い方には少し違いがあります。
輩出と排出の違い
輩出と排出の意味の違い
輩出と排出の違いを分かりやすく言うと、輩出とは人材を多く送り出すことを意味し、排出とは不要な物を外へ押し出すことを意味するという違いです。
輩出と排出の使い方の違い
一つ目の輩出を使った分かりやすい例としては、「この大学は有名な芸術家を大勢輩出しています」「数多くの警察官を輩出する大学です」「あまたの世界王者を輩出したボクシングジムに入門する」などがあります。
二つ目の排出を使った分かりやすい例としては、「屋外に煙を排出する」「CO2排出量を見える化する」「排出事業者に処理責任があります」「日本の温室効果ガス排出量取引はどうなっていますか」「体に溜まった老廃物を排出する」などがあります。
輩出と排出の使い分け方
輩出と排出という言葉は、どちらも「はいしゅつ」と読みますが、意味や使い方には大きな違いがあります。
輩出とは、優れた人物が次々と世に出ることを意味します。「多くの著名人を輩出する大学」のような使い方で、立派な人材を多く送り出している教育機関などに対して用いられることが多い言葉です。人材を多く送り出すことを表し、特定の一人が世に出る場合には使用できません。
排出とは、内部に溜まっている不要物を外へ押し出すことを意味します。ガソリンエンジンなどの内燃機関から出される、有害な一酸化炭素などを含む気体を「排出ガス」と言います。また、「老廃物を排出する」のような使い方で、動物の体内で生じた不要な物質を体外に出すことも意味します。
つまり、輩出とは優れた人材を多く送り出すことを表し、排出とは内部にある不要物を外へ押し出すことを表す言葉です。輩出と排出という言葉は、意味が全く異なる同音異義語のため、互いに置き換えて使うことは出来ません。
輩出と排出の英語表記の違い
輩出を英語にすると「producing in great numbers」「appearing one after the other」となり、例えば上記の「有名な芸術家を大勢輩出する」を英語にすると「produce a lot of famous artists」となります。
一方、排出を英語にすると「discharge」「excretion」「elimination」となり、例えば上記の「煙を排出する」を英語にすると「discharge smoke」となります。
輩出の意味
輩出とは
輩出とは、すぐれた人物が続いて世に出ること、人材を多く送り出すことを意味しています。
輩出の読み方
輩出の読み方は「はいしゅつ」です。誤って「はいすい」「はいで」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「作品を輩出」「卒業生を輩出」「合格者を輩出」
「作品を輩出」「卒業生を輩出」「合格者を輩出」「多く輩出」「人材を輩出する」などが、輩出を使った一般的な言い回しです。
輩出の使い方
輩出を使った分かりやすい例としては、「社会で活躍する人材を輩出する」「著名な声優を輩出している養成所です」「実力派の政治家を多数輩出する」「独自の英語教育によって海外大学合格者を輩出する」などがあります。
その他にも、「多くのプロ野球選手を輩出している高校です」「いまや日本有数の人材輩出企業である」「起業家を数多く輩出している企業です」「有名人を多く輩出している都道府県ランキングをチェックする」などがあります。
輩出の「輩」は、列をなして続々と起こることを表す漢字です。内から外へでることを表す「出」と結びつき、輩出とは、優れた人材が続いて多く出ること、人物を次々に送り出すことを意味します。
輩出という言葉は、複数の人々が世に出ることを表現するため、一人のケースには使用できません。例えば、「一人のノーベル賞受賞者を輩出した」など、一人しかいない場合に「輩出」を用いることは誤用になるので注意しましょう。この場合、輩出ではなく「送り出す」と言い換えるとよいでしょう。
「多数輩出」「数多く輩出」は許容されている表現
また、「多数輩出」「数多く輩出」という言い回しは、厳密に言えば意味が重複した二重表現です。本来であれば輩出の誤用になりますが、広く一般に使用されている言い回しであり、人々に許容されている表現になっています。
輩出の対義語
輩出の対義語・反対語としては、ある学校の生徒となることを意味する「入学」、弟子入りすることを意味する「入門」などがあります。
輩出の類語
輩出の類語・類義語としては、世の中に出現することを意味する「世に出る」、学校を卒業して社会に出ることを意味する「巣立つ」、次々と続いて出ることを意味するを意味する「続出」、種々のものが次々に多数現れ出ることを意味する「百出」などがあります。
排出の意味
排出とは
排出とは、内部にある不要の物を外へ押し出すことを意味しています。
その他にも、「生物体が物質代謝の結果生じた不要または有害な物質を体外に排除すること」の意味も持っています。
表現方法は「ゴミを排出する」「排出を減らす」「排出される」
「ゴミを排出する」「排出を減らす」「排出される」などが、排出を使った一般的な言い回しです。
排出の使い方
「有害なガスを屋外へ排出する」「排出権取引制度をわかりやすく教えてください」「CO2排出量が少ないほどCO2排出係数は低くなります」「二酸化炭素の排出量の問題を英語で論じる」などの文中で使われている排出は、「不要物を外へ押し出すこと」の意味で使われています。
一方、「体内の毒素を排出する」「汗と一緒に体の外へ排出する」「尿の排出障害の可能性がある」などの文中で使われている排出は、「生物体が不要な物質を体外に排除すること」の意味で使われています。
排出の「排」は訓読みで「おしのける」と読み、外に押し出すことを表し、「出」は内から外へでることを表します。排出とは、内部にある必要のないものを外へ押し出すことを意味します。また、生物体が代謝によって生じた老廃物を体外に排除する営みを「排出」と言います。
「排出権取引」の意味
排出を用いた日本語には「排出権取引」があります。排出権取引とは、国や企業が汚染物質を排出する権利、すなわち排出権を市場で売買取引することを意味します。環境汚染物質の排出量低減を目的とした経済的手法です。
「人材を排出」「人を排出する」は誤用
排出を用いた誤った表現には、「人材を排出」「人を排出する」などがあります。正しくは「人材を輩出」「人を輩出する」であり、同音異義語の「輩出」の書き間違いや変換誤りがされることがあります。
排出の対義語
排出の対義語・反対語としては、吸い入れることや薬物などを吸い込むことを意味する「吸入」、外から内に取り入れることを意味する「吸収」などがあります。
排出の類語
排出の類語・類義語としては、蓄えていたものを外部に出すことを意味する「放出」、不要な水を別の場所に流しやることを意味する「排水」、中の空気やガスを外に出すことを意味する「排気」、不要な物質を体外に出すことを意味する「排泄」などがあります。
輩出の例文
この言葉がよく使われる場面としては、立派な人材がつぎつぎと出ること、人材を多く送り出すことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、輩出の慣用的な表現には「輩出する」「輩出される」「多数輩出」「輩出してきた」などがあります。
排出の例文
この言葉がよく使われる場面としては、内部にある不要な物を外へ押し出すこと、生体が物質代謝の結果生じた老廃物を体外に排除することを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4にある排出は、内部の不要物を外へ押し出すことの意味で用いられています。「温室効果ガス排出量」とは、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの排出された量を意味します。例文5の排出は、老廃物を体外に排除することの意味で使用されています。
輩出と排出という言葉は、どちらも「はいしゅつ」と読む同音異義語です。どちらの言葉を使うか迷った場合、人材を多く送り出すことを表現したい時は「輩出」を、不要物を外へ押し出すことを表現したい時は「排出」を使うようにしましょう。